2024/12/27
SDGsなアイデア勝負で寄付件数増加
地場の一大産業「お茶」を守る 株式会社山英
江戸時代、東海道の主要宿場町だった掛川宿は城下町として発展し、掛川市の東西を横断する街道沿いには多くの歴史資産が残っています。
またこの地で作られる「深蒸し掛川茶」は全国茶品評会で通算26回もの産地賞を受賞しており、掛川市は日本有数のお茶処としても広く知られています。
そんな全国屈指のお茶処で、アイデア勝負で大きく寄付を伸ばした老舗お茶メーカーがあります。そのアイデアとは?
株式会社山英(やまえい)の石川慎哉さんにお話を聞きました。
品質への強いこだわりと確かな自信
株式会社山英は、静岡県掛川市に拠点を置く老舗のお茶メーカーです。
1927年の創業当初は、主にお茶作りに特化した肥料を製造販売する会社でしたが、1980年頃にお茶の製造販売に参入。現在では契約農家と直接取引を行い、自社工場で製造した高品質なお茶を提供しています。
山英には「食べるお茶」という商品があります。
お茶を入れた後の茶殻にもまだまだ栄養分は含まれており、「丸ごと食べることができればその栄養素を100%摂取できるでは」という考えのもと現会長の山崎英利さんが考案し、茶葉を直接食べることができる業界初の食用専用茶を作りました。サクサクした食感が特徴で、料理やお菓子作りのほか、そのままふりかけとしても食べることができます。
この「食べるお茶」は、契約農家に依頼して食用茶専用の茶園を作り、残留農薬ゼロで安心して食べられるように育てられた茶葉を使用。また、その開発においては業界初のクリーンルーム化を実現し、安全性を追求した農産物加工場を建設しました。
その品質管理の高さは静岡県内でも高く評価されており、この加工場は静岡県よりHACCP※普及推進モデル事業所として認定されており、HACCP取得を希望する企業に向け、県が山英の工場見学を勧めるほどなのだそうです。
※「HACCP(ハサップ)」とは、食の安全性を確保するための国際的な衛生管理手法のこと。日本では、2021年から食品を扱う全事業者に対して導入が義務化となりました。
HACCP承認の農産物加工場
衛生管理が徹底された工場内の様子
ふるさと納税をきっかけに認知拡大 リピーターの増加にも
さとふるにふるさと納税のお礼品事業者として登録をしたのは2019年の秋。
翌年には、世界的に猛威を振るったコロナウィルスの影響で外出を控える人々が増え、自宅でのお茶需要が高まったこともあり、ふるさと納税の寄付額を含め売り上げは2.5~3倍に増えたのだそうです。
「お礼品として初めて山英のお茶を飲んだ方がリピーターになってくれたり、(ふるさと納税のお礼品と)同じお茶はどれかとの問い合わせも増えたりして、直接購入につながるケースも増えました。ふるさと納税をきっかけに多くの方に山英のお茶を知ってもらい、リピーター増加にもつながったことには大変感謝しています」(石川さん)
コロナ後には、手軽に飲むことができるティーバックの需要が増えたそうで、今は世の中の流れに合わせラインナップも増やしています。特にふるさと納税の寄付が増える10~12月は、お礼品に重きを置いて生産しているそうです。
人気の「訳あり」お礼品はどうやって生まれたのか
山英の資材室には、「サンプル用」「廃版になった」「デザインの刷新」「取引がなくなった」などの理由から数々の美しいお茶袋が在庫の山として眠っていました。
高品質の茶葉が入っている袋は、丹精込めて栽培された高品質の茶葉同様、中身に応じて装丁も美しく材質も丈夫なものが多いのです。
お茶袋の在庫
「仕方なく廃棄していたのですが、品質もいいし、デザインも凝ったものが多く綺麗なのにもったいないな、という想いはずっとあったんです」(石川さん)
この大量のお茶袋を何かに活用できないだろうか...そうして閃いたのが「訳あり品」です。
訳ありの理由は、専用のお茶袋ではなく余ったお茶袋にお茶を詰めて提供しているから。
通常「訳あり品」は、製造過程でできてしまった割れや欠け、規定外サイズといった理由により、正規品として販売できないものであることが多いのですが、山英の「訳あり品」は、中に入っているお茶そのものは高品質なものでありながら、余ったお茶袋を使用しているため袋のデザインがランダムであることが特徴です。
色とりどりのお茶袋
当初は袋が違うことで中身は同じなのか?という問い合わせもあったそうですが、今では好意的なレビューが多数寄せられています。
<お礼品レビュー>
・訳ありとのことですが、箱を開けたら何種類ものとても綺麗なお茶袋にうれしい誤算!
・可愛いパッケージが多く、なおかつ、お茶の量もたっぷりで美味しい
・パッケージも素敵で、友達へのお裾分けにも利用しています
・余った袋でリサイクルを推進しているなんてむしろ好印象
「袋がバリエーションに富んでいるというのも、好評いただいている理由かなと思います。多くのご寄付をいただいたことで在庫の山になっていたところにスペースが生まれました(笑)。袋はもともとあったものだから0円。その分の費用をお茶に還元できる、つまりはよりよい品質のお茶を提供できるんです」(石川さん)
さとふるで人気の【訳あり】深蒸し掛川茶100g×10袋
地場の一大産業を守るために
お茶の産地として名高い掛川市において、独自のアイデアと高品質な商品で寄付を大きく伸ばしている山英に、今後の目標について聞きました。
「掛川市のお礼品として提供することで掛川茶や山英のお茶を広く知ってもらい、地域に貢献できていると感じています。
一方で、今お茶の価格が下がっていて、農家さんはとても苦しい状態にあります。我々が一定の購入数を確保し事前にお伝えすることで、安心してお茶を作っていただきたい。掛川市も、(生産者と仕入れ先が)同じ立場でフェアな売買ができるようフェアトレードを推奨しています」
また「訳あり品」誕生のもとになったSDGsについての想いも語ってくれました。
「工場にソーラーパネルを設置し、クリーンエネルギーを活用して脱炭素に取り組むなど、SDGs(持続可能な開発目標)にも積極的に取り組んでいます。余ったパッケージを活用した訳あり返礼品もその一環で、『訳あり品』として提供することで余剰品の再利用に価値を見出すことができました。
一大産地である掛川のお茶産業が『持続可能な』『ずっとつづけられる』ような取り組みを今後も続けていきたいです」
今は手軽なティーバックやお湯に溶かすだけの粉末タイプも増えましたが「深蒸し茶は一般的なお茶に比べて蒸し時間が長いので緑色が濃く、味が深いのが特徴。今は急須でお茶を入れる習慣も減ってきていますが、ぜひ急須で入れて、深蒸し茶ならではの味わいを楽しんでいただきたい」と言います。
皆さんもぜひ急須で丁寧にお茶を入れ、その贅沢時間と味わいにホッと一息ついてみてはいかがですか?
▽山英のお礼品はこちら