さとふるTOPページへ

フレ!フレ!みんなのふるさと納税!
さとふるがお届けする地域情報サイト

ITを活用し、農業を魅力的な仕事に

無農薬で安心安全な野菜を生産 株式会社NOUMANN

日本海に面した福井県美浜町にある植物工場で、無農薬野菜を生産する株式会社NOUMANN(ノーマン)。起業を支援した美浜町の特産品開発や地域雇用創出などを積極的に行っています。

「農業のイメージを変えたい。お客様を裏切らない商品を美浜町から送り出したい」と語る代表の宮下清優さんに話を聞きました。

01_DSC4045_r.jpg

IT業界から農業への参入

宮下さんは学生時代からIT畑を歩み、農業は未経験からのスタートだったそうです。

「起業のきっかけは数年前にオランダのトマト生産についてテレビで見たことでした。ICTを活用し、九州ほどの国土で世界トップクラスの生産量だと知り驚きました。一方で日本の農業は若者のなり手不足と農業生産者の高齢化が課題です。自分のIT技術を活用しオランダのような独自の生産スタイルを確立することで、日本の農業の課題解決につなげられないかと考えました」

社名の「NOUMANN」は、"農業をする人"という意味のほか、世界の食料不足改善に尽力したノーベル平和賞受賞者の "Norman Borlaug"や、現在のコンピューターの基礎を築いた"John von Neumann"から名付けられたそう。さらに、これまでの農業とは違う(NO)目線で農業を再構築する集団でありたいという思いも込められています。

農業生産者が健康で幸せに働ける「新しい農業」を目指す

そんな宮下さんが福井県美浜町で起業したのはなぜだったのでしょうか。

「私自身は美浜町には縁もゆかりもありません。植物工場は外部環境の影響を受けずに野菜を作ることができるため、生産ノウハウを確立できれば場所を選びません。しかし、通常の農業と比べ莫大な初期投資が必要になる。新規参入者である私でも受け入れ、企業支援に注力されている美浜町に魅力を感じました」

02_DSC4973_r.jpg
株式会社NOUMANN 代表 宮下清優さん

宮下さんは地元雇用を積極的に進め、社員教育に力を入れています。従業員は美浜町在住者を中心に約25名。コロナ禍で2021年の採用を見送る企業がある中、2021年度に向けた採用も進めています。また、働き方改革を積極的に推進し、2019年には健康経営優良法人※1の認定を受けました。

「農業は肉体労働中心のブルーカラーのイメージを持つ方が多いと思いますが、私が目指しているのはホワイトカラー並みの就労環境です。まだまだ課題はありますが、農業の負の固定概念を翻していければと思います。

健康診断やインフルエンザ予防接種、育休、孫が生まれる際のサポートのための休暇制度『孫休』も導入しました。また、子育て世代が働きやすいよう、就業時間を調整できるようにしたり、昇給も定期的に行っています」

03_DSC4026_r.jpg

一般的な農業では農繁期に人員増強が必要になったり、気候変動の影響を受けたりしますが、屋内栽培のNOUMANNではそれがありません。マニュアル化し平準化したことでシフトを組みやすくなり、それが安定した職場環境の醸成につながっています。

「我々は人様の身体に入るものを作っています。生産する我々が不健康だったらお客様は買いたくないのではないでしょうか。農業生産者が健康で幸せに働ける『新しい農業』を目指し、農業を若者が『働きたい』と思える職業にしたいのです」

※1 地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度

作りやすいレタスではなく、美味しいレタスを

宮下さんは、農業を始めるには2つの課題があったといいます。

「1つ目は美味しく育つかどうか。そして、もう一つはコストバランスの優れた商品を作れるかです」

特にコストバランスの優れた商品開発においては、並々ならぬ苦労があったようです。

「工場生産は安定供給のメリットがある反面、露地栽培と比べて生産コストがかかります。味に自信があっても、価格が高いと売れません。一方で価格が低いと品質と雇用を維持できない。適正価格を見極めるのが大変でした。

また、流通しているレタスの多くは重さで取引されていることから、農薬や虫に強く、生育速度が速く、重量が重くなる品種が多く育てられていると感じていますが、NOUMANNでは作りやすさではなく、たとえ露地で作りにくくても、自分たちが食べて美味しいと自信を持ってお客様に薦められることを第一優先に生産しています」

さらにNOUMANNは農林水産省が推奨するASIAGAP※2をいち早く導入し、ver.2.2認証を取得。すべての工程を記録し、農薬を一切使用しない、徹底した安全管理の元で生産し最良の状態の野菜を消費者に届けています。

※2 日本およびアジアの農場における、安全な農産物の生産、環境に配慮した農業、農業生産者の安全と人権の尊重、適切な販売管理を実現するため、農業生産者が主体的に活用する農業生産工程管理手法。正しく実施されているかを第三者機関が審査し、認証される

04_DSC4124_r.jpg

市場調査などを経て決まった価格は一般的なレタスの1.5~2倍。NOUMANNの野菜は工場で自動的に作られるわけではなく、生育段階に応じて光量や株間を調整するなど、多くの手間をかけて作られていることから、一時は一株1,000円という案もあったそうです。

「値下げをするのは簡単ですが、品質の低下につながりますし、これまで買ってくださったお客様を裏切ることになります。『買ってよかった』『間違いない』と思っていただけるようなレタスを作り、確かな味と安心をお客様へ届けたい」と語る宮下さんからは、品質も価格も妥協せずに美味しいレタスを届け続ける決意がうかがえました。

コロナ禍で生まれた新たな需要

NOUMANNでは毎日5,000株のレタスが生産されています。レタスの生育期間は品種によって45~60日ほど。売り上げの半分以上が外食産業を占めるNOUMANNも、新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。

「ホテルや飲食店の発注が激減しました。在庫が余ってしまい一時はどうしようかと思いましたが、SNSに現状を書き込み個人向け販売を呼び掛けたら、用意したセットが全て無くなるという、予想外の反響をいただきました。宅食需要が増加する中、新鮮でより良い野菜を食べたいと考える人が増えたのだと思います。単身世帯の方にも好評いただいており、お一人様セットも好評です。

これまではB to Bが主流でしたが、B to Cにも力を入れるきっかけになりました。コロナのおかげで新たな需要を知ることができましたし、社会とのつながりを感じられた出来事でした」

NOUMANNは自社ECサイト「DC.salad」で一部の消費者や卸先を対象に運用しており、コロナ禍をきっかけに個人消費者向けのラインアップを強化したそうです。

美浜町の特産品、美味く美しいレタス「美い玉」を開発

NOUMANNの人気商品である結球レタス「美い玉(びいだま)」は美浜町のふるさと納税お礼品として開発されました。

「美浜町に野菜の特産品を作れないかと思ったのが始まりでした。元々結球レタスは生産していましたが、形や味の改良を重ねブラッシュアップして作りました。路地栽培などでは外部の影響を受けるため楕円形になったり平べったくなったりします。まん丸に結球したレタスを作れるのはNOUMANN独自の技術です」

05_DSC4846_r.jpg
大手航空会社のファーストクラス機内食にも採用された

商品名の「美い玉」には3つの「美」が込められています。1つ目は「美浜町」で育った植物工場産のレタスであること、2つ目は野菜ソムリエサミットで2年連続銀賞を受賞した「美い(うまい)」レタスという意味。そして3つ目は「美しい」パッケージで目からも野菜を楽しんでほしいという、NOUMANNの願いです。

美い玉をはじめNOUMANNの野菜を手にした寄付者のお礼品レビューには「食べたら市販品と全然違った」「スーパーに売っているレタスじゃ満足できないほどの美味しさ」などの声が寄せられています。

「レビューはすごく嬉しいです。取引先の飲食店やスーパーマーケットからは、お客様の感想を直接受け取ることができません。担当の方に聞いてみることもありますが、野菜単体の味について語って下さる方は少ないです。レタスというニッチなところを選んでいただき、しかも時間を割いてレビューを書いてもらえる。レビューが掲載されると必ずスタッフと共有しています」

06_review_r.jpg
「NOUMANNレタス基本セット」のお礼品レビュー

一般的な植物工場ではレタスなどの葉物野菜を中心に生産されていますが、NOUMANNでは葉物野菜以外に食用花のエディブルフラワー、栄養価の高い発芽にんにくも生産しています。今後はさらに根菜類やマイクロリーフにも挑戦するそうです。

07_basic_set.jpg
NOUMANNの複数の野菜がセットになったお礼品
発芽にんにくは、料理王国100選2021を受賞した

寄付者との出会いを楽しみに

「ふるさと納税では肉や米に注目が集まり、野菜単体で脚光を浴びることが少ないと感じています。ふるさと納税でも、その他の分野でも、野菜がもっとクローズアップされるようになればと思いますし、そのためにもしっかりした品質と農家自身が納得できる価格での提供を続けていきたいです。
また、『さとふる』にお礼品を提供している事業者は弊社に限らず、皆さんこだわりを持って生産されている方が多いと感じています。安いとかお得だけでなく、単純に『美味しそう』という視点での寄付者さんとの出会いがこれからも続くと嬉しいです」と語る宮下さん。

ふるさと納税をきっかけにNOUMANNが作る野菜の魅力を知り、直接定期購入を依頼する寄付者もいるそうです。

農業の新たな働き方を提案・実践し、美浜町に根を下ろして挑戦を続ける、NOUMANNのさらなる活躍が楽しみです。