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2020/04/22

福島県小野町で肥育30年、ふるさと納税が震災後の力に

先﨑牧場 家族経営で良質な牛肉を生産する肥育農家

福島県小野町は阿武隈山系中部に位置する自然豊かな地域。その小野町で30年以上牛の肥育を行う先﨑牧場は、約100頭の牛を家族で育て、良質な牛肉を生産しています。福島県の牛肉市場が東日本大震災以後に厳しい状況に置かれる中、小野町のふるさと納税お礼品事業者となったことが大きな励みとなりました。これまでの歩みや震災以降について先﨑さんご夫婦に聞きました。

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酪農から肥育へ。卸売と並行し、小売り販売を開始

「もともと酪農をやっていましたが、1988年から肥育に切り替えました。肥育の知識はゼロからのスタート。他の肥育農家に聞いたり、自分なりに工夫したりと、試行錯誤しながら今まで育ててきました」

と教えてくれたのは先﨑義雄さん。一緒に肥育に携わる妻の幸江さんも始めた当時を振り返ります。

「枝肉市場ではセリにかかる牛が肉の塊の状態でぶら下がって運ばれてきます。『うちの牛がこんな姿に...』と最初はショックを受けました。さらに『ピンポン』と何度も音が聞こえてきます。『私たちの牛に何か問題があるのか』とハラハラしましたが、それは購入希望を知らせる音。何度も鳴るのは値段が上がっているからでした」

初めて出荷した牛に予想外の高値が付いたことが自信となったそうです。貯まった資金に応じて3頭~5頭ずつ子牛を仕入れ、育てては売るを繰り返して先﨑牧場の肥育は成り立っています。

卸問屋の契約牧場として肥育・出荷を続けてきた先﨑牧場に最初の試練がやってきたのは2004年にBSE(牛海綿状脳症)が日本国内で報道されたことでした。

「『狂牛病』という名で広く報道され、漢字の印象や、海外の牛が倒れる映像がテレビで繰り返し流れたことから、牛肉価格が大暴落しました。BSEとは無関係の肉なのに。その時『こんなに値段が落ちるなら、自分たちで食べよう』と部分肉に加工された食肉を買い戻したことがきっかけで、小売り販売を始めました」(義雄さん)

以来、親戚や友人などを中心に評判が広がり、口コミで小売り販売を続けています。

東日本大震災後、ふるさと納税への参加で売上改善

BSEが落ち着いてきた矢先に東日本大震災が発生。先﨑さんの自宅や牛舎に大きな被害はなかったものの、直後に福島第一原子力発電所が爆発事故を起こしたことで状況は一変しました。

「この辺りは四方が山に囲まれているおかげで、放射線の数値に問題はありませんでした。しかし、いくら数字で安全が証明されても、『福島県産』は売れなくなり、震災発生以前に出荷した牛肉さえ返却されました」(幸江さん)

福島県産の牛肉価格は大暴落。100万円の売上を見込んでいた牛は30万円になったそう。売値30万円は2年間肥育で発生する飼料代にもなりません。さらに、福島県の他市町村で放射性物質検査に引っ掛かった牛が1頭出たことから、福島県全ての牛が出荷停止になりました。

「あの時のことは今でもよく覚えています。出荷するためには『全頭検査』を受ける必要がありますが、放射能検査を待つ牛が県内に数百頭いる中、1日に検査できる数は34頭まで。出荷に合わせて美味しさのピークとなるよう育てているので、出荷が数日遅れると牛が栄養過多で病気になる可能性があります。その調整がとても大変でした」(義雄さん)

その後、少しずつ補償が支払われるなどしてきましたが、震災前の状況までは回復しません。そんな中、ふるさと納税に参加したことで売上が改善されたそうです。

「震災後、思うように出荷できない中で全国に私たちが生産した牛肉を送ることができ、とても励みになりましたし、売上的にも助かりました。特に年末にかけては前年よりも売上がアップしたんです。小さな牧場なので "大容量"や"高級ブランド肉"といったお礼品は作れませんが、寄付者の方が扱いやすい分量、気軽に食べられる美味しいお肉を提供するよう心がけています」(幸江さん)

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先﨑牧場のお礼品「【小町の里・幸牛】黒毛和牛ブロック肉 550g」
さらりとした脂の甘さ、旨みに定評がある

パソコン作業やインターネットに不慣れだという先﨑さんご夫婦。家族や『さとふる』の力を借りて、ふるさと納税に参加しているそうです。

「『さとふる』の方にはいつもご迷惑をかけています。分からなくなると、『先﨑さん、始めからやってみましょう!』と、まるで娘に教えてもらっているみたい。愛を感じました」(幸江さん)

畜産に関わる他の事業者と力を合わせて商品開発

幸江さんは地元で牛の肥育や酪農などの畜産業に関わる女性たちで構成された「マザーズクラブ」に所属しています。マザーズクラブでは、東日本大震災以後、農林水産省へ畜産農家への支援を依頼したり、女性ならではの視点で「黒毛和牛の水煮肉」や「ハヤシライス」などのレトルトパックを開発しました。

「マザーズクラブの皆さんには一緒に活動することで精神面でも営業面でも助けられました。クラブや地域のためになればと、開発した商品をふるさと納税のお礼品にしています。福島のPRや販売活動にクラブで参加した際、通りかかった人に『ふるさと納税のお礼品になっているんですよ』と伝えると、足を止めてくださる方が多いですね」

ふるさと納税のお礼品になることが商品の信用につながり、ブランドのように消費者が捉えていると感じたそうです。

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子育て中の方の意見を参考に開発した「黒毛和牛の水煮肉」
10時間煮込まれた牛肉はふわとろ。アレンジの幅が広いと好評

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柔らかく煮込まれた幸牛がゴロっと入っている「ハヤシライス」
お礼品提供に向けて準備を進めている

寄付を通じてお礼品注文が入ると、ひとつひとつ心を込めて箱に詰めて発送している先﨑さんご夫婦。先﨑牧場の牛肉は、家族のアイデアで幸江さんの名前から「幸牛」と名付け、販売しています。家族の絆と深い愛情で育てられた「幸牛」が、これからも全国で愛され続けることを期待しています。