平成28年熊本地震から1年が経過しました。被災された皆さまへ心よりお見舞い申し上げます。
さとふるでは、2016年4月16日に発生した平成28年熊本地震の本震を受け、翌17日午前0時に「平成28年熊本地震災害 緊急支援募金」サイトを立ち上げました。
この「平成28年熊本地震災害 緊急支援募金」サイトを通じて集まった多くの方からのご支援を熊本県南阿蘇村、菊池市にお届けしました。また、被災地支援を目的として寄付金代理受付を名乗り出てくださった複数自治体に寄せられた寄付は熊本県へ届けられています。
「平成28年熊本地震災害 緊急支援募金」サイトを通じて寄付をしてくださった皆さまへ、熊本県南阿蘇村、菊池市の復興経過についてご報告いたします。
- 南阿蘇村
- 菊池市
南阿蘇村の現状
1.地震の発生状況
日時 | 震度 | |
---|---|---|
前震 | 2016年4月14日(木)21時26分 | 震度5弱 |
本震 | 2016年4月16日(土)1時25分 | 震度6強 |
2.避難勧告など発令状況(2016年12月2日17時00分時点)
発令 | 対象地区(区域) | 世帯数 | 人数 |
---|---|---|---|
避難勧告 | 立野区、新所区、立野駅区、高野台地区 | 347 | 858 |
避難準備情報 | 中松一区、中松二区、中松三区、東下田区、下田区、川後田区、長野区、袴野区、乙ヶ瀬区、沢津野区、黒川区、赤瀬区、東急分譲地 | 1,293 | 3,090 |
3.被害状況
(1)人的被害
種別 | 人数 |
---|---|
死亡者 | 23※ |
重傷者 | 29 |
軽傷者 | 120 |
※関連死7名含む
(2)家屋被害(り災判定より)
被害の程度 | 件数 |
---|---|
全壊 | 684 |
大規模半壊 | 175 |
半壊 | 705 |
一部半壊 | 1,144 |
計 | 2,708 |
※無被害152件
(3)インフラ被害
水道の断水 | 世帯数 | 内訳 |
---|---|---|
354 | 立野・新所・立野地区 347世帯 乙ヶ瀬区 7世帯 |
道路の断絶 | 路線名 |
---|---|
|
■これまでの道路など交通機関の復旧状況、復旧予定
- 2016年5月4日 村道 沢津野~下野線
- 2016年5月23日 県道299号 草千里浜栃木線
- 2016年6月13日 村道 長陽駅~妙見線(妙見橋)
- 2016年8月30日 県道149号 河陰阿蘇線(一部)
- 2016年12月24日 県道28号 熊本高森線(俵山トンネル)
- 2017年3月18日 南阿蘇鉄道トロッコ列車
- 2017年夏頃 阿蘇長陽大橋開通 予定
- 2020年9月末 県道325号(阿蘇大橋)開通 予定
▲俵山トンネルルート(県道熊本高森線)開通式
▲俵山トンネルルート(県道熊本高森線)開通の様子
▲南阿蘇鉄道トロッコ列車開通
寄付金の活用状況
皆さまからの寄付は、災害復旧・復興事業の村の一般財源として活用しています。
<災害復旧・復興事業>
事業名 | 予算額 |
---|---|
災害廃棄物処理業務委託 | 32億3,486万円 |
公共土木施設災害復旧事業 | 21億円 |
農業用施設災害復旧工事 | 12億円 |
国県代行事業(村道)負担金 | 7億8,400万円 |
農地災害復旧工事 | 6億6,000万円 |
※一部抜粋

今後の課題および展望
<住宅>
- ・仮設住宅、みなし仮設住宅で暮らす被災者の生活再建
- 2年以内に仮設住宅などからの自立再建を目指していますが、集落の再生にあたり一部の地域で長期避難世帯設定を行っています。また、宅地の亀裂の修復が必要となるなど個々、集落ごとに事情が異なり、また集落再生の手法や進捗状況も再建スケジュールに影響し自立再建に向けた課題が大きくなっています。
- ・災害公営住宅の建設の課題
- これから建設用地の選定と交渉となりますが、被災者のニーズと建設候補地のマッチングが重要となり用地交渉も含め課題は多くなっています。
<インフラ>
- ・道路交通の課題
- 国道や県道などの幹線道路の損壊が大きく、復旧に時間を要しているため、通勤などの生活圏である熊本市近郊との行き来ができない、迂回が必要などの不自由な状態が続いています。また、村内の道路も被災箇所が多数あり、本格的復旧に時間を要することが見込まれます。
- ・水道復旧の課題
- 本復旧、応急復旧を行い断水地区の解消を進めてきましたが、立野地区をはじめ、水源の変更などで本来の給水ができていない地区があります。本復旧は、多くの箇所で崩壊した道路の復旧と合わせて行うことになります。2018年度までの2カ年で復旧できるよう進めています。
<農業・観光業>
- ・農地、農業施設の課題
- 地震の激しい揺れによる崩壊・地割れ、集中豪雨に伴う土石流などにより、農地及び農業施設が広範囲に被害を受けています。中には、農地などが完全に流失しているなど、復旧が困難な箇所もあります。復旧・復興による早期の営業再開が課題となっています。
- ・観光施設の課題と展望
- 阿蘇大橋などのインフラへのダメージにより観光客が減少しています。2017年3月中旬には、地震で被災した飲食店や工務店が入居する仮設商店街が完成しました。今後は、阿蘇ジオパークを通じて地域の発展を図るとともに、観光アドバイザーを育成し、観光客の呼び戻しを推進したいと考えています。

南阿蘇村の一般会計予算
2016年度は不測の事態に備えるため、村が約10年かけて積み上げてきた財政調整基金を4割以上取り崩しました。今後、財政がさらに悪化しないかが懸念されます。
2015年度末残高 | 2016年度増減 | 2016年度末残高(見込) | |||
---|---|---|---|---|---|
積立金 | 取崩 | 利息 | |||
財政調整基金 | 14億6,532万5,000円 | 6億5,000万円 | 8億1,532万5,000円 |
■南阿蘇村 2017年度の当初予算
2017年度の南阿蘇村一般会計予算と各特別会計予算が3月定例議会において可決されました。
一般会計の予算額は、170億9,776万円(前年度比232.9%)で、一般会計以外の7特別会計と上水道事業会計を併せた予算総額は214億6,602万円となりました。震災の復興にかかる経費が大きく増加した要因です。
<歳入>170億9,776万円

税や使用料など村が自主的に収入することができる財源(自主財源)は、18億4,627万円で、地方交付税、国県支出金、起債など国県の基準に基づき交付されたり、割り当てられたりする収入(依存財源)が152億5,149万円となっています。
今年度は、事業に充てるための村債(借金)の発行額が35億7,000万円と昨年度に比べ大幅に増額となっており、これは平成28年熊本地震に伴う災害廃棄物処理事業や、公共土木、農林水産業施設等の復旧事業などに充てられます。
<歳出>170億9,776万円

今年度は、平成28年熊本地震に伴う災害復旧費、物件費、普通建設事業費が大幅な増額となっており、農地・農業用施設災害復旧事業に18億6,000万円、村道の国・県代行事業負担金に7億8,400万円、廃棄物仮置場原形復旧工事に4億4,061万円、宅地などの復旧のための地域防災がけ崩れ対策事業・宅地耐震化推進事業に3億2,475万円の予算を計上しています。
菊池市の現状
地震の発生状況(総発生回数:4,267回)
震度4 | 震度5弱 | 震度5強 | 震度6弱 | 震度6強 | 震度7 | |
---|---|---|---|---|---|---|
菊池市 | 24 | 2 | 2 | 1 | 1 | - |
熊本県 | 117 | 12 | 5 | 3 | 2 | 2 |
気象庁地震火山部発表 2017年3月10日時点
被害状況
人的被害
種別 | 人数 |
---|---|
死亡者 | 2※ |
行方不明者 | 0 |
重傷者 | 20 |
軽傷者 | 56 |
※災害関連死
建物被害
被害の程度 | 住宅 | 非住宅 |
---|---|---|
全壊 | 57 | 324 |
大規模半壊 | 74 | 115 |
半壊 | 548 | 564 |
一部半壊 | 2,734 | 736 |
合計 | 2,413 | 1,739 |
り災証明書
内訳 | 申請件数 | 発行件数 | 1次調査 | 2次調査申請 | 2次調査 |
---|---|---|---|---|---|
住家・納谷 | 5,061 | 5,468 | 4,468 | 607 | 591 |
農業関係 | 175 | 175 | - | - | - |
店舗・工場 | 275 | 275 | - | - | - |
公募解体
行政解体 | 504 |
---|---|
自主解体 | 490 |
合計 | 994 |
▲市内各地で地割れが発生
▲被害が大きかった茂藤里区。雨よけのブルーシートや倒壊した建物が見える
▲旭志グラウンドでは地盤沈下が発生
▲1階部分がつぶれた家屋
▲菊池渓谷も大きな被害を受け入谷禁止に
▲農林畜産施設も甚大な被害を受けた
▲登録有形文化財の菊の城本舗では煙突根元のブロックが一部崩れた
▲土砂崩れや落石により各地で道路が通行止めに
▲神社など耐震性の低い建物は特に被害が多かった
復旧状況
1.県道阿蘇公園菊池線(通称:菊池阿蘇スカイライン)
3カ所の斜面崩落で全面通行止めとなっていましたが、2016年12月28日から昼間の片側交互通行が可能となりました。
2.菊池渓谷
広河原付近で大規模土砂崩落が発生し、立ち入り禁止となっています。オープンは未定ですが、現在復旧工事が進められています。
▲広河原右岸側
▲四十三万滝から見える復旧工事個所
▲広河原左岸
寄付金の活用状況
①菊池市災害義援金(105,477,293円)の使いみち
全国の皆さまからお寄せいただいた義援金は、菊池市災害義援金配分委員会で配分対象が決定され、以下の方々へ配分します。
《配分対象者》
・人的被害(死亡者、重傷者)
・建物被害(全壊、大規模半壊、半壊、修理費用50万円以上100万円未満の一部損壊)
②菊池市災害寄付金(60,064,974円)
③ふるさと菊池応援寄付金(104,740,805円)の使いみち
事業名 | 予算額 | 内容 |
---|---|---|
熊本地震各区見舞金 | 36,340,000円 | 全211区に支出し地元復興支援の一部に充てる見舞金 |
災害見舞金(市単独補助) | 95,520,000円 | 人的被害、建物被害を受けた方に対しての見舞金 |
観光業災害復興事業 | 43,066,000円 | 観光業の復興のために観光客誘致などの事業に活用 |
農業・畜産復興事業 | 589,200,000円 | 農業・畜産業で被災された方の支援に活用 |
教育施設復興事業(学校・文化財) | 11,031,000円 | 学校施設および文化財復興支援事業に活用 |
合計 | 775,157,000円 |
菊池市の一般会計予算
【歳入:義援金・寄付金の総額】
名称 | 件数 | 金額 |
---|---|---|
①菊池市災害義援金 | 576 | 105,477,293円 |
②菊池市災害寄付金 | 158 | 60,064,974円 |
③ふるさと菊池応援寄付金・災害応援寄付(返礼品なし) | 20,361 | 104,740,805円 |
合計 | 21,095 | 270,283,072円 |
※義援金…被災地の自治体に送られ、義援金配分委員会によって寄付金の100%が公平・平等に被災者へ配布されます。
※寄付金…自治体で用途を決定し、復旧・復興活動に使われます。
【被害】
被害区分 | 被害額 | 概要 |
---|---|---|
道路 | 6億7,480万円 | 水害含む。通行止め:市道5カ所 |
河川 | 2カ所 | |
農作物 | 682万円 | スイカ0.13ha、イチゴ1ha、カスミソウ14,000本 |
畜産業 | 1億4,380万円 | 乳用牛3頭、肉用牛19頭、生乳176,6t、採卵鶏10万羽、卵201,150kg |
畜産施設等 | 21億円 | 111経営体見込み:畜舎等 |
農業用倉庫等 | 8億4,600万円 | 176経営体見込み:農業用格納庫、作業場、機械等 |
農林業 | 3億1,190万円 | 農地、農業用水路、菊池台地関連施設等583件、林道31件 |
商工業 | 8億5,037万円 | 建物、設備、商品等253件 |
学校施設 | 2億1,377万円 | 12学校施設および4校備品 |
社会教育施設 | 4,077万円 | 8施設 |
文化財施設 | 1億1,186万円 | 23カ所 |
自治公民館 | 2,500万円 | 85施設 |
社会体育施設 | 2億1,996万円 | 24施設 |
災害廃棄物処理(公費解体含む) | 41億2,414万円 | 2017年度末までの処理費用を含む |
【歳入と被害総額の比較】

菊池市ふるさと納税担当課職員より寄付者の皆さまへ
平成28年熊本地震に際しましては、全国の皆さまから寄付金を頂戴いたしましたことに心から感謝申し上げます。
2016年4月14 日と16 日の2度にわたる最大震度7の地震は、熊本県に甚大な被害をもたらしました。当市におきましても、多くの人的被害や家屋などの全半壊、道路の損壊、土砂崩落などが発生しました。
この難局に対し、市民と職員が一丸となり、一日も早い復興を目指して立ち向かってまいりました。震災から1年が経過したいま災害当初の混乱も落ち着いてきたところであります。これもひとえに皆さまからのあたたかいご支援のたまものと感謝申し上げます。
復興への道のりはまだまだ険しく、道半ばではありますが、「新生きくち」に向け、一歩一歩力強く、粘り強く歩んでまいります。
今後とも温かいご支援、ご鞭撻をお願い申し上げますとともに、近い将来復興した菊池市に皆さまをお迎えする日を心待ちにしています。
菊池市役所 政策企画部 企画振興課
地域振興係 主事 松村翔太