2021/03/30
ふるさと納税を活用し交流人口増加を目指す
京都府長岡京市 大河ドラマ放送を機にお礼品提供を開始
京都府南西部のちょうど京都と大阪の中間地点に位置し、かつて「長岡京」の都がおかれた京都府長岡京市。2021年2月に放送が終了した大河ドラマの主人公・明智光秀との縁も深い、歴史あるまちです。大河ドラマ放送をきっかけに期間限定で、ふるさと納税でお礼品提供を開始したところ、想定外の反響があったそうです。長岡京市のふるさと納税について、広報発信課の辰巳祐樹さんに伺いました。
総務省の基準見直しがお礼品提供の後押しに
「長岡京市は電車で京都駅へ約10分、大阪駅へ約30分と都市に近い立地や、豊かな自然、歴史的魅力に溢れるまちですが、まだまだそのことを知らない方が多いのが現状です。そこで、市の認知向上や交流人口増加、定住人口獲得のため、さまざまな事業に取り組んでいます。」
ふるさと納税や市のプロモーションを担当する辰巳さんは、長岡京市についてこう教えてくれました。
長岡京市広報発信課 辰巳祐樹さん
長岡京市は、交通の利便性に代表される「かしこい暮らし」と、のどかで懐かしい「くらしっくな暮らし」の2つの意味を込めた「かしこ暮らしっく長岡京」をブランドコンセプトに市内外へのプロモーションを強化しています。
2020年大河ドラマの主人公が明智光秀に決まったことで、長岡京市のふるさと納税方針にも変化がありました。
長岡京市は光秀の盟友・細川藤孝が治めた地です。光秀の娘・たま(のちの細川ガラシャ)は藤孝の息子・忠興に嫁ぎ、新婚時代を長岡京市の勝龍寺城で過ごしました。また、光秀が本能寺の変の後、山崎の戦いに敗れ、最期の夜を過ごしたのも勝龍寺城だったと伝わっています。長岡京市は大河ドラマ放送をプロモーションの機会と捉え、2019年10月から期間限定でお礼品の提供を開始しました。
ガラシャと忠興の輿入れ行列を再現した「長岡京ガラシャ祭」
「以前はふるさと納税の使い道に共感した人からの寄付をいただく共感型事業のみで、お礼品の提供はしていませんでした。お礼品を提供していなかったのは、寄付者の想いに応える事業を市が実施し、その様子を発信することに意義があると考えていたからです。また、以前の報道などで見られたいわゆる『自治体間のお礼品競争』への懸念もありました。しかし、2019年6月に総務省から『お礼の品は寄付額の3割以内』など、明確なお礼品基準が提示されたことが、長岡京市でもお礼品提供を行う後押しになりました。現在も共感型事業は継続しており、お礼品を提供するふるさと納税と両輪でふるさと納税制度を活用しています」
共感型事業の一つ「京都西山再生プロジェクト」
寄付金は植樹をはじめ、獣害対策や環境維持活動などに活用されている
長岡京市はお礼品の提供に合わせて市内の観光地や飲食・土産物店などを紹介した「おさんぽブック」を作成し、お礼品と同梱して寄付者に送っています。
「大河ドラマの盛り上がりやふるさと納税での出会いを一過性にしないことが大切だと思っています。寄付をきっかけに長岡京市のことを知ってもらい、交流人口や関係人口の拡大・創出を意識して作成したパンフレットです」
京都・長岡京おさんぽBOOK
お礼品提供継続の決め手は事業者の声
当初、お礼品提供は大河ドラマの放送が終了する2020年度末までの予定でしたが、想定以上の反響があったそうです。
「提供するお礼品の募集を開始すると、市内事業者から『待っていました』と喜ぶ声や、ありがたいことに『長岡京市のために何かしたい』という声もあり、反響の大きさに驚きました。ふるさと納税は事業者自身に参加費や送料などの負担がありません。小さな事業者でも自社の商品を全国へ送ることができるので、新たな販路を見出し、収益を増やすことにつながります。自治体は税収が増えることで市民に還元できますし、お礼品を届けることで寄付者にも喜んでもらえます。事業者からは『新しい商品開発もしたいし、多くの方に長岡京市の魅力的な特産品を知ってほしい』という声もありました。多くの事業者の声を受け、2021年4月以降も継続してお礼品提供を行うことを決めました」
京の伝統野菜「京たけのこ」は長岡京市の名産の一つ
ふるさと納税のお礼品でも人気
長岡京市が『さとふる』でお礼品提供を開始したのは2019年10月。2019年の長岡京市寄付額は前年度比約45倍の2億4千万円以上に。2020年度はさらに増える見込みだそうです。
『さとふる』はふるさと納税のパートナー
「『さとふる』の強みの一つは販促力・PR力だと思います。『さとふる』を通じていただく寄付が多く、それだけ寄付者に選ばれているサイトだと感じました。サイトのユーザー数が多いと閲覧数が増え、結果的に寄付件数も増える。お礼品ページを開くと関連したお礼品が紹介されるのもありがたいですし、そもそもサイトが見やすいのも良いですね。
また、『さとふる』の長岡京市担当の方の対応にも助けられています。疑問を投げるとすぐに答えてくれますし、今後の展開を一緒になって考え、アドバイスをもらえるなど、アフターフォローがしっかりしていると感じます」
新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いたら、事業者を対象にしたセミナーなども一緒に実施したいと話してくれました。
コロナ禍でも認知度を上げるため、オンラインを活用
大河ドラマ放送に合わせてプロモーション強化を図ってきた長岡京市ですが、新型コロナウイルスの影響で関連イベントの中止が相次ぎ、観光客の増加を見込んでいましたが、想定よりも大幅に落ち込んでしまったそうです。
そこで夏には方針転換し、数年前からデジタル戦略の一環でスタートしたオウンドメディア「SENSE NAGAOKAKYO」の情報を厚くしたり、動画を配信するなど、オンラインの施策に注力しました。
「毎年多くの観光客が訪れていた『長岡京ガラシャ祭』は新型コロナウイルスの影響で中止になりましたが、長岡京ガラシャ祭実行委員会と連携し、『オンラインで楽しむ長岡京ガラシャ祭2020』として複数の動画をYouTubeで配信しました。中でも、光秀の娘・たまの勝龍寺城への輿入れを再現した映像は、大河ドラマ最終回放送後の"紀行"で『勝竜寺城公園』が紹介されたこともあり、多くの方にご覧いただき、長岡京市を知っていただくことができました」
YouTube「長岡京ガラシャ祭チャンネル」より
動画の撮影地にもなった「勝竜寺城公園」は市民の憩いの場として長年親しまれてきた公園です。大河ドラマ放送を控えた2019年に、ふるさと納税の寄付金を活用し、老朽化した箇所の修繕などのリニューアル工事が行われました。再現された天守や門、石垣などからガラシャ・光秀ゆかりの歴史を感じるお城として府内外からの来訪者も増えています。
勝竜寺城公園
また、ふるさと納税では共感型事業の経験を活かし、「新型コロナ助け合いプロジェクト」を立ち上げ寄付を募ったところ、2021年2月末時点で約1,100万円もの寄付金が寄せられました。寄付金は売り上げが落ち込む事業者・生産者の支援などに活用されます。
参加事業者を増やし、共にふるさと納税を活用する
2021年4月以降もお礼品提供を決めた長岡京市。今後のふるさと納税の活用についても伺いました。
「地元の商工観光団体との連携を強化し、より多くの事業者に参加を呼びかけたいと考えています。また、コロナ禍で観光や宿泊関連の事業者の落ち込みが厳しい状況です。アフターコロナを見据えた宿泊や体験系のお礼品強化も進めていきます」
最後に、全国の寄付者の方へのメッセージをお願いしました。
「本当に多くのご寄付をいただきありがとうございます。ふるさと納税をきっかけに長岡京市を知っていただき、市のファンになっていただけると嬉しいです。今後もふるさと納税に限らず、多くの方に長岡京市のファンになっていただけるような機会を作り続けたいと思います」
「大河ドラマやふるさと納税によってできたつながりを一過性にしたくない」と力強く語っていた辰巳さん。ファンづくりを続ける長岡京市が、今後どのように発展していくのか、楽しみにしています。