2025/10/24
ふるさと納税と地元の支援が後押しするリキュール開発
北海道北斗市 酒舗 稲村屋 地域資源を磨き、全国へ届ける
北海道南部に位置する北斗市は、2006年に上磯町と大野町が合併して誕生しました。2016年には北海道新幹線「新函館北斗駅」が開業し、北海道の新たな玄関口として広く認知されています。豊かな自然と海の幸に恵まれ、農産物や水産物も多彩な地域です。
そんな北斗市では、ふるさと納税を通じて地域の魅力を全国に発信しています。今回話をうかがったのは、水産商工労働課の菅原さんと企画課の能登川さん、そして地域資源を生かした酒づくりに挑む「酒舗 稲村屋」の稲村さんです。
南北海道ブランド浸透を目指して
新函館北斗駅前に店を構える「酒舗 稲村屋」。店舗を運営する有限会社 イ印 稲村商店(福島町)3代目代表の稲村さんは、地域の味を届けるだけでなく、「南北海道ブランド」として広めたいという思いを胸に活動しています。

酒舗 稲村屋の稲村さん
ワイン試飲機では200円~、フリースペースでは道産酒3種飲み比べセットを1,100円で楽しめる
その特長は「生産者と直接つながり、ストーリーを顧客に伝える」販売スタイル。約150軒ある北海道チーズ工房のうち20~30軒を扱い、試飲や試食を通じて商品の背景や魅力を伝えています。
「スーパーマーケットとの違いは、説明力と生産者との距離感です」と稲村さん。秋の収穫シーズンにはワイナリーの葡萄摘みに参加するなど、生産者に近い立場から語れるのも稲村屋ならではです。
こうした活動の背景には、道南地域全体の変化があります。北海道ではワイン産業が大きく伸び、この10年でワイナリーの数は20場から71場へと大幅に増加しました。
一方で、日本酒の世界でも新しい動きが見られます。道南では3年前に新たに2つの酒蔵が新設され、地元産の米を使った酒づくりの動きが広がっています。その背景には、農作物の優位性があります。全国的に米づくりで高温障害が問題になるなか、道南は比較的涼しく、米がしっかり休めるため品質を保ちやすいのです。
さらに温暖化の影響で、以前は難しいとされていたブドウ品種ピノ・ノワールの栽培も可能になりました。世界の生産者が挑戦したいと憧れる品種が北海道で育つようになり、ワインも日本酒も、南北海道の気候と土壌の恩恵を受けて進化しています。
稲村さんは「こうした地域の強みを生かし、南北海道全体の魅力を伝えていきたい」と語ります。
マルメロとの出会いから始まったリキュール開発

新函館北斗駅西側公園に並ぶマルメロの木

地元では"香りを楽しむ果実"として親しまれている
稲村屋が新たに挑んだのが、地域の果実を生かしたリキュールづくりです。旧大野町の通りにはマルメロの木が並び、その通りが「マルメロ―ド」と呼ばれるほど、地元の人にとって身近な存在でした。しかし、マルメロはカリン系の華やかな香りがある一方で、食用には向かず、お店に飾ったりお風呂に浮かべたりする程度でした。
「香りは素晴らしいのに食べられない。それなら新しい形で活かせないか」。そうした思いから商品化への構想が生まれました。試作を重ね、完成したのが「マルメロリキュール」です。さらに大野農業高校で収穫された「千両なし」や「日面紅」といった梨を使ったリキュール開発にも広がりました。
「20歳になった時に、自分たちが育てた果実で作られたお酒を口にしてもらえたらうれしいですね。地域と次世代をつなぐお礼品にしたいという思いがあります」と稲村さんは語ります。

大野農業高校の生徒たちによる作業の様子

北斗市のふるさと納税お礼品や、酒舗 稲村屋で購入できる
補助金が商品化を後押し
しかし商品化の過程では、ラベルデザインに想定以上の費用がかかりました。ここで活用されたのが、北斗市が2023年度に創設した「北斗市中小企業競争力向上事業補助金 ふるさと納税返礼品開発事業※」です。
※「北斗市中小企業競争力向上事業補助金 ふるさと納税返礼品開発事業 」とは
顧客開拓のため、新たなふるさと納税返礼品を開発する市内中小企業者に対して、経費の一部を補助するもの。
この事業が創設されてから2024年度末までに5件の申請がありました。また、この補助金ではお礼品開発のほか、展示会出展など幅広い取り組みを支えています。
「全額補助ではありませんが、その分"必ず商品化する"という決意につながりました。市の紹介やサポートは大きな後押しになりました」と稲村さん。

補助金はラベルデザイン作成に活用された
稲村さんの挑戦はこれからも続きます。
「マルメロビールやトマト、ブルーベリーを使ったリキュールなど、まだまだ可能性は広がっています。最終的には、北斗市や南北海道全体を楽しんでもらえる"入口"のような場所にしていきたいです」と語ります。
地域の農業や気候の強みを背景に、新たな酒文化を育む稲村屋の歩みは、ふるさと納税を通じて全国に届けられています。
伝統のバターから新米、高校生生産の果実まで 北斗市ならではのお礼品
北斗市のふるさと納税では、稲村屋のお酒以外にも多彩なお礼品が寄付者を魅了しています。
「トラピストバターは、日本最古の男子トラピスト修道院で作られています。生きた乳酸菌による発酵バターで、伝統製法で作られています。原料はクリームと食塩のみで、保存料や着色料は不使用。塩分控えめでまろやかな味わいが人気です」と能登川さん。
また、北斗市で研究・開発されたブランド米「ふっくりんこ」は、ふっくら艶やかで冷めても美味しいお米として知られ、大手航空会社ファーストクラスの機内食にも採用されています。新米の時期には寄付件数が大きく伸び、季節感を楽しめるお礼品です。
市内の大野農業高校で生徒が育てた果実を活用したワイン「北斗の大地から」のお礼品も登場。教育機関と地域が連携することで、次世代に特産品や地元文化を伝える取り組みにもつながっています。

北斗市を代表する人気のお礼品「トラピストバター」と「ふっくりんこ」など北斗市産のお米
さとふるとの協働で共に広がる可能性
事業者や自治体にとって、ふるさと納税の仕組みを活用するには運営面のハードルも少なくありません。そこで地域を後押ししているのが「さとふる」です。
北斗市では2024年度から新規事業者のお礼品開拓を強化し、企画課と水産商工労働課、さとふるが連携して地域事業者への訪問を進めています。
「市としてふるさと納税の概要やメリットを説明しても、実際の運用面は中間事業者の支援が欠かせません。さとふると一緒に訪問できることで登録につながった事業者も多いです」と菅原さん。
パソコン操作が苦手な事業者も多い中で、さとふるの代行入力の仕組みや現場でのサポートによりお礼品の登録が進み、事業者からも「おかげでお礼品が増えた」と喜ぶ声が寄せられています。
さらに、北斗市は食料品製造業の工場が多く、本社が東京にある企業の支店として立地しているケースもあります。「さとふるの担当者が東京本社を訪問してくれるなど、行動力にも助けられています」と菅原さん。
稲村さんも「市やさとふるの支援があったからこそ、慣れないラベルデザイン作成などに集中することができました。直接訪問し仕組みや登録方法を教えてくれたことで安心感もありました」と振り返ります。
未来を見据えた体験型お礼品の開発
北斗市は今後、観光協会や公共交通と連携した「体験型のお礼品」に力を入れていく予定です。具体的には、地元の鉄道「いさりび鉄道」と連携したプランや、地域に足を運んでもらえる仕組みづくりが検討されています。
最後に寄付者の皆さんへのメッセージをいただきました。
能登川さん 「北斗市のお礼品はこだわりを持ち丁寧に作られたものが多いです。ご自宅で楽しんでいただき、気に入っていただけたらぜひできたてを食べに北斗市にも遊びに来てください」
菅原さん「私は進学を機に道南に来て北斗市で働くようになりました。寄付を通じて北斗市の美味しいものを楽しんでいただき応援していただければと思います」
地域の魅力を知ってもらい、地域の未来につなげるふるさと納税。北斗市の取り組みは、寄付を通じて地域と人をつなぐ温かい物語を紡いでいます。
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