2018/07/05
日本最北の味を全国に届ける
そうべい 北海道・稚内の食品を全国に販売
海の幸や山の幸に恵まれ、「食材の宝庫」ともいえる日本最北の北海道稚内市では近年、急速に人口減少が進んでいます。稚内で唯一の食品総合卸売商社、そうべいは地元の食材の販売を通じ、全国に稚内の魅力を伝えることに取り組んでいます。
稚内の食品供給を担う総合卸売商社
日本最北に位置する北海道稚内市はオホーツク海と日本海に面し、その漁場は豊かな海産物で知られています。農業や畜産業も盛んで、「食材の宝庫」ともいえる地域です。この稚内で唯一の食品総合卸売商社「そうべい」は、地元産の食材や酒、飲料全般の供給に携わっています。
「稚内や宗谷管内には水産や酪農をはじめ、多くのメーカーがありますが、販売チャネルを持つところはあまりありません。そこで、そうべいは、それらのメーカーの食材を主にB to Bで販売しています」
そうべいのふるさと納税担当者は、地元の食材流通に欠かせない、そうべいの業務について、こう説明します。主な販売先は、市内の商店やスーパー、飲食店で、学校給食の食材も納入しています。
また、全国各地の百貨店に向けた卸売りもしているほか、ECサイトやカタログ通販で個人向けの販売も展開し、食を通じて稚内をPRしています。2016年からは、地元の食品をふるさと納税のお礼品として提供する業務も開始しました。
「これまでのところ、売上高ベースではB to Bの比率が圧倒的に高くなっていますが、今後は道外向けのB to Cの比率も高めようとしています。稚内や宗谷管内では、人口が急速に減少しており、市場の縮小は目に見えているからです」
稚内や宗谷管内は北海道の最北端に位置するほか、冬場は積雪が多く、飛行機の欠航率が高くなります。さらに、札幌や旭川へ向かう道路も通行止めになり、「陸の孤島」となることもあります。このような中で若者の多くは、仕事や利便性を求めて転出し、人口は減少し続けています。
レビューを参考に商品を改善
道外向けのB to Cの販売を拡大していくためには、全国の消費者がどのような商品を求めているのかを知ることが重要です。その際、特に参考になっているのが、ふるさと納税サイト『さとふる』に書かれるレビューです。
「『さとふる』のレビューでは、通常のショッピング・モールのレビューよりも本音が書かれていると感じます。厳しい意見がストレートに書かれるケースもあり、これが商品の改良や質向上へのヒントになります」
例えば、ズワイガニの一番後ろの足は細くて身がほとんど入っていないことから、生産者や売り手の間では「欠けても価値は下がらない」と認識されてきました。しかし、寄付者のレビューでは、「届いたズワイガニの足が1本足りなかった」と書かれたことがあります。
「このレビューによって、寄付者には、足が1本欠けているのは見栄えが悪く、価値が低いと捉えられると気づきました。その後は足が欠けたズワイガニは発送しないよう、作業工程を見直し、検品をしっかり行うルールを策定しました」
また、レビューや全国の百貨店から寄せられるフィードバックに基づき、商品の分量や大きさを変更することもあります。北海道では車が主な交通手段で、家族の人数も比較的多いことから、米は5kgや10kg単位で販売するのが普通です。しかし、首都圏では1人暮らしや夫婦だけの家庭が多く、また車で買い物に行かない人も多いことから、少量のものも求められているとわかりました。
「レビューやフィードバックは重要で、メーカーが商品力を向上させ、磨きをかけることにつながります。売り方に関しても、参考になるものが多くあります」
地元のメーカーからは今年の春、小さなサイズのホタテが大量に出されました。通常ならホタテのサイズは大きい方が良いと考えられますが、解凍するだけで食べられる、便利な「一口サイズ」として、ふるさと納税のお礼品にしました。これはレビューによって、小さく便利なもののニーズもあるとわかったためです。
このほか、寄付者のレビューに書かれていた食べた時の感想が、消費者目線でわかりやすい文章だったことから、その文章をECサイトの商品説明に取り入れたこともあります。ECサイトと『さとふる』を併用することで、両者を互いに改善していくことが可能になっています。
そうべいのお礼品「ホタテ貝柱ひと口玉冷」
寄付者に伝えたい稚内の魅力
ふるさと納税のお礼品は、全国の人たちに稚内の魅力を伝える機会を生み出します。そうべいでは、従来からお礼品に同封していた挨拶状に加え、今年5月からは稚内の観光や「稚内ブランド」の商品に関するパンフレットを同封することにしました。寄付者に稚内について、より多く知ってもらい、その魅力を伝えていくためです。今後は、ふるさと納税のお礼品でしか手に入らないような商品開発もしていきたいと考えています。
「本州から稚内へ来られたお客様は、その風景や食べ物に感動してくださいます。私たちにとっては日常的なことですが、その良さをより多くの方々に伝えていければと思います」
観光客の中には、北海道の吹雪や除雪作業を体験したいという人もいます。地元の人々にとっては当たり前のことや辛いことでも、他の地域の人々に感動を与えることがあります。そうべいでは、食やまちのPRを通じ、人口減少が続く稚内を盛り上げていこうとしています。