2018/12/17
ふるさと納税で"地域"から "全国"へ
サンガコーヒー 美しい田園地帯のコーヒー豆販売店
長野県の名峰・浅間山を臨み、レタスなどの高原野菜の栽培で知られる長野県・御代田町。日本を代表するリゾート地のひとつ軽井沢町の西側に隣接し、近年は別荘エリアの拡大に伴い、御代田町にも多くの別荘族が訪れます。そんな御代田町の美しい田園地帯に「サンガコーヒー」という話題のコーヒー豆の販売店があります。
コーヒーは「コーヒーは好きだけどたくさんは飲めない」「飲むと胸焼けがする」という声をよく耳にしますが、「サンガコーヒー」は「何杯でも飲める」「今まで飲めなかったコーヒーが飲めるようになった」と評判です。
開放感あふれる同店で尾台有加さんに話をお聞きました。
サンガコーヒー 尾台 有加さん
広告業に従事しながらコーヒー豆の販売事業に進出
「私は長野県軽井沢町、主人(羊一さん)は御代田町の出身なのですが、星野温泉(現在の星野リゾート)で一緒にフロント業務に就いたことが縁で知り合い結婚しました」(有加さん)
その後羊一さんは広告会社勤務を経て独立し、故郷である御代田町に広告会社を設立。
「軽井沢にはコーヒー店がいくつもあり、主人は彼らの広告の仕事でご一緒する機会が多くありました。お酒が飲めない主人は、コーヒーばかり飲んでいるうちに、やがて何杯でも飲めるコーヒーとすぐに胸焼けするコーヒーがあることに気が付いたのです」(有加さん)
コーヒーのことを深く知らないと広告ができないと感じた羊一さんは、それを機にコーヒーの勉強を本格的に始め、ついには焙煎機を購入します。
「広告会社には10人ほどの社員がいましたが、いずれ高年齢になれば広告のような感性が問われるような仕事は難しくなります。そこで、彼らの"将来"の受け皿という意味も含めて、今から15年前に、主人は会社の敷地内にコーヒー販売店を開くことにしたんです」(有加さん)
店舗では5種類のコーヒー豆を用意。
オリジナルブレンドも用意しているが、時にはお客様の好みに合わせてブレンドを用意することも
"店内試飲自由"でオンリーワンの味を創出
現在の今のお店の繁栄には、娘夫婦、とくに娘婿の北田智志さんの存在が大きく影響しているそうです。
「彼は、東京農業大学・生産産業学部・生物生産学科(北海道・網走市)で小豆の研究に従事していた人です。豆に詳しい...ということでしょうか、私たちが見てわからないレベルのコーヒーのクズ豆を、手の感触で検知して弾けるんです。そのおかげもあって、良質なコーヒー豆だけをご提供できています」(有加さん)
娘婿の北田 智志さん まっすぐな人柄でお客様の信頼も厚い
サンガコーヒーでは、"何杯でも飲める"コーヒーの提供を基本にしており、その実現のためには、クズ豆の除去とともに、豆の鮮度確保を大切にしています。少しでも古くなると脂分が出てしまい、それが胸焼けや胃腸の不調の原因になるからです。
「店頭には5種類の豆しか置いていませんし、それぞれ少量ずつしか焼いていません。ありがたいことに、夕方になると売り切れてしまうこともよくあるんです」(有加さん)
お客様にはご不便をおかけすることもありますが、今まで飲めずにいたお客様から「サンガコーヒーと出会ってコーヒーが飲めるようになった」と言われることが有加さんたちにとって何よりの喜びだと教えてくれました。
そんなサンガコーヒーならではの特徴のひとつに「何杯でも自由に飲める試飲コーナー」があります。
「気に入った豆が見つかるまで、あるいは、そのお客様だけのオンリーワンのオリジナルブレンドができるまで何杯でもご試飲いただけます」(有加さん)
地元の人々や別荘族など、地域にかかわる多くの人々に愛されてきたサンガコーヒーは、ホームページもつくらずネット通販も行わず"地域密着"を続けていました。早朝・深夜など営業時間外であってもお客様からのご要望があればコーヒーを提供してきました。
そんな中、2016年7月に転機が訪れ、御代田町のふるさと納税のお礼品に選ばれます。
「さとふる」のコーヒー部門でベスト5にランクイン
「これまでは、お客様の顔を見て、コミュニケーションをとりながら販売をしてきたので、相手の表情が見えない『さとふる』での取り扱いは、ネガティブな気持ちもありました。役所関係なので書類とか面倒そうだという思いもありましたし...」(有加さん)
それでも取り組む以上は、お客様のことを第一に考えたいと思ったそう。同店のことを知らないお客様に、いろいろな種類の豆を少しずつ楽しんでもらえるよう6種類のセットにし、1日にわずか5セット限定で取り扱いを開始しました。
「『さとふる』での寄付者の反応は、"期待していなかったけど意外と美味い"といった感じでしたね。」(有加さん)
地域密着での販売を続けていたため、全国的には無名でしたが、こうした意外性も功を奏したのか、評価は上がり続け、「さとふる」のお礼品に選ばれている全国200以上のコーヒーの中でベスト5にランクインしています※。
ふるさと納税サイト「さとふる」で人気の「サンガコーヒー〈豆〉120g×6種」
「さとふるさんがしっかりサポートしてくださったので、手続き上の不便さは感じずに済みました。期待以上に申し込みが殺到していたので、2017年のお正月は家族総出で連日働きづめでした。
はじめこそ不安はありましたが、コメントで寄付者の反応を知ることもできるし、ちゃんと申し込みも入る。中には定期的に申し込んでくれる方や、直接電話で注文したいと連絡をくれる方もいます。顔が見えない相手にコーヒーを届けることも『ま、いいんじゃない』と思えました。やっぱり全国の人に知ってもらえることはうれしいです」(有加さん)
※2018年10月29日時点
キッチンカー導入で新局面へ
「ふるさと納税のお礼品に選ばれてからは、月々5~50万円くらいの売上増になりました。ふるさと納税という制度が今後どうなっていくかはわらないので、お礼品への過度の依存は避け、売上比率は多くても3分の1くらいが望ましいと考えています。」(有加さん)
サンガコーヒーでは未来を見据え、ふるさと納税での収益を活かして、カフェ事業に挑戦しています。御代田町にある店舗は飲食店としての運営ができない為、キッチンカーの導入を決めました。人口が増えているとはいえ、御代田は人口15,600人とマーケットとしては決して大きくありません。お祭りなど各種イベントで人が大勢集まる場所に自ら出ていくことにしました。
また、高齢化が進めば今までのようにお店まで買いに来ることができないお客様も出てきます。そういう方々にも、コーヒーを楽しむ心豊かな時間を提供し続けたいと考えているそう。
「キッチンカーにはコーヒーはもちろん、野菜なども載せて売りたいですね。特に別荘地ではニーズが高いと思うので...」と有加さんの夢は広がります。
ふるさと納税のお礼品に選ばれ人気を博したことで新たな展望が開けました。
2018年11月17日に長野県小諸市で開催された「Bio マルシェ」での様子
最後に有加さんはこんなメッセージをくれました。
「もう、キッチンカーは走っています。神出鬼没ですが(笑)、もし見つけたら是非お声をかけてくださいね」
これからの未来を見据えて、「自分たちの環境でできること」を大切にするサンガコーヒーの今後に注目です。