初めての方でも簡単!ふるさと納税サイト

  1. 「ふるさと納税」ホーム  > 
  2. 会社概要トップ  > 
  3. 出版書籍・資料 ふるさと納税と地域経営  > 
  4. 事例に見る、ふるさと納税 シティーセールス事業に注力 鈴鹿市

2ページ 事例に見る、ふるさと納税 シティーセールス事業に注力 鈴鹿市

出版書籍

いくものと考えられる。

後者の「市外からヒト、モノ、カネ、情報・技術などの資源を呼び込む」については、伊川氏も「外に向けて鈴鹿市の魅力が伝わっておらず、PR力が弱いと感じていました」と指摘する。

「市外の方にとってもっとも分かりやすい鈴鹿市の資源は鈴鹿サーキットです。そのため事業者と連携しながら、県外でも多数のイベントを実施してきましたが、それだけでは一時的かつ局所的なPR にはなっても、なかなか全国には波及していきません。また、『モータースポーツのまち』というネームバリューがあることで、逆にF1のイメージが強すぎて、FI以外のまちの魅力をアピールすることが難しいという悩みもありました。もちろん築き上げてきたシティセールスのネットワークもありますので、F1関連のイベントを続けながらふるさと納税で全国的にPR できないか、と考えるようになりました」(伊川氏)。

今後のシティセールス戦略を模索する中、ワーキンググループでの議論を通じ、最終的には「ふるさと納税においても『モータースポーツのまち』を全面に押し出し、主にF1ファンを誘客することで、他の自治体との差別化を図る」という方向性が示されたという。

「海あり、山あり、匠の技あり」バランス重視の返礼品で鈴鹿らしさを

鈴鹿市は山、川、海と三拍子揃った豊かな自然に恵まれていることから、農水産業の盛んなまちであり、肉や米といったいわゆる人気の返礼品も扱っている。しかし、肉や米の一点押しで寄附金を集めたり、返礼品で他の自治体と競うという考えはない。

「返礼品にお金を掛けて結果を出す、というのは行政がやるべきことではありません。最小限の費用で最大の効果を出すのが、私たちの役割です」と伊川氏。肉や米を用意しながらも、国内で唯一「モータースポーツ都市宣言」をしているまちとして、あくまでも鈴鹿市のPRを目的としている。

「財源確保に向けては、PR力のある返礼品の選定が重要になります。そこで、ワーキンググループに参加した地域資源活用課、産業政策課、農林水産課など各々の課から返礼品の候補をリストアップし、それら商品の事業者に各課から直接、お声掛けをしました」と伊川氏。

モータースポーツ関連の返礼品で人気が高いのは、オートバイのマフラーを製造する業者がマフラーを加工して製作したチタン製タンブラー、二輪レースで知られるモリワキのバッグやステッカー、TSRのサングラスなどだ。また、目玉の返礼品として、鈴鹿サーキットで開催されるF1日本グランプリの観戦チケットがある。

これに加え、「もっと」他にもたくさんある鈴鹿市の魅力を発信するために、海産物の干物セット、菓子、伊勢型紙をあしらった扇子や行灯、鈴鹿墨、さらには伊勢志摩サミットでG7のディナー食材として使用された、肉厚でコリコリとした食感が楽しめる「はなびらたけ」など、さまざまな産業からバランスのよい返礼品を選定することにも配慮した。また、返礼品の金額設定は1万円から10万円までとし、金額設定についてもバランスを強く意識している。

「時間をかけてじっくりと調査・研究をしたことで、自慢の品を揃えることができました。サイトに並ぶバランスのよい返礼品からも、鈴鹿市のバランスの取れた産業構成を感じていただけるはずです」。

寄附金の使途については、鈴鹿市の将来都市像である「みんなで創り 育み 成長し みんなに愛され選ばれるまち すずか」のために、「鈴鹿市総合計画2023」に沿って、以下の7つのテーマ(市長にお任せを除く)を用意している。

寄附金の使途

1. 観光・モータースポーツのため5. 子育て・教育支援のため
2. 安全・安心なまちづくりのため6. 高齢者・障がい者支援のため
3. 芸術文化・スポーツ振興のため7. 産業振興のため
4. 自然や環境の保全のため8. 市長にお任せ

導入わずか1ヶ月で過去8年間の寄附総額を上回る

このような考えのもと、鈴鹿市は平成28年7月1日よりふるさと納税サイトの運用を開始した。「ワーキンググループのメンバーで、期待と不安が入り混じりながら見守っていた」ところ、7月だけで寄附件数767件、寄附金額1169万円にのぼり、わずか1ヶ月で過去8年間の総額を上回るという大健闘を見せた。

「これには市長をはじめ驚くばかりです。たった1ヶ月で目標額2,000万円の半分を達成しましたので、目標額を上方修正したところです」と伊川氏。順調な滑り出しとなった鈴鹿市だが、返礼品の選定には迷いがないわけではなかった。ふるさと納税の後発自治体となるため、一時は知名度のある大手企業に返礼品を提供してもらい、これまでの遅れを取り戻すことも考えたという。

「誘致している大手企業に返礼品の提案もさせていただきました。しかし周知の通り、ふるさと納税の返礼品には世間で騒がれているような賛否両論がありますし、当然、企業さんもそれぞれ考えがある。やはり、これまでなかなか全国に発信できていなかった産品こそ返礼品としてPRしていくことが最良だと考え直しました」。

そうした紆余曲折を経て、ワーキンググループでの3つの主眼点(シティセールス・産業振興・財源の確保)に立ち戻り、鈴鹿市の経営方針やシティセールスなどの施策に賛同してもらえる事業者を中心にお声掛けを進めたところ、24 事業主、59品目が集まり、当初の目標だった50品目を超えることができた。

「力技を使わなくてもこれだけの反響が得られたので、十分にやっていけるという手応えを感じています」と伊川氏。

しかし、今後の展開については、「滑り出しが良かったからといって、この状態をずっと維持できるわけではないことは重々承知しています。そうはいっても、ふるさと納税を活用して事業者と二人三脚でやっていけば、シティセールスの効果が出ることを学びました。今後も新たな地域が参入してくるでしょうから、緊張感を持って他の自治体も含めた返礼品のアンテナを張ったり、事業者へのお声掛けを続けていかなければなりません」と冷静に見ている。

失うことで気がついた「モータースポーツのまち」の価値

平成16年に、日本初となる「モータースポーツ都市宣言」を行なってから10周年を迎えた平成26年。商業観光課を地域資源活用課に改称するとともに、地域資源活用課の中に「観光・モータースポーツ振興グループ」を開設し、鈴鹿サーキットとの連携を図りながら、モータースポーツを核とした地域観光戦略のさらなる推進に努めてきた。

ふるさと納税においても鈴鹿サーキットは欠かせない存在であるが、鈴鹿市が近年、特にモータースポーツを核とした地域活性化に注力するようになった背景には、昭和62年(1987年)より20年連続で鈴鹿市にて開催されてきた「F1日本グランプリ」が平成18年で一時、終止符を打ったことが関係している。

当時は中国グランプリ(上海国際サーキット)、マレーシアグランプリ(セパンサーキット)など新興国でのF1開催が始まり、世界的にF1誘致の動きが高まっていた。鈴鹿市は平成16年に「モータースポーツ都市宣言」を行い、鈴鹿市としても鈴鹿サーキットへのサポートを行なってきたが、平成19年より富士スピードウェイが開催地となってしまった。

F1はオリンピックやワールドカップに匹敵する世界的イベントであると言われているが、F1ならではのメリットには、毎年開催されることや、開催地が決まると5年程度は同じサーキットで継続的に開催されることなどが挙げられ、経済効果が定期的・長期的に発生する点が継続して開催されることのないオリンピックやワールドカップと大きく異なる。

F1日本グランプリの動員数は、ピークを迎えた2006年は3日間で36万人を超え、決勝日だけでも16万人を集客している。鈴鹿F1日本グランプリ地域活性化協議会の「F1経済効果調査報告書」(平成21年)によれば、2006年大会の鈴鹿市への経済効果は約76億9200万円、三重県への経済効果は約119億4500万円と算出されている。

経済効果の喪失と「モータースポーツのまち」のイメージ低下により、鈴鹿市が中心となり、平成20年に官民30団体の連携による「F1地域活性化協議会」を結成し、F1再開に向けた活動に尽力。その苦労が報われ、平成21年に再びF1日本グランプリの開催が鈴鹿に戻ってきた。鈴鹿サーキットは平成30年まで開催契約を結んでいるが、「かつての活況を考えると、ピーク時の賑わいには届かない」という。

リーマンショック後の不況や日本チームの撤退などにより、平成27年は3日間で16万5,000人、決勝日は8万1,000人まで落ち込んでいる。

「ふるさと納税をきっかけに、鈴鹿だけでなく全国的にモータースポーツファンが増えたら、という思いもあります。下火になったモータースポーツがもう一度盛り上がれば、鈴鹿市内の自動車関連会社の売上が上がり、地域も活性化します。現在、モータースポーツを絡めた1日滞在プランなどを検討中ですが、何か起爆剤になる返礼品を開発していきたいと思います」

ふるさと納税の本格参入を

地域の魅力を見つめ直す良いきっかけとなった、ふるさと納税の本格的な取り組みから約1年が経過した。当初は24事業者、59品目からスタートしたが、現在は41事業者、151 品目(2016年10月現在)にまで増えている。

「返礼品の選定については、数撃ちゃ当たるでいくのか、これぞという商品だけを絞り込んだほうがいいのか、いろいろと悩みましたが、事業者と話し合った上でPRにつながると判断したのなら、できる限り返礼品に上げていけばいいという方針が定まりました。とはいえ、何でもかんでも返礼品にするのではなく、事業者も鈴鹿市のふるさと

1 2 3
ページ上部へ