2018/09/06
「地元の味」が全国に!個人商店から発信する諫早の魅力
七輪焼き 海坊主 ゼロからスタートした『姫あわび煮』
七輪焼き 海坊主 店主 直塚浩二さん
諫早湾・大村湾・橘湾に三方を囲まれた長崎県諫早市。地元のお客さんに愛される居酒屋「七輪焼き 海坊主」の店主・直塚さんは、長崎であわびの養殖を行う生産者の方からの相談をきっかけに、あわび加工品の商品化に挑みました。
今では「さとふる」でも人気の逸品となった『姫あわび煮・極』。今回は、商品化に至るまでの経緯と地元への想い、ふるさと納税によって直塚さんに起きた変化についてお話をお聞きしました。
きっかけは地元生産者が抱えていた課題
ゼロからスタートした商品開発
長崎県では300種類以上の魚が採れるのをご存知でしょうか?その魚種の豊富さでは全国1位、漁獲量は全国2位と海の幸に恵まれた町です。
高級食材として知られる「あわび」の産地としても有名で、「七輪焼き 海坊主」の店主・直塚さんが作った『姫あわび煮・極』は、九州産の新鮮なあわびを殻付きで丸ごと使用した贅沢な逸品。
今年で20年目を迎えるお店を営む直塚さんが、あわびの加工品作りに挑戦したきっかけをお聞きしました。
「長崎県内であわびを養殖する生産者の方からの相談がきっかけでした。あわびは少しでも卸のタイミングを逃すと身が大きくなりすぎて、より価格が高騰します。仕入れる方にも都合が悪いので売れなくなってしまうんです。
そういった経緯から、適切なサイズと価格で出荷できるように、あわびを使った加工品を開発してほしいと頼まれました。」(直塚さん)
飲食店を営む直塚さんにとって、店舗営業との両立は容易なことではありません。生産者の方からの説得と地元・長崎への想いから一念発起したものの、商品開発は初めての試みでした。
諫早の水産加工品を広めたい!
こだわりぬいた「地元の味」を届けるために
「飲食店との両立に不安があって最初はお断りしたんです。でも、あわびを養殖する生産者の方からの説得に根負けしてしまって(笑)。
実際に話を聞いていると、長崎ならではの水産加工品がないんです。かまぼこのような工場で加工する商品はあっても、個人商店が出すような地元の味付けをしたものや工夫が凝らされた商品がない。もし加工品を開発できれば、地元長崎の水産物の魅力をもっと広く知ってもらえるかもしれないーーそれに、生産者の方々も喜んでくれるはず。
そんな想いが込み上げてきて、どうやったら身が縮まないか、あわび独特の食感をいかに残すかなど、試行錯誤を重ねて完成させることができました。
あわび煮の開発を始めてから、初めて知ったことがたくさんあり、養殖や水産加工品製造者の方々の苦労などが少し分かった気がします。」(直塚さん)
飲食店の営業の傍ら、あわびの仕入れから仕込み、梱包まで全てひとりで行っていると話す直塚さん。忙しい中ゼロからようやく作り上げた自慢の逸品ですが、今度は販路の壁にぶつかってしまいます。
販売ルートのない直塚さん達は「どうにかしてこの味を知ってもらいたい」という一心で、『長崎県特産品新作展(※)』に出品、見事優秀賞を受賞したのです。(※ふるさと産業の振興を図ることを目的に、長崎県内で製造された特産品が一堂に会する品評会)
「特産品新作展に出展したことをきっかけに、諫早観光物産コンベンション協会とご縁があり、まずはお中元で取り扱っていただきました。その1年後に『ふるさと納税で姫あわび煮を出したらどうか?』と声をかけていただいたんです。
最初はふるさと納税と言われてもピンと来なくて......。でも、次第に売れ行きが好調になり、手間ひまかけて真心を込めて作った商品をひとつひとつ送り出している感覚がありました。それがお客様の元に届けられていると思うと、大変な作業も頑張ろう!と思えましたね。」(直塚さん)
居酒屋の営業後一人で作業を行い、保健所の申請など苦労重ねて完成した
地域の魅力に隠された可能性とは?
地元を知る個人商店だからこそできること
ふるさと納税への出品以降、長崎のプロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」の抽選会の商品にも採用されたり、地元の水産物を活かした新たな商品の開発に取り組むなど、今後の展開について楽しそうに話してくれました。
とにかく「地元」にこだわることが大事と話す直塚さん。商品開発への並々ならぬこだわりの背景には、飲食店ならではの課題と地元にかける想いがありました。
「何度も試作を重ねた味付けを『甘いね〜』と思う方も、『薄いね!濃いね!』と思う方もいます。万人受けはしないかもしれないけど、個人商店だからこそ知る地元・長崎の味をお届けしたいーーそうやって楽しんでいただけるのがふるさと納税なのかなって思います。
また、こういった取り組みを個人でもできると知ってもらうことで、飲食店をやっている方にもチャンスがあるということを伝えたいですね。私自身も地元の産業について知らないことがあったように、意外な魅力に気付けていない方も多いはず。商品を作ることって本当に大変なのですが、そういう人がもっと増えたらなって。
この時代だからこそ、地元の飲食店が全国に向けてできることがあるんじゃないかなと思います。そういった挑戦を続けていくことで、諫早市を広く知ってもらえると嬉しいです。」(直塚さん)
地域の魅力を再発見し、全国にお届けするーーその活動の連鎖によって、地域の所得は増え、業界を活性化させることに繋がっていきます。
ふるさと納税をきっかけに、長崎・諫早からこの取り組みが色々な地域に広がっていくことで、地方の飲食店に新しい風が吹くことを楽しみにしています。