2023/06/30
寄付者のニーズを大切にして寄付額が5倍に
千葉県勝浦市 株式会社 西川の「訳あり品」が成長の鍵
房総半島の南東部に位置する千葉県勝浦市。市内には17もの漁港があり、金目鯛や鰹など様々な魚が水揚げされます。農業も盛んで、海の幸だけでなく山の幸も多く、400年以上続く勝浦朝市が有名です。
そんな勝浦市は、2022年のふるさと納税寄付額が2019年と比較し成長率500%までに伸長し、大きな注目を集めています。
そんな勝浦市の企画課 吉田知生さんと、勝浦市が寄付額を大きく伸ばしたきっかけとなった株式会社 西川の雲類鷲太郎さん、恋塚有美さんに話を伺いました。
勝浦市のふるさと納税
豊富な資源に恵まれた勝浦市。「さとふる」で掲載を開始し、ふるさと納税の寄付が伸び始めたと勝浦市企画課 吉田さんが教えてくれました。
「2008年の制度開始から毎年数件の寄付はありましたが、2015年6月に『さとふる』にお礼品掲載をはじめてから寄付が伸び始めました。これはさとふるに専門的なアドバイスをいただいた結果であると感じています。写真の撮影や画像の加工など、市単独ではここまではやれないというところまで対応してくれています。ここまで寄付が伸びたのもさとふるのおかげだと思っていますね」(吉田さん)
勝浦朝市の様子
勝浦漁港を生産拠点とした生鮮食品をメインにお礼品を展開している勝浦市。魚介だけでなく、お米やはちみつ、マリンスポーツ体験など、地域の資源を有効に活用したお礼品が多く、様々なラインアップがそろっています。
「どの角度から見ても勝浦に行ってみたいな、と思ってもらえるようにしたいので、色々なお礼品を用意しています。寄付者様にマンネリ感をもたせないように、今後さらにお礼品を拡充していきたいので、常に新規のお礼品を拡充するため事業者への声掛けなどを行っていきたいです」(吉田さん)
勝浦漁港の様子
2019年と比較し寄付額が5倍に
そんな勝浦市のお礼品の中で絶大な人気を誇るのが株式会社 西川の「【訳あり】人気の海鮮返礼品 B級銀鮭切り身約2.8kg」です。
吉田さんは、「訳あり銀鮭切り身」のリピーターの多さが、2022年のふるさと納税寄付額が2019年と比較し成長率500%までに伸長した要因になっているのではと教えてくれました。
訳あり銀鮭切り身はレビュー評価も高い
「非常に人気が高く、勝浦市への寄付の入口になっているとも言えます。最近は『訳あり銀鮭切り身』のリピーターからの紹介や口コミから、新規の寄付者増につながり、勝浦市のリピーターが根付いてきた、という印象があります。『訳あり銀鮭切り身』を気に入ってくださり、リピーターとなり、実際に訪問してみた、という寄付者様のお声をいただいたこともあり、ニーズに応えられているんだな、ふるさと納税を通して勝浦市のPRができているんだな、と実感します」(吉田さん)
勝浦漁港があるから商売ができている
「【訳あり】人気の海鮮返礼品 B級銀鮭切り身約2.8kg」を提供する株式会社 西川は、1860年に勝浦の港に船を誘致する廻船問屋として創業。
現在は、廻船問屋に加え、全国の漁港からの買い付け、加工、販売までを行っています。
先代の会長が、勝浦漁港の主力であるサバ以外も取り扱えないかと、勝浦港にカツオを誘致したことをきっかけに、以降も様々な水産物を勝浦漁港へ誘致。取扱商品も徐々に増加し、当時は市場での販売のみだったところが、1980年に量販店での販売をスタートさせ、現在はふるさと納税・EC事業専門の部門も用意されています。
株式会社 西川の漁船
株式会社 西川の雲類鷲さんは、昔から大切にしている想いを教えてくれました。
「勝浦漁港があるから商売ができていると思っているため、"地域を大切にしたい"という想いが強いですね。食品安全のガイドラインであるISO22000を取得しており、安心で安全な品を届けることが顧客満足につながるのではないかと考えています。顧客満足度向上を目指すことで、結果的に地域に恩返しになると思っています」(雲類鷲さん)
寄付額増の要「訳あり銀鮭切り身」
「訳あり銀鮭切り身」のお礼品提供の経緯を伺ったところ、幅広く業務展開している西川だからこそ提供できたことがわかりました。
「我々は加工工場運営をしているため、魚を1尾丸ごと取り扱っています。従来の販売方法ですと色や形が悪いものはどうしても売りにくくなっていました。またカマや尻尾部分は不要とされ、中には廃棄していた部分もありました。 従来の販売方法では販売しにくい部位が大量に出るので、試しにふるさと納税に出してみたのがきっかけです」(雲類鷲さん)
銀鮭加工の様子
この「訳あり銀鮭切り身」を皮切りに社内から「これもお礼品にしてみては?」と声が上がり、徐々に新しいお礼品が増えていったそうです。これには「さとふる」ならではの仕組みが関係しているそうです。
「従来の販売スタイルだと最初にロット数を確保しなくてはいけないため、確実に利益を見込めるものでしか展開できないので商品拡充のハードルが高いです。さとふるの場合、最低ロットがないので在庫が少ない品も登録できます。そこで寄付者の方の反応がよければ在庫を増やしていく、というように、試験的に新しいお礼品を展開できます。サバなどの他のお礼品も増やしていきました」(雲類鷲さん)
こうしてお礼品のラインアップを増やしていき、市から誘われさとふるにお礼品提供を開始した2015年は5千件程度だった寄付が、翌年には11万件に増加し、2021年度は34万件、2022年は50万件(見込み)と大きく寄付を伸ばしています。
何度も「直接買えるところはないのか?」という問い合わせを受けたこともあり、「ふるさと納税で自社の知名度が上がった」と感じているそうです。
ふるさと納税を通して見えてきたマーケット
「訳あり銀鮭切り身」のヒットのおかげで、見た目よりボリュームが重視されるなど徐々に寄付者の方々のニーズが見えてきたと言います。
「従来の取引先からから、今は高齢化、核家族化が進み個食パックの方が望まれている、と聞いていたのですが、売り手からすると個食パックは手間もコストもかかるので正直積極的な展開は難しいと思っていました。アドバイスを参考にふるさと納税でも当初はミシン目を入れて、1個1個切れるようにして提供していたのですが、『訳あり・大容量』のお礼品を出してみるとこちらの方が反応が良かったんです」(雲類鷲さん)
単身者や高齢者には小分パックが好まれ、子育て世代には、手間がかかったとしてもボリュームが求められるといったように、消費者のニーズを知ることができたのは大きな収穫と言えます。
株式会社 西川 雲類鷲太郎さん(左)恋塚有美さん(右)
ふるさと納税をきっかけにEC事業を展開
「さとふるのシステムを参考に、EC事業の勉強ができたので次に踏み出せた。ふるさと納税がなければEC事業に参入できていない」と語る雲類鷲さん。
「例えば、量販店への販売の場合、商品の加工から、出荷のための伝票作成、販売状況の管理、請求書発行などの多くの作業が発生し、事務作業の負担が大きいのですが、『さとふる』の場合、お礼品の登録後は指示された通りに品物を用意しておくだけでいいんです。あとはさとふるがやってくれるので助かります。確認作業も、さとふるで確認できる資料1枚を付け合わせれば良いだけですし、販売状況の管理もシステムを確認するだけ。今までやっていたのは何だったんだ...と紙ベースで作業していた側からすると目から鱗でした」(雲類鷲さん)
「さとふる」をきっかけにWEBをうまく活用することを学び、2021年にふるさと納税・EC事業部門を新設し、他のECサイトに展開できるようになったとのこと。また、部門新設に伴い、恋塚さんが仲間入りしました。
「従来の販売方法で販売数量が伸びた場合、事務作業が増え、人件費などのコストも増えますが、EC事業の場合は販売数が増えても、品物以外へのインパクトが少ないため、その分利益を品物に反映し、より良いものを安く提供できるので、消費者の方に還元することができます」(恋塚さん)
魚の消費拡大に貢献したい
恋塚さんは、魚の消費が落ちている今だからこそ、もっと魚を食べてほしい。そのために手に取りやすい価格で提供し、まだまだ知られていない美味しい魚を知ってもらいたいと言います。
「魚屋さんがつくった簡単レシピなどを紹介したり、美味しい食べ方を提案したりできたらと考えています。もっと魚を食べてもらって、日本の消費拡大につながれば嬉しいですね」(恋塚さん)
「勝浦漁港があるから商売が出来ているという前提があるので、地域への想いが強い会社です。ふるさと納税で取扱高が増え、現在の工場では手狭になってきたので、どのように生産量を増やしていくのか検討しています。今後も私たちのお礼品を選んでいただき、地域に貢献できたらと思います」(雲類鷲さん)
市内の商店・商店街にも活気が
最後に、勝浦市の吉田さんに、ふるさと納税の効果について伺いました。
「ふるさと納税の寄付金は道路など様々な整備のほか、勝浦朝市や商店街の活性化のためのイベント開催費用などに活用されています。市民の方もふるさと納税のおかげかな、と思ってくれているのではないでしょうか」(吉田さん)
勝浦朝市 多くの人で賑わっている
「また、最近は交流人口が増えたように感じます。新型コロナウイルスが落ち着いたこともあるかもしれませんが、県外からきている方が増えてきている印象がありますね」(吉田さん)
ふるさと納税をきっかけに勝浦市を知ってもらい足を運んでもらう、体験してもらうことにつながれば理想と考える勝浦市は、移住定住にも力を入れ、部署を新設。夏は涼しく避暑地として良い土地だと去年メディアで取り上げられたこともあり、問合せが増加しているそうです。
「寄付者様のニーズを一番大切にし、丁寧に対応する。こうして増えたリピーターが応援し続けてくれる、ファンで居続けてもらう、ということが目標です」(吉田さん)
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