株式会社ループ食品 天然とらふぐで挑む地域活性化の取り組み
福島県の東北端に位置する相馬市は、豊かな海の幸に恵まれた漁業のまちです。
福島県の沿岸「常磐沖」は、冷たい親潮と暖かい黒潮がぶつかる「潮目の海」で栄養豊富なプランクトンが集まるため、この常磐沖で水揚げされる魚介類は「常磐もの」と呼ばれ高い評価を得ています。
そんな相馬で近年、天然とらふぐの漁獲量が急増しています。今では常磐ものの新名物「福とら」として "新たな地域資源"へと育ちつつあります。
「福とら」のブランド化にも取り組んできた立役者、相馬市で水産加工を手がける株式会社ループ食品 代表取締役社長の森さんに話を伺いました。

「地場の魚を全国に」買い付け~加工~提供までを一気通貫で対応
―「ループ食品」について教えてください。
森さん:「相馬で水揚げされた海産物の加工・販売を行っています。もともとは飲食店をやっていたんですが、新型コロナウィルスをきっかけに『自宅でも新鮮な魚を食べてもらえるように』と水産加工業を始めました。また、仕入れ先だった魚屋さんのご主人が体調を崩されて買い付けする場所がなくなってしまったため、市場に直接買い付けに行くようにもなりました。今では買い付けから加工・販売まで自社で一貫して行っています」
ループ食品の加工場は、福島県でも有数の港「相馬松川浦新漁港」のすぐ近くにあるため、買い付けから加工までの時間が短く、鮮度の高さが強みです。また、仲介人や物流も挟まないため価格を抑えて提供が可能です。

相馬松川浦新漁港の様子
福島で「とらふぐ」?
地域住民も戸惑う豊漁~相馬の新たな特産品へ
―豊かな漁場として知られる相馬市。ふぐはいつから水揚げされるようになったのでしょうか?
森さん:「相馬は漁業のまちなので昔から豊富な魚介類が水揚げされますが、とらふぐが獲れるようになったのは4~5年前からです。近年の気候変動、海水温上昇などが影響し、福島沿岸に来たのではないかと言われています。現在の相馬では、下関で獲れる天然とらふぐの1シーズンの水揚量に匹敵する量が、1日で水揚げされるほどになっています」

相馬で獲れる「とらふぐ」
―すぐに商機ととらえたのですか?
森さん:「そもそも東北ではふぐを食べる文化があまりなく、ネームバリューも低いため、県内でも食べたことがない、聞いたこともないという方が多いのが現状です。加えてここには漁業に関わる人が700〜800人いますが、当時ふぐ漁をやったことがある人は誰もいない状況でした。そのためふぐが獲れている地域の業者から道具や知識を揃え、本格的に操業が始まりました。
また、相馬はもともと『常磐もの』として出荷中心の文化でしたので、水産加工業者がほとんどいなかったんです。中央卸売市場、豊洲などや関西、九州方面に流すのが基本でした。
そこで私自身ふぐについて勉強をはじめ、免許を取得。相馬市では比較的早く加工に着手できたと思います。また弊社では-30℃の急速冷凍機を使用することで、解凍してもドリップが出にくく、うま味が逃げない状態で保存できます。その結果、少しずつですが、地元の方にも食べてもらえるようになり、現在では、旅館やホテル、小料理店などにふぐを提供しています」
当初は漁獲量に制限もなく、生け簀がパンパンになってしまうこともあったそう。大量に水揚げされるとらふぐに対し地元漁師さんたちが試行錯誤する中、地元で"安心・安全で希少な高級魚を、地元のシンボルとして育てたい"という機運が高まっていきました。そこで、35cm以上・延縄漁・天然ものという条件を満たすとらふぐを「福とら」と命名。「福島の福」「ふぐ=福」「幸福の福」に由来し、相馬の海の恵みを"福とともに届けたい"という想いが込められています。
―「福とら」のおすすめポイントは?
森さん:「まずは天然ならではの強い歯ごたえ。噛むほどに甘みが出ます。養殖は火を通すと縮んでしまうこともあるのですが、天然の白子は焼いても縮まず、中のクリーミーさが保たれて本当に美味しいです。また、価格も養殖ものとほぼ同価格で提供することができます」
相馬で獲れる「とらふぐ」
ふるさと納税参入と「福とら」お礼品化への道のり
こうして地元の新たな特産品として誕生した「福とら」がどのようにしてふるさと納税のお礼品になったのでしょうか?
当時、相馬市のふるさと納税は市への直接寄付のみ、かつ高額寄付が中心で、寄付者層が限定的でした。「相馬には豊富な海産物のほかに、相馬牛や青果など資源も豊富なのに、もったいないという思いがありました」と森さんは語ります。
その頃、さとふる側でも相馬市でふぐの漁獲量が増えていることを知り、お礼品としてPRできないかと思案していました。
―ふるさと納税参入のきっかけは何ですか?
森さん:「相馬の特産品をもっと知ってもらえたらと考えていた頃、参加したとある展示会でさとふるの方と知り合ったんです。現状を伝え、それから何度もやり取りを重ね、相馬にも実際に足を運んでもらいました。『福とら』をぜひお礼品に、というさとふる担当者の想いも重なり1年ほどかけて相馬市や観光協会などにアプローチしていただきました。自治体としても何度も話を聞くうちに考え方に変化が生じ、さとふるサイトへの掲載やお礼品の多様化、寄付者層の拡大について前向きに検討が進んでいきました。結果的に、ふるさと納税という新しい扉を開けるきっかけになりました。さとふるさんの働きかけには感謝しています」
こうして2025年9月ついにさとふるでのお礼品提供が開始されました。
「福とら」のお礼品
―ふぐは特殊な加工が必要な魚です。加えて安定出荷のための数の確保など、お礼品として提供するためにはどういった課題がありましたか?
森さん:「ふぐの加工については、当初は外部委託も検討していました。魚だけ仕入れて、加工は別の専門業者にお願いし、それを買い戻して販売するという流れも検討はしたのですが、結局ふぐ加工に必要な機械をすべて購入しました。皮引きや除毒、部位分けなど、手作業でしかできない部分はありますが、それ以外は機械化しました。皮をスキニングする機械、てっさ用のスライサーなどを導入し量産できる体制を整えたことで、受注が増えても対応できるようになりました。もちろん『今後獲れなくなったらどうしよう』という不安はありますが、そこは心配してもしかたない。覚悟を決めて先行投資しました」
「おかげさまで、さばきすぎて腱鞘炎になりましたが(笑)」と笑う森さんの行動力と決断力には脱帽です。

加工場での作業の様子
「福とら」は市場に出回る天然とらふぐの1/3ほどの価格で提供されています。しかしながら地元相馬でもまだあまり知られておらず、口にしたことがない方がほとんどでした。
「安価とはいえ、他の魚と比べれば高いですからね」(森さん)
そこで「福とら」をもっと知ってもらおうと、さとふるの提案をきっかけにお披露目会を実施しました。
―2025年12月に「浜の駅」で実施したお披露目会について教えてください。
森さん:「ふるさと納税のお礼品にもなった『福とら』をもっと周知するため、さとふるさんが観光協会に『注目度の高いとらふぐをPRしたい』と提案してくださり実現しました。当日、会場の『浜の駅』にはてっさを500食ほど用意し、一人3枚に皮を添えて提供しました。非常に贅沢な内容だったと思います」
お披露目会の会場となった「浜の駅 松川浦」
こうして自治体と事業者、さとふるが連携して実施した福とらのお披露目会は、地元メディアのほか水産系の専門メディアでも紹介されました。
森さん:「ニュースでも取り上げられ、会場では初めて食べたという声や、子どもたちが喜んでいる様子も見られました。すぐに数値で効果が見えるわけではありませんが、その後、浜の駅でのふぐ関連商品の売上は伸びていますし、PR効果は確実にあったと感じています」
地元住民を対象に実施したお披露目会を通じて、また実際に味わってもらうことで、「相馬でふぐが獲れている」という認知が広がり、地域内での消費拡大にもつながっています。
「福とら」お披露目会
当日は多くのメディアが集まった
さとふるとの連携と「ふるさと納税」で広がる相馬の可能性
―さとふるへのお礼品掲載をはじめて率直な感想をお聞かせください。
森さん:「開始時、思ったよりもオペレーションがスムーズでやりやすいなというのが率直な意見です。『福とら』お礼品化に向けても、寄付額の設定や魅せ方などさとふるさんからアドバイスをもらい、共に協議してきました。ふるさと納税を通して『福とら』をより多くの方に知ってもらい、ぜひこの美味しさを味わってほしいと思っています。
加えて、相馬には品質が高い海産物が他にも数多くあります。人気が高い常磐ものや『幻のエビ』とも呼ばれる希少なブドウエビといった高級食材のお礼品化も検討を進めているところです。
まずは相馬でどんな魚が獲れているのかを知ってもらうことが大事だと思います。どこで買えて、どこで食べられるのか。情報がつながれば、地域の文化も育っていくと思っています。
一方で、ただ種類を増やせばいいというものでもないと思っています。ポータルサイトならではの分析や寄付傾向などを共有いただき、アドバイスを活かして寄付を多く集めることで相馬のさらなる魅力を広めていきたいと思っています」
気候変動の影響を受け、とらふぐの新たな産地となった相馬市。地球温暖化の波はいたるところに影響を及ぼしていますが、それを新たな商機ととらえ森さんは積極的に動き出しています。
「外からの視点も積極的に取り入れていきたい、さとふるとはこれからも継続的な情報交換を進めていきたい」と常に向上意識の高い森さん。ループ食品をきっかけに、ふるさと納税への参入を検討する事業者も増えているそうです。
ふるさと納税は、地域とつながるひとつの入口です。
「福とら」をはじめ、相馬市の多くの特産品が注目され、更なる地域活性化につながることに期待が膨らみます。
これからの相馬市のふるさと納税動向にもぜひ注目してみてください。

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