2023/12/27
2023年9月の寄付額が前年比4.5倍以上に
【アンケートデータから見る2023年のふるさと納税:前編】
2023年は10月1日に制度本来の趣旨に沿った運用の適正化を目的にふるさと納税制度が改正されました。また、制度改正のほかにも一部の国による日本の水産物輸入停止の動きや、昨年から継続した物価高騰などもあった1年となりました。
この記事では、2023年のふるさと納税動向について、アンケート調査の結果を交えてご紹介します。
<調査概要>
実施期間:2023年10月4日~2023年10月16日
手法:インターネット調査
実施機関:株式会社さとふる
対象:ふるさと納税サイト「さとふる」で取り扱う328自治体、1134事業者
制度改正を受けて「9月までの寄付が増えた」自治体・事業者は9割以上
まず1つ目は総務省のふるさと納税制度改正を受けての影響です。
制度改正では、主に「募集適正基準」と「地場産品基準」の2点が改正される内容となっていました。
ふるさと納税は、その年の寄付受け付けが締め切りとなる12月31日に向けて、例年 10 月~12 月に寄付が集中する傾向にあります。しかし、今年は制度改正の影響を受け、12 月末並みの寄付が 9 月末に集まり、「さとふる」を通じた 9 月の寄付金額は前年の 4.5 倍以上に増加しました。9月にあらかた寄付を終えた方も、12月に源泉徴収票が届いてから限度額まで再度寄付をされると推定できることから2023年は第二次駆け込みふるさと納税が12 月に発生すると予測しています。
今年10月に行った自治体・事業者アンケートの結果でも制度改正を受けて、「9月までの寄付が伸びた」という回答が自治体では99%以上、事業者では約95%という結果になりました。
Q. (2023年10月の制度変更により「寄付動向に変化があった」と回答した方へ)それはどのような変化ですか。(複数回答可)
なお、制度改正に伴い自治体・事業者がどのような対応を行ったか。という点ですが、自治体の約73%が制度改正に伴う対応を行ったと回答した一方で、事業者で対応を行ったとの回答は25.2%にとどまりました。
対応の内容について自治体の回答では「寄付金額の値上げ」が最も多くなった一方で、「さとふる」で10月1日に向けて寄付金額の値上げを実施する自治体は3割程度でした。
Q. 2023年10月の制度改正を受けて何か対応を取りましたか。
Q. (「はい」と答えた方へ)それはどのような対応ですか。(複数回答可)
自治体と寄付者双方のニーズが合致した「体験型お礼品」
制度改正に伴い、「お礼品の追加」「体験型お礼品の開発」を行ったという自治体回答もありました。制度改正に伴い、体験型お礼品を開発した鹿児島県知名町(ちなちょう)の事例をご紹介します。
知名町では、離島ため、通常の「ものを発送する」お礼品では送料の負荷が高いことが課題となり、制度改正で一部お礼品の寄付額をやむなく引き上げることになりました。
一方で体験型お礼品であれば、送料のコストを削減でき、経費率を抑えられるという点に着目し、新たにグランピングなどの体験型お礼品の開発を進めているという事例となります。
この事例のように、体験型お礼品は制度改正によって、再び、注目が集まっています。
自治体アンケートでも約76%の自治体が「体験型お礼品を増やしていきたい」と回答しました。増やしたい理由として、2番目に多かった回答が「経費負担が少ないから」でした。
Q. PayPay商品券のような電子商品券や旅行券・チケットなど、地域での体験を伴うお礼品を今後増やしていきたいと思いますか。
Q. (「はい」と回答した方へ)PayPay商品券のような電子商品券や旅行券・チケットなど、地域での体験を伴うお礼品を増やしていきたい理由を教えてください。(複数回答可)
実際に、制度改正直前の今年9月の「旅行券・チケット」カテゴリのお礼品登録件数は前年同期比13倍以上に増加し、多くの自治体が体験型のお礼品を新たに追加しています。
また、夏休み・行楽シーズンにあたる7月から9月の「旅行券・チケット」カテゴリの寄付件数は前年対比約3.5倍に増加、お礼品の種類と寄付者ニーズともに向上しているお礼品であると考えています。
自治体にとって、体験型お礼品を扱うメリットは、配送料などの経費負担が少ないだけではなく、地域に訪れることで宿泊や飲食による地域経済活性化はもちろん、ファンづくりといった付随効果も期待できます。
前編では制度改正を受けてのふるさと納税周辺環境の変化についてご紹介しました。
後編では制度改正以外の2023年の傾向についてご紹介します。