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納税の方針やまちの特色を理解し、バランスを意識して返礼品を出してくださるので有り難く思っています」と伊川氏。
ふるさと納税の目的の一つに産業振興を掲げる鈴鹿市。幸先の良いスタートを切れたことで事業者も協力的になっており、行政と良い関係を築きつつあるという。
「人気の返礼品の申込み状況を見ると、事業者さんは大丈夫なのかと心配になることもありましたが、生産が追いつかなければ品切れにして受注をストップすればいいので、現段階では嬉しい悲鳴を上げているようです。鈴鹿市の中で競わせるわけではありませんが、どの返礼品もある程度申し込みはあるようですし、少ないようであればどういうところに魅力が足りないのか、などを事業者自身に考えてもらうことが狙いでもあります。もちろん鈴鹿市としてもふるさと納税をきっかけに、これまで以上に事業者と積極的に関わり、地場産業を育成しながら地域活性化につなげていきたいと考えています」
本格参入2年目を迎えるにあたり、鈴鹿市はどのような構想を描いているのか。
「このままほっておけばやがて停滞していくので、常に新たな返礼品を追加し、サイトを活性化していかなければなりません。今後は単に返礼品を増やすだけでなく、変わり種なども考えていく予定です。また、観光面が弱いと感じていますので、ゴルフ場などと連携して誘客を図りたいと思います。現在は、地域資源活用課や農林水産課などと連携し、各事業者さんと水面下で交渉してエントリーしていただくといった働きかけにも取り組んでいます」
これから本格参入を検討している自治体に向けてアドバイスを尋ねると、「後発組だからこそできることもある。地域の魅力を見つめ直すチャンスになるはずです」と、伊川氏は力強く答えてくれた。
「鈴鹿サーキット」という鈴鹿市最大の魅力を見つめ直し、ふるさと納税をシティセールスの一環として活用することに成功した鈴鹿市。その実感がこもった言葉には、「市民力」と「行政力」のさらなる向上を目指す決意が感じられた。