北海道奥尻町 関係人口を育てるふるさと納税のかたち
北海道南西部、日本海に浮かぶ離島・奥尻島。その島全体が北海道奥尻町です。
周囲約84キロの島は、透明度の高い「奥尻ブルー」と呼ばれる美しい海に囲まれ、ウニやアワビをはじめとした豊かな海の幸に恵まれています。奇岩や美しい海岸線が織りなす景観も魅力のひとつです。北海道の離島の中では比較的温暖な気候で、豊かな自然と穏やかな暮らしが共存する地域です。
奥尻町は、1993年には北海道南西沖地震という大きな災害を経験しました。全国から寄せられた支援と住民同士の支え合いによって復興を遂げた奥尻町には、「感謝」と「つながり」を大切にする文化が今も息づいています。
そうした想いは、訪れる人へのおもてなしや、ふるさと納税を通じた寄付者との関わりにも受け継がれています。
今回は、奥尻町ふるさと納税担当の佐々木さん、工藤さんに、ふるさと納税への想いや取り組み、今後の展望について伺いました。

増やしたいのは寄付額だけではない。「奥尻のファン」を増やすこと
離島である奥尻町では、人口減少や高齢化、漁業や農業の担い手不足など、さまざまな課題を抱えています。そうした中、奥尻町がふるさと納税に取り組む目的は、単なる財源確保だけでなく、"奥尻を知ってもらう"きっかけ作りです。
「全国に奥尻のファンを増やし、次世代へこの島をつないでいくことが大きな目標です」(佐々木さん)
集まった寄付金は産業振興や福祉医療、基盤整備など、住民の暮らしに直結する事業に活用されています。また、近年はふるさと納税を通じて、島の魅力を全国へ発信することにも力を入れています。
ふるさと納税の取り組みで変化を感じているのは自治体だけではありません。町内事業者からは、「これまで自分たちだけでは届かなかった全国の方々に商品を知ってもらえるようになった」といった声も寄せられています。
奥尻町では事業者との対話を大切にしており、現にある商品のPRや新しいお礼品の相談のために直接足を運んで話し合うことも少なくありません。事業者とともに島の魅力を発信しながら、寄付者との接点を広げています。
その取り組みの一つが、各地で開催されるPRイベントへの参加です。昨年は札幌や大阪のイベントに出展し、ふるさと納税の紹介も行いました。
「奥尻のものを食べたい」「帰ったら寄付するよ」そんな声を直接聞く機会も多く、実際にイベント後に寄付につながったケースもあったそうです。
「イベントでお話しすると、奥尻を覚えていてくださる方が本当に多いんです。奥尻に来たことがある方や、以前住んでいた方、仕事で関わったことがある方など、さまざまな形で島とのつながりを持ってくださっています。そうした方々との縁を大切にしながら、奥尻の魅力を伝えていきたいですね」(佐々木さん)
奥尻町が目指しているのは、お礼品をきっかけに島を知ってもらい、やがて"奥尻ファン"になってもらうこと。ふるさと納税は、そのつながりを育む大切な架け橋となっています。

PRイベントの様子
島の恵みと島の個性 島を感じるお礼品
奥尻町のお礼品を語る上で欠かせないのが、豊かな自然の中から生まれる特産品です。
2025年度のお礼品の中でも特に人気を集めているのは、「うに」「あわび」「奥尻産ふっくりんこ米」。いずれも奥尻の海や大地の恵みを感じられる品々で、寄付を通じて島の魅力を全国へ届けています。
なかでも寄付額の大きな割合を占めているのが、奥尻の海で育ったうにです。島を代表する味覚として、多くの寄付者に選ばれています。「うにそのものが甘くて味が濃いので、醤油がいらないくらいです。私自身、奥尻のうにで十分満足しているので、他の地域のうにを食べたことがないくらいですね」(佐々木さん)

また、「奥尻産あわび姿煮」も人気のお礼品の一つです。天然あわびは冬を前にした限られた期間しか漁獲できず、海に潜って一つひとつ採取されます。漁獲量には限りがあるため、事業者と自治体が密に連携しながら予約数や在庫状況を確認し、受付停止や再開のタイミングを調整しています。「毎月、事業者の方と予約状況や在庫量を確認しながら進めています。限られた資源だからこそ、寄付者の皆さまへしっかりお届けできるよう心掛けています」(佐々木さん)

こうした日々の積み重ねが、事業者との信頼関係にもつながっています。一方で、奥尻町には海産物だけではない魅力もあります。
その代表格が「奥尻産ふっくりんこ米」です。奥尻町は北海道の離島で唯一、水田を有する地域。島内のブナ林から湧き出る豊かな水と比較的温暖な気候に恵まれ、甘みと旨みのある米づくりが行われています。冷めてもおいしく、甘みのある味わいが特徴で、地元でも親しまれているお米です。
さらに、40年以上島で親しまれてきた「ハイシャーベット」や、年間数頭しか出荷されない希少な「おくしり和牛」など個性豊かなお礼品も並びます。
「どこの自治体にも海産物やお肉、お米はあります。でも、その背景にある島の風景や作り手の想いまで知っていただけたらうれしいです」(佐々木さん)
お礼品をきっかけに奥尻を知り、興味を持ち、いつか島を訪れてみたくなる。そんな出会いを生み出すことも、奥尻町がふるさと納税に込める大切な想いの一つです。

中学生・高校生と生み出した新たな挑戦 限定ワインプロジェクト
奥尻町では近年、地域の未来を見据えた新たな挑戦も始まっています。それが、奥尻ワイナリーと地元の中学生・高校生が協力して生まれたふるさと納税限定ワインです。
奥尻町のお礼品は、うにやあわびをはじめとする海産物が中心です。しかし、その多くは自然環境に左右されるため、毎年安定した数量を確保できるとは限りません。
「温暖化などの影響で海産物が思うように確保できなくなる可能性もあります。そうした中で、安定して供給できるお礼品を考えたときに、日本初の離島にある奥尻ワイナリーさんから限定ワインの提案をいただきました」(佐々木さん)
そこで奥尻町は、単に新しいお礼品をつくるだけでなく、島の未来を担う若い世代にも参加してもらいたいと考えました。
その結果、奥尻中学校吹奏楽部が演奏した楽曲をワインに聴かせて醸造し、奥尻高校のOID(オクシリイノベーション事業部)の生徒たちがラベルデザインを担当。町、ワイナリー、学校が連携した"島ぐるみ"のプロジェクトが実現しました。今回のプロジェクトには、奥尻中学校吹奏楽部の生徒7名と、奥尻高校OID(オクシリイノベーション事業部)の生徒7名が参加。地域の未来を担う計14名の若者たちが、それぞれの形でワインづくりに関わりました。
「町職員だけでなく、島の未来を背負う中学生や高校生に参加してもらうことで、より奥尻らしいワインになると思いました」(佐々木さん)
完成したワインは300本限定。希少性を高めるため、ふるさと納税限定で展開されています。また、本お礼品に携わった生徒たちが成人を迎えた際には、記念品としてこのワインを贈る構想もあるそうです。
中学生の頃に演奏した音楽、高校生の頃に考えたデザインが、数年後には自分たちの手元に戻ってくる。このプロジェクトは、お礼品開発にとどまらず、若い世代と地域とのつながりを育む取り組みにもなっています。
お礼品づくりにとどまらず、若い世代が地域と関わり、自分たちの島に誇りを持つきっかけにもなっているこの取り組み。一本のワインには、奥尻町の未来への想いが込められています。

目指すのは"寄付者"ではなく"島のファン"
「目指しているのは、島の恵みやお礼品をきっかけに島を知ってもらい、イベントで味わったうにのおいしさや、島で過ごした時間を思い出したときに、ふと『また奥尻を応援したい』と思ってもらえる関係を育てていくことです。そうした想いのもと、今年度からは担当課だけでなく町職員全体でふるさと納税を推進する体制づくりも進めながら、島の魅力を伝え、応援してくれる人を少しずつ増やしています。
お礼品が少ない、事業者が少ないという課題はあります。でも、それ以上に奥尻を好きになってくれる人を増やすことが大切だと感じています」(佐々木さん)
ふるさと納税を通じて生まれたご縁を大切にしながら、奥尻町はこれからも"奥尻ファン"を増やしていきます。

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