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「日本一チャレンジにやさしいまち」の秘密(前編)

島根県雲南市 子どもから高齢者まで全世代がいきいきと暮らすまちづくり

雲南市は、子ども、若者、大人による3つのチャレンジを連鎖させ、市民が支え合い、いきいきと暮らせるまちづくりで全国から注目を集めています。

ふるさと納税の寄付金は、多くの市民や事業者のチャレンジ支援に活用されています。

今回、UIターンで市内に居住するようになった若者や、市民を支援するNPOやコミュニティナースの活動について話を聞きました。(全2話)

RS_181016_前編_桜並木.jpg日本さくら名所百選に選ばれた雲南市の斐伊川堤防桜並木

「地域自主組織」や若い世代の移住者が活躍

島根県東部の雲南市は、松江市と出雲市に隣接する人口約4万人の市です。2004年に、6町村の合併によって誕生しました。「雲南」という名前は、かつて出雲国の南に位置していたことに由来しており、市内には四季折々の美しい自然のほか、「ヤマタノオロチ伝説」ゆかりの地も多くあります。

市では「生命(いのち)と神話が息づく新しい日本のふるさとづくり」を掲げ、市民と行政が協働し、市外の人が応援・参加できるまちづくりを目指しています。

雲南市へのふるさと納税では、①子ども・若者チャレンジ支援、②大人チャレンジ支援、③定住に関する事業、④保健・医療・福祉、⑤教育・文化・平和、⑥産業・雇用、⑦市長が選定する事業、という7つの領域から使途を指定できます。また、支援したいNPO法人等の事業を指定し、寄付することもできます。

市では、子ども、若者、大人による3つのチャレンジを連鎖させ、10年後も20年後も市民が互いに支え合い、いきいきと暮らせるまちづくりを推進しています。2004年の合併に伴い役場が集約されたのを機に、市内の各地域では、「地域自主組織」が作られました。現在は30の地域自主組織があり、市内全域を網羅しています。

そこでは過疎化や高齢化が進行する中、地域のさまざまな課題を解決しようと住民自身が取り組みを行っています。例えば、高齢者が交流できるサロンを開いたり、スーパーマーケットがなくなった地区に住民自ら店舗を設置して、運営したりしています。市では、これら大人たちの頑張りを「大人チャレンジ」と呼んでいます。

また、これに続く若い世代を育て、「若者チャレンジ」を支援しようと2011年には「幸雲南塾」が開設されました。これまでに120人以上の卒業生を輩出し、卒業生らは仲間や地域を巻き込み、地域の課題解決に向けた活動や起業に挑戦しています。

RS_幸雲南塾.png

若者のチャレンジを支援する「幸雲南塾」は雲南市が支援している

さらに「子どもチャレンジ」の支援では、幼稚園から高校生までを対象に、フィールドワークや地域住民と共に課題解決を考え、交流する取り組みなど、学校、家庭、地域、NPO、行政の連携による「質の高い」キャリア教育を進めています。

「雲南市の取り組みは、全国的に注目されています。私自身、その取り組みに魅力を感じ、市外から移住しました。移住者が活躍できる場も多く、市や住民の方々にサポートしてもらえます。今は過渡期ですが、この取り組みは将来、大きな力を生み出すはずです」

市から委託を受けて、地域コーディネーターとして活躍する田中学さんは雲南市の今後に期待しています。市では今年4月、国内外に研修や留学で行く学生や、起業創業する若者のチャレンジ資金をサポートする仕組みの「雲南スペシャルチャレンジ」も立ち上げました。市が進める多くのチャレンジ支援にとって、ふるさと納税による寄付金は重要な財源になっています。

181016_前編_雲南市さん.jpg(左から)地域コーディネーター 田中学さん、雲南市役所 松蔭佳子さん、熱田勇二さん

「雲南市では『日本の25年先を行く』というフレーズをよく使わせていただくのですが、今後日本全体で人口減少や少子高齢化が進んでいく中で、今行っている雲南市の課題解決へのチャレンジが全国にも広がって行くと良いと考えています」(雲南市役所 政策推進課 松蔭さん)

寄付を使った助成を受けてこだわりのブドウをブランディング

ふるさと納税の寄付金は、市内の事業者によるチャレンジの支援にも使われています。雲南市のふるさと納税のお礼品事業者である、「GEAR FARM(ギアファーム)」は市の支援を受けて、自社のブランディングに挑戦しました。

ギアファーム代表の星野和志さんは昨年1月、祖父母が営んできたブドウ園を受け継ぎました。現在は主に、シャインマスカット、デラウェア、ピオーネ、クイーンニーナという4品種を栽培しています。

181016_前編_星野さん.jpgギアファーム代表 星野和志さん

高品質なブドウを作るには、多くの手間がかかりますが、中でも、特にこだわっているのは土づくりです。地元を流れる斐伊川の土手で刈られた草とブドウの落ち葉を土に埋めて発酵させると、根がしっかり張って水分や養分がよく吸収されます。大粒で深い味わいのブドウを作るためには、この土が重要なのです。

「良い土を作るには、長年の積み重ねが重要です。祖父母の代から続けられてきた方法で、何十年分もの養分や微生物の層ができています。手間はかかりますが、良いものを作れば、お客様が喜んでくださるのを子どもの頃から見てきました」(星野さん)

「品質へのこだわりや雲南の魅力を、寄付者にも知ってほしい。」星野さんはそんな思いから市の協力や助成も得て、パッケージを一新しパンフレットを制作、星野さんの名前にちなんだ「星のぶどう」と名付け、ブランド化しました。

贈答用を意識したブランディングを行ったことで「星のぶどう」には注目が集まり、当初受付した限定50セットはすぐに受付終了。さらに「おいしいぶどうだったから」と、直接購入に関する問い合わせも多く寄せられています。

181016_前編_星野ぶどう.jpgブランディングが成功し、「星のぶどう」は人気のお礼品に

星野さんは今後、農業の魅力の発信にも取り組もうとしています。雲南市にはかつて、約50軒のブドウ農家がありましたが、現在も残っているのは8軒だけで、それらの農家でも高齢化が進んでいます。山間地域のため、農家が減って農地が荒れれば、イノシシやクマが多く出るようになり、人々が生活する環境も崩れていきます。

「農業を守ることは地域を守ることにつながりますが、若い世代に農業の魅力が伝わらなければ、農業は廃れます。私がぶどうづくりをしていて良かったと考えている気持ちを発信していくことで、同世代の人が農業の魅力を感じて、農業をやってみようと思う人が1人でも増えればよいと考えています。」と語る星野さん、挑戦を後押しする雲南市の取り組みは、若い生産者の力になっています。

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