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事例に見る、ふるさと納税 シティーセールス事業に注力 鈴鹿市

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第2章-3 事例に見る、ふるさと納税 シティーセールス事業に注力 鈴鹿市

日本のほぼ中央、三重県の北中部に位置し、東に伊勢湾、西に鈴鹿山脈という豊かな自然と温暖な気候に恵まれた人口20万人都市、鈴鹿市。古くは日本書紀に市内の地名の由来伝説が登場し、古代伊勢国の中心地として栄え、奈良時代には国府と国分寺が置かれるなど、この地方の行政と文化の中心としての長い歴史を持つ。

昭和17年(1942年)に、鈴鹿郡と河芸群(がわげぐん)の2町12ヵ村が合併して市制を施行し、人口約5万2,000人から出発した鈴鹿市は、その後、自動車関連産業を中心としたものづくり産業の集積により、伊勢湾岸地域有数の内陸工業都市として発展してきた。

大自然の恵みにより農水産業も盛んで、1千年ほど前から生産が始まったといわれるお茶や、全国第一位の生産量を誇るサツキやツツジをはじめ、水稲などの生産が活発に行われ、工業と農業がともに成長した「緑の工都」として現在に至っている。
また、着物の柄や文様の染色に欠かせなかった伊勢型紙と、墨としては日本で唯一の伝統的工芸品に指定されている鈴鹿墨。これらも鈴鹿市に脈々と引き継がれてきた伝統的工芸品である。現在もその技術を活かし、新しい商品の開発が続けられている。

近年は、F1日本グランプリや鈴鹿8時間耐久ロードレースなどの世界的なイベントが開催され、日本全国のみならず世界各国からモータースポーツファンが訪れる「モータースポーツの聖地」として鈴鹿の名が広く知られるようになった。平成16年には、国内で唯一の「モータースポーツ都市宣言」をし、モータースポーツを通じたさらなる国際交流を目指している。また、毎年12月に鈴鹿サーキット国際レーシングコースを走る「鈴鹿シティマラソン」を開催していることから、平成14年度には「鈴鹿いきいきスポーツ都市宣言」をし、「市民一人ひとつのスポーツ」を推進することで健やかで活力あるまちづくりを目指してきた。

シティセールスの効果は事業者との二人三脚がカギ

産業、経済、文化、市民生活など調和のとれた発展を続け、国際的な観光都市としても知られる鈴鹿市。多くの自治体が人口減少に悩まされているが、鈴鹿市も例外ではない。平成21年1月の約20万5,000人をピークとして、その後は減少局面に入っており、税収の確保が今後厳しい状況になってきた。今後は少子高齢化にともなう社会保障費の増大、高度経済成長期に集中的に整備された公共建築物やインフラの老朽化への対応など、財政需要への対応が急務となっている。

このような中、鈴鹿市では新しいまちづくりの計画として、平成28年度から8 年間を計画期間とする「鈴鹿市総合計画2023」を平成27年度に策定した。策定にあたっては、「市民委員会」を設置し、89名の市民が将来都市像の検討を行なった他、市民や鈴鹿市内に通学する学生、外国人市民と「まちづくり意見交換会」を開催するなど、市民と行政の「オール鈴鹿」によって「鈴鹿市総合計画2023」を作り上げた。

「鈴鹿市総合計画2023」において明確に打ち出されているのが、「市民力(市民の自治力)」と「行政力(行政の自治力)」の向上である。住民自治の実現に向けては、市民力の向上が欠かせないとし、市民と行政との連携を唱えている。市民力の向上に加え、職員の政策形成能力や協働を推進するためのコーディネート能力などの向上も必要であり、「効率的、効果的で成果指向型の行政経営が求められる」、としている。特に基本構想の第4章「計画の効果的な推進のために」では、「市民参加による計画の推進」「行政経営システムの効率化」「協働によるまちづくりの推進」という3つの方向性が示されている。

市民からの要望も後押しとなりふるさと納税の本格運用へ

市全体の自治力である「市民力」と「行政力」の向上を目指してきた鈴鹿市は、平成20 年から「すずか応援寄附金」を設置し、自治体サイト上で寄附件数と寄附金額、了承が得られた寄附者の名前を公表するなど、ふるさと納税においても透明性の高い行政経営に取り組んできた。また、寄附金という制度の趣旨を踏まえ、返礼品は鈴鹿市の特産品であるお茶とお礼状のみとしてきた。

しかしながら、平成27年4月から控除上限額が2倍に拡充し、ふるさと納税がさらに活況を呈するようになったことを背景に、市民から「返礼品はなぜお茶だけなのか」という声が挙がり始めたため、政策を転換。地域の活性化、産業振興、財源確保の3つを目的に、シティセールスの一貫としてふるさと納税に本格的に取り組むこととなった。

「市民が他の自治体にふるさと納税をしていることも把握しています。もはや傍観していられない状況になりました」と語るのは、鈴鹿市 政策経営部総合政策課 政策推進グループ副参事兼GL の伊川歩氏だ。今年度から「鈴鹿市総合計画2023」がスタートし、市民の声を聞かずしてまちづくりは進められない、という思いがますます強まっていたという。

そのような経緯から、ふるさと納税の本格的な取り組みを始めるにあたり、「すずか応援寄附金」に対する「興味・理解・機会」をさらに拡大するため、平成27年9月に庁内にワーキンググループを設置。申込方法の改善や返礼品の拡充を図るため、調査・研究を進めてきた。

ふるさと納税の運用体制は、昨年度までは企画課が、今年度からは企画課から改称した政策経営部 総合政策課が担当している。この度の改称は「鈴鹿市総合計画2023」のスタートに合わせ、これまで以上に地域活性化や地方創生を進めていくためだという。そのためワーキンググループでは、当時の企画課が旗振り役となり、地域資源活用課、産業政策課、農林水産課などの他、関係部署をメンバーとして招集し協議を重ねた。

ポイントは「シティセールス」「産業振興」「財源の確保」

議論の主眼としたのは、地域資源の発信に繋げる「シティセールス」、地場産品のPR と販売促進につながる「産業振興」、寄附機会・納付環境の拡大による「財源の確保」という3点である。この3点に従い、どのような手法を用いてふるさと納税を運用すべきかを検討していく中で、ふるさと納税サイトの導入、クレジットカード決済、返礼品の拡充が決議された。

ふるさと納税サイトの事業者選定に際しては、平成28年2月にプロポーザルの実施を発表。選定委員会による審査を経て、返礼品だけではない鈴鹿市の魅力をPRできるサイトという観点から、「サイトの作りがまちの紹介から入り、次に返礼品という順番になっている」、「一括代行」などが決め手となり、さとふるに決定したという。

「ふるさと納税サイトの導入にあわせて、まちのプロモーションビデオを作り、動画をさとふるに公開しています。既存の映像や写真を組み合わせて、工夫しながら最小限の経費に抑えて作成しています」(伊川氏)。

「住み続けたいまち」を目指しシティセールス事業に注力

鈴鹿市が、これまでもっとも重視してきた施策が「シティセールス戦略」である。市民や事業者との協働により、「総合計画」の推進に必要な資源を獲得するため、平成19年7月から「すずかブランドと・き・め・き戦略」を策定し、シティセールスを推し進めてきた。同戦略に基づき、これまで中嶋悟さん(日本人初の元F1フルタイムドライバー、鈴鹿サーキットレーシングスクール校長)、浅尾美和さん(元プロビーチバレー選手、鈴鹿市出身)など、鈴鹿市と縁のある19人の特命大使を活用した市のPRや、地域資源のブランド化などのシティセールスに積極的に取り組んできた。

なかでも、鈴鹿市の市民力が色濃く表れた取り組みが、市のキャッチコピーの公募と市民投票である。作品の募集では鈴鹿市を中心に全国から1,300作品の応募があり、7,000人による市民投票を経て、平成25年に決定された。そのキャッチコピーが「さぁ、きっともっと鈴鹿。海あり、山あり、匠の技あり」である。短いフレーズの中に、モータースポーツをはじめ、恵まれた自然環境、伊勢型紙などの伝統的工芸品といった鈴鹿市の魅力を盛り込みながらも、「さあ、きっと(鈴鹿サーキット)」だけではない「もっと」他にもたくさんある鈴鹿市の魅力を発信していこう、という意味が込められている。

さらに今回、F1や鈴鹿サーキットに象徴されるように鈴鹿市最大の強みである世界的知名度を活かし、「シティセールスの一環としてふるさと納税を活用する」という明確なコンセプトを持って、ふるさと納税の本格的な取り組みを始めた。

シティセールスの効果には、「市民の誇りと愛着の醸成」と、「市外からヒト、モノ、カネ、情報・技術などの資源を呼び込む」という2つがあると考えられる。前者については、鈴鹿市はすでに多くの市民にとって「愛着のあるまち」、「住み続けたいまち」として評価されている。

「鈴鹿市総合計画2023」によれば、鈴鹿市に住み続けたいと思う市民の割合は平成27 年度に87.5%と高水準であるが、さらなる上昇を目指し、平成35年度に90%を目標値として定めている。こうした高い数値を達成している要因には、末松則子市長と直接対話ができる数多くの機会が設けられ市長と市民の距離が近いこと、女性市長であることから行政をはじめあらゆる分野で女性の参画を目指していること、子どもたちが健やかに育ち、若い世代が安心して結婚・妊娠・出産・子育てができる環境整備に注力していることなどがあると考えられ、伊川氏の話からは市長の力強いリーダーシップが遺憾なく発揮されていることがうかがえた。市民から「住み続けたい」と思われる鈴鹿市の魅力が外に向けて広く発信されることで、「住んでみたい」と思われるまちとなり、移住定住につながって

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