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第5回レポート 「ふるさと納税・地方創生研究会」

※以下は「月刊 事業構想 2017年12月号」の内容を許可をいただいて掲載しています。

地域活性化に向けた持続的なふるさと納税の運用を検討
ふるさと納税で地域の魅力を再発見

2017年10月10日、事業構想大学院大学が主催する第5回『ふるさと納税・地方創生研究会』が行われた。
事例研究や定量分析を通し、ふるさと納税の適正な運用や地域活性化につなげるための在り方を検討していく。(2017年10月10日実施)

岡田直樹氏 泉南市総合政策部 政策推進課

岡田直樹氏
泉南市総合政策部 政策推進課

寄附金を活用した事業によって、
地域の活性化を検討

第5回目の研究会の事例は、2008年の制度創設以来2度の改善を行い、2016年度、大きく寄附額を伸ばした大阪府泉南市。
ふるさと納税を担当する泉南市の政策推進課の岡田直樹氏によると、「長らく寄附が低迷するなかで、名物品の発掘が急務であった」という。
当時、特産品がほとんどないような地域であったため、地域の会社を回り、SNSやホームページでの情報を隈なく探した。2014年の改善では、返礼品拡充を図るため、新しい制度として『ふるさと泉南応援寄附サポート事業者制度』をスタートさせた。この制度によって、通常泉南市役所と取引を行わない事業者とも契約ができるようになった。事業者との連携を強化するこのような取組の結果、それまでの1事業者8品目から14事業者46品目に拡大。クレジット収納を導入したこともあり、寄附も500万円規模に倍増した。
その頃から事業者との連携を深めて、「どうにかせんなん、なんかせんなん(どうにかしないといけない)」を合い言葉に事業者を集めた座談会も開催した。
実際の事業者の中で、SNSや動画投稿を活用したり、商品PRにおいての写真撮影を工夫したり、事業者同士で話し合い、連携が生まれるという成果を上げた。
岡田氏は、「このような取組をすすめる上で、返礼品として特産品がないと思っていたが、個性的な事業者や商品があることに気づき、事業者の意欲も高まった」と語る。
寄附金の活用については、「職員提案制度」を採用して、寄附金を有効に活用するアイデアを職員から募集することとした。この職員提案制度は、まさにふるさと納税を運営していく中で施策化した制度である。寄附者の恩に応えようと、職員や庁内の活性化にも繋がったという。
この1年、半年で成長している泉南市は、リピーター確保と新規ユーザーの発掘を始め、事業者との連携、自治体職員の閉塞感を払拭する職員提案制度を活用し、活性化を狙う。

佐々木直美氏 キリン株式会社 コーポレートコミュニケーション部

佐々木直美氏
キリン株式会社 コーポレートコミュニケーション部

マーケティングの観点から見る
ふるさと納税

産業界の活動からも知見を得るべく、地域密着型の商品開発で『47都道府県の一番搾り』を発売するキリンの佐々木直美氏を招聘。47通りのビールを作るという、他社には真似のできない新しいチャレンジの経験から、地域と顧客とのコミュニケーションについて紹介があった。
「コト消費や社会貢献意欲、地元愛、絆というところがポイント。これを顕在化するコミュニケーションを展開してはどうか」と提言をされた。
「返礼品を自治体の取組とマッチさせた形で整え、返礼品を通して取組を理解してもらうような体験型や、活動報告で理解とコミュニケーションを深めることが重要ではないか」と語った。

小西砂千夫氏 関西学院大学大学院 経済学研究科教授

小西砂千夫氏
関西学院大学大学院 経済学研究科教授

制度存続へ向け、運用の適正化必要

泉南市、キリンの事例発表を受けて、地方財政が専門の関西学院大学の小西砂千夫教授は、以下の指摘をした。
「趣旨と違う状態になっているという印象を、地方自治体関係者以外の方が持っているということはすなわち、ふるさと納税の存続の危機である」と述べたうえで、寄附税制としての運用の最適化という基本への回帰を促した。
また、使途の明確化も重要視する。ふるさと納税なしでも実施するはずだった事業にふるさと納税を充てて、一般財源を浮かしている場合、果たして、「ふるさと納税寄附額を使途に充てた」と言えるかどうか、疑問を投げかけた。
ふるさと納税研究会では、こうした観点を踏まえた上で、地方創生の実現の手段としての効用や、節度ある運用の必要性を整理して、ガイドラインとして公表していく方針だ。
また、ふるさと納税・地方創生研究会では、ふるさと納税制度でのあり方が問われる中で効果を数値化することで、制度の持続可能性を確保し、節度ある運用の必要性を示すため、地方創生への効果を定量的に算出する分析を行っており、中間報告が事業構想研究所より行われた。(協力:さとふる)

定量分析中間報告

この定量分析は、大きく「①寄附者動向調査」「②経済波及効果」「③地域への社会的効果」3つに分かれており、今回は①寄附者動向調査及び②経済波及効果の速報と分析を公開した。①の寄附者動向調査では、特定のお礼品について、返礼品率を20%・30%・40%・50%に変動させたときのそれぞれの寄附意向を、直近1年間に寄附経験のある3,258人に対してアンケート調査を実施。この調査によって、返礼品率の変化によって、どのくらい寄附額が変動するかが明らかになった。
当研究の報告は、次回の研究会で最終報告が行われ、11月7日に予定されているふるさと納税・地方創生フォーラムにて公表される。

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