ふるさと納税で保育料は安くなる?
ふるさと納税で、保育料が安くなると聞いたことはあるでしょうか。ふるさと納税をすると、住民税や所得税などの控除を受けることができるため、保育料も安くなると考えている人も多いようです。また、平成27年4月からすべての自治体で保育料の算定方法が変わったため、まだ制度の理解が浸透していない傾向もみられます。
従来は、保護者の所得税額を基準として保育料が計算されていましたが、新制度では住民税の所得割額が算定基準になっています。住民税は、道府県民税や市町村民税、所得割や均等割などやや複雑な計算が必要です。このことも保育料と住民税の関係を理解しにくくしている原因でしょう。
ここでは、保育料の決め方や住民税所得割額、医療費控除や生命保険料控除などの所得控除、ふるさと納税の控除としての役割などを説明します。
保育料はどうやって決まる?
公立保育所の場合、保育料は児童の扶養義務者(保護者)の住民税のうち市町村民税や特別区民税(東京23区の場合)の所得割額(所得割額非課税世帯については均等割額)によって決まります。ただし、保育料の算定基準は、税額控除前の金額です。
扶養義務者は原則として父母ですが、父母の所得割額、均等割額が非課税で一定の収入に満たない場合は、同居の祖父母などの所得割額が算定基準になることがあります。
保育料の毎年4~8月分は前年度の市町村民税額や特別区民税額、9月~翌3月分は当年度市町村民税額や特別区民税額を基準に算定します。
住民税には個人住民税と法人住民税があり、保育料は個人住民税が算定基準になっています。個人住民税は、都道府県民税と市町村民税(東京23区は特別区民税)の総称です。1月1日時点の住所地に納付する税金で、都道府県民税は都道府県、市町村民税や特別区民税は市町村や東京23区が徴収します。
個人住民税は、「所得割額」と「均等割額」を併せたものです。所得割額は、前年の1~12月までの所得に応じて税額が決まります。均等割額は、定められた額で一律に課税されます。
所得割額は、次の計算式で算出します。
(前年の所得金額-所得控除額)×税率-税額控除額=所得割額
住民税の所得控除額には、基礎控除(33万円)、所得要件のある扶養控除(親族の年齢等により1人につき33・38・45万円)、配偶者控除(一般の配偶者33万円・70歳以上の配偶者38万円)、配偶者特別控除(上限33万円)、社会保険料控除(支払った全額)、生命保険料控除(合計限度額7万円)、小規模企業共済等控除(支払った金額)、医療費控除(控除限度額200万円)などがあります。
税率については標準税率が定められており、一律10%で内訳は都道府県民税が4%、市町村税や特別区民税が6%です。多くの自治体は標準税率をとっていますが、各自治体で増減が設定できるようになっています。
税額控除額の対象となるのは、寄付金、住宅ローンの金利、ふるさと納税などです。所得割額非課税世帯とは、所得割額がなく均等割額だけが課税される世帯のことをいいます。均等割額の平成26~35年度までの標準税率(年額)は、市町村税や特別区民税が3500円、都道府県税が1500円です(東京都等の場合。自治体によっては金額が異なります)。
保育料を安くできるのは医療費控除と生命保険料控除
医療費控除や生命保険料控除は、所得控除にあたります。所得控除は、納税者の負担能力を考慮して課税することが目的です。このため、所得控除が多ければ多いほど、住民税や所得税として課税される金額が少なくなります。それにともない、保育料も安くなります。
医療費控除とは、本人や生計を一にする家族が1月1日~12月31日までの1年間で支払った医療費の一部を、住民税や所得税から控除することです。医療費控除の適用を受けるためには、個人事業主だけでなく会社員も確定申告をしなければなりません。
医療費控除の額は、次の式で計算した金額で、上限は200万円です。
実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額)=医療費控除の額
医療費控除の対象となる医療費には、「医師または歯科医師による治療費、薬代」「治療または療養に必要な医薬品の購入代金(風邪をひいた場合の風邪薬など)」「病院への通院費」「入院の際の部屋代や食事代」「妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、通院費用」「出産で入院する際の交通費」「子どもの歯列矯正」などがあります。
保険金などで補填される金額とは、生命保険などで支給される入院費給付金、健康保険などで支給される高額療養費や家族療養費、出産育児一時金などのことです。
生命保険料控除は、1月1日~12月31日までの1年間で払い込んだ生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料に応じて、所得控除を受けることができる制度です。
会社員の場合は年末調整で、個人事業主の場合は確定申告で手続きをします。会社員の場合でも年収が2000万円を超える場合や給与所得及び退職所得以外に20万円を超える他の所得がある場合、年末調整で生命保険料控除に必要な書類を提出していなかった場合などは、確定申告で手続きをする必要があります。
生命保険料控除制度は、平成25年度の住民税から改正されました。この改正により、平成24年1月1日以後に締結した保険契約は新制度が適用され、平成23年12月31日までに締結した保険契約は従前の制度が適用されます。
従前の制度では「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」でしたが、新制度では「介護医療保険料控除」が追加されました。平成24年1月1日以後に締結した保険契約で年間の支払保険料が56,000円超の場合、一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の適用限度額はそれぞれ2万8000円で、合計の限度額は7万円です。
所得控除には、医療費控除や生命保険料控除のほかに、「雑損控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」「地震保険料控除」「障害者控除」「寡婦控除」「寡夫控除」「勤労学生控除」「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」「基礎控除」があります。
ふるさと納税は保育料を安くできる?
ふるさと納税は、住民税では税額控除、所得税では所得控除の対象となっています。
しかし、保育料については住民税のうち市町村民税や特別区民税の所得割の税額控除前の金額が算定基準です。そのため、ふるさと納税は、保育料の増減には関係しません。
ふるさと納税ができるのは住民税と所得税の控除
ふるさと納税は、地方自治体へ寄付をすることによって、地域創生に参加する制度です。自分の好きな自治体に、寄付をすることができます。「お礼品」として、地域の特産品や名産品を貰えることが特徴です。
しかし、ふるさと納税が控除対象となるのは、あくまでも住民税と所得税に限られています。それも寄付金によって得られる控除なので、浮いたお金で保育料に補てんするという考え方は現実的ではありません。
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例外的にふるさと納税で保育料を安くする方法
例外的に、寄付先の自治体の返礼品が保育料の割引である場合には、ふるさと納税でも保育料が安くなることがあります。実際に少子化対策の一環として、第二子以降の保育料(給食費含む)を無条件で無料化している自治体が存在します。
また、寄付してもらったふるさと納税金を財源にして、保育料を無料にしている自治体もあります。ただし、自治体が限定されるため、誰もが気軽に利用できるものではありません。
それぞれの控除の役割を覚えておこう
保育料は、児童の保護者の住民税のうち市町村民税や特別区民税の所得割額で決まります。ただし、税額控除をする前の金額です。ふるさと納税は住民税の税額控除にあたるため、保育料を安くすることはできません。
しかし、住民税の税額控除や所得税の所得控除を受けることができるという効果があります。保育料に関係するのは、医療費控除や生命保険料控除などの所得控除です。所得控除の額が大きくなると、保育料が安くなります。そのため、自分にあてはまる控除を見落とすことなく、正確に年末調整や確定申告をすることが大切です。
このように、控除の種類によって効果が違ってくるので、それぞれの控除の役割をしっかりと理解したうえで、ふるさと納税を行うようにしましょう。