きれいな海と豊かな自然の漁港で生まれた、ラー油系「勝浦タンタンメン」
商標:
勝浦タンタンメン 商標登録 第5703819号

1. 権利者の紹介
- 権利者名:ONE勝浦企業組合
- 住所:千葉県勝浦市墨名657番地2
2. 地域団体商標及び使用する商品・役務の内容
- 地域団体商標名:勝浦タンタンメン(かつうらたんたんめん)
- 商標登録番号:第5703819号
- 指定商品又は役務:千葉県勝浦市及びその周辺地域 におけるタンタンメンの提供
3. 地域団体商標出願に向けての取り組み
(1)従来におけるブランド保護の取り組み
勝浦(かつうら)は、上総地方の南部(千葉県南東部)に位置し、県下2位の漁獲量のある漁港を持ち、古くから漁師町として栄えた地域です。
勝浦のタンタンメンは、当地の海女さん・漁師さんが寒い海仕事の後に、冷えた体を温めるメニューとして定着してきました。その特徴は、通常のゴマ系と違い、醤油ベースのラー油が多く使われたラー油系タンタンメンです。具材にミジン切りの玉ネギと挽肉が入るのが一般的で、ニンニク、ニラ、ネギが入ったり、スープも味噌ベースのお店があったりと、各店が特色を生かしたメニューを提供しております。
従来のブランド保護の取組としては、元々、「勝浦タンタンメン」という名称ではなく、単なるタンタンメンとして勝浦では根付いていたものの、ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリに出展するにあたり、地域名がつくというのが要件となっていたため、それを機に「勝浦タンタンメン」として活動し始めました。2011年にB-1グランプリに初出展、それ以降毎年出展して「勝浦タンタンメン」をPRしてきました。

(2)地域団体商標出願の動機
地域団体商標を知ったきっかけは、B-1グランプリに出展する団体の集まりである「愛B リーグ」に所属した際に、事務局から地域団体商標というものがあるということを聞いたことです。その後、どうすれば取得できるのかを調査していく中で、商工会にも協力してもらい、千葉県中小企業団体中央会を通じて出願するという流れになりました。
登録になるのは難しいという話は聞いていましたが、「愛Bリーグ」に所属するある団体が商標権を取得していたので、その団体から話を聞くうちに出願しようということになりました。
また、模倣品も出願前から多く存在しており、商標権を取得しなければブランドを守れないのではないかという意識もありました。
(3)地域団体商標出願の準備
周知活動の一環として、組合では食品メーカーと協力して、即席麺の商品開発を行ってきました。商品開発は各取扱店とは別に、組合独自で10種以上開発してきました。
一番大きい周知活動としては、B-1グランプリに出展したことです。上位に入っていけばメディアに取り上げてもらうきっかけになると考え、取り組んできました。我々、熱血!!「勝浦タンタンメン」 船団は、2013年が3位、2014年が2位、2015年でついに1位(ゴールドグランプリ)を獲得しました。5年間出展していて、すべて入賞(10位以内)していたのですが、やはり、ゴールドグランプリをとるとメディアの反応が全然違うことを実感しています。

出願に際して一番苦労したことは、当初、組合員の母体が商工会の青年部であったところ、「勝浦タンタンメン」を扱っているお店が一定程度加盟していなければならないという条件があったので、取扱店に出資してもらい加盟してもらうよう働きかけを行ったことです。取扱店の中には、「勝浦タンタンメン」という地域団体商標が必要なのかという疑問をもつ方もいましたが、今後ブランドを守る上で必要だということを説得して加盟してもらいました。
元々地域に根付いていたからこそ難しかったところは、「勝浦タンタンメン」の定義付けでした。商売敵同士である取扱店を集めて「勝浦タンタンメン」の定義の議論をしても意見も出ず、なかなかまとまりませんでしたが、あるお店のレシピを公開してもらったことをきっかけに、そのレシピをベースに多くの店に共通する味の定義付けをまとめていくことができました。
行政等との協力については、当初、組合は市民団体で始まりましたが、まちおこしを行政任せにするのではなく行政に働きかけることで一緒にまちおこしをしていこうということで動き出しました。その際、市、観光協会、商工会を巻き込んでいき、それぞれ役割分担(市なら広報費、商工会なら事務所の間借りなど)をしていただきました。そのため、今でも行政も含め横の繋がりは強いです。
4. 地域団体商標の権利取得後のブランド管理及びブランド展開
(1)ブランド管理及び商品・役務の品質管理(管理手法・体制等)
品質基準はおいていませんが、「勝浦タンタンメン」の定義はあります。基本醤油ベース(みそ、とんこつのベースもあります)で、ラー油、タマネギ、挽肉、ニンニクが具材として入っていることです。上記定義を守りつつ、組合に所属していれば商標を使用することができます。組合に入るために勝浦市在住もしくは法人であれば登記が勝浦市になければならないとしています。
(2)ブランド展開
商品開発以外だと、飲料メーカーさんに協力してもらい、勝浦市の自動販売機の飾りに「勝浦タンタンメン」の商標を使用しています。災害時に自動販売機を備蓄倉庫として使うために、ハンドルを回せば使用することができるようになっており、勝浦市内に15台設置しています。本件は、勝浦市と飲料メーカーさんが防災協定を結ぶ際の仲介役として我々が動き、3者の協力で実現しました。

5. 地域団体商標権利取得後の効果
権利行使については、弁理士の方々と協力し警告文を送るなどの活動を実施しています。その際、エンドユーザーさんからの通報が情報源となっていることもあります。
他企業とのタイアップに関しては、いくつかの企業から社員食堂での提供に関して要望があったため、許諾料をとって使用許諾を実施しています。許諾に当たっては「愛Bリーグ」さんと協議して、勝浦のまちおこしにつながる提携かどうか判断した上で許諾するようにしています。
組合の開発商品の売り上げについては、地域団体商標を取得後というよりは2015年10月のB-1グランプリ優勝が影響して売上が伸びました。やはり、取得するだけではなくそれを活用してどのようにブランド発信をしていくかが重要と考えています。
その他の効果としては、地域団体商標を取得したことで、組合員のそれぞれに商標権保護の意識が芽生えていることです。
6. 今後地域団体商標を出願する者に対してのアドバイス
我々は、ご当地グルメとB級グルメというのはまったく別物であると考えています。ご当地グルメというのは地元に根付いたグルメで、B級グルメというのは新たに作ったものでも呼ぶことができます。新規でやることは間違いではないですが、ただ単に新しいものを作っただけでは全く拡がりはなく、活動を継続し地域に根付いたものを発信していくことが 重要だと考えています。
いきなりまちおこしとして真新しいことを始めるのではなく、地域の財産として潜在的に隠れているものがあるはずなので、それをまず探していくことが地域ブランド振興においては近道ではないかと思います。今回、B-1グランプリでは「勝浦タンタンメン」を提供していることが大きくメディアで取り上げられていますが、あくまで勝浦という「まち」の PRが第一ということです。
7. 最後に
元々、「勝浦タンタンメン」は漁師さんや海女さんが漁から上がった後に体を温めるために作られた食べ物です。冬場など寒い季節には最適な食べ物です。きれいな海と豊かな自然がある勝浦に是非お越しいただき、「勝浦タンタンメン」をご賞味いただければ幸いです。
