手作業だからできるこだわりのジンギスカン あづまジンギスカン本舗
北海道の空の玄関口「新千歳空港」から車で35分程度の場所にある北海道厚真町は、2018年に発生した北海道胆振東部地震で最大震度7を観測し、深刻な被害を受けた地域のひとつです。そんな厚真町で1968年から営業を続ける老舗精肉店、あづまジンギスカン本舗を運営する有限会社市原精肉店 代表取締役の市原泰成さんにこだわりのジンギスカンの秘訣や、震災時の支援によってどのような影響があったのか話を伺いました。
有限会社市原精肉店 代表取締役 市原泰成さん
肉の魅力を引き出す北海道素材を使った秘伝ダレ
北海道の郷土料理として古くから愛され続けるジンギスカンは、お店ごとにこだわりの味付けがあるそうですが、あづまジンギスカン本舗では北海道産果物から作られるタレから生み出されるあっさりした味付けが特徴です。
「商品によりますが、うちの代表的な『あづまジンギスカン』という商品などはマトンを使用しています。マトンは生後1年以上の羊で肉の旨味は強いのですが、臭みや癖が強く肉が固くなりがちです。反対に生後1年以内のラムは臭みや癖が少なく柔らかいのですが、肉の旨味は少なく、タレなどで旨味を追加することはできません。
その為、マトンの臭みや癖を消し、肉の柔らかさを引き出せるよう、完全非加熱で絞ったリンゴやタマネギに生姜などの調味料を加えたタレを使っています。酵素の力で肉も柔らかくなりますし、果物の香りが飛ばず肉の臭みが消え、肉の柔らかさや旨味を楽しめます。小ロットを手作業で生産しているので、素材にもこだわり、季節に合わせて味付けを少し変えたりと、いつでも美味しく召し上がっていただけるよう、工夫しているんです」
そう話す市原精肉店3代目の市原さん。その味はあまりマトンになじみのないと考えられる都内の展示会などでも「臭みがない」と好評です。
職人が丁寧に手切りしたマトンを特製タレに付け込んだジンギスカン
震災後、全国から集まった支援が力に
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震で、あづまジンギスカン本舗がある北海道厚真町は最大震度7を観測し、広域にがけ崩れが発生するなど、大きな被害がありました。幸いにも、あづまジンギスカン本舗の店舗では機械や建物へのダメージはなかったそうですが、水道や電気のライフラインが停止し、店舗販売用の商品の保存に大きな影響があったそうです。
震災後の店舗内の様子(写真はタレの原料などを補完する保管庫)
「冷蔵庫などが動かなくなってしまったので、店舗販売用の商品はほとんどもたないと思い、廃棄をするのはもったいないので、一部は地元の商工会が行っている炊き出しに提供し、冷蔵の設備も足りてないということだったので所有している冷蔵トラックを貸したりしていました。また、自社でも煮込みジンギスカンという商品で直接炊き出しも行っていました。スタッフは、町外に住んでいて自宅への被害が少ない人も多かったので、周囲の支援に回ることが出来たんです。店舗の再開は震災発生から2週間程度でできたのですが、通常の営業状態に戻るまでは1か月程度かかりました」(市原さん)
自社の炊き出しでは500人分の煮込みジンギスカンを提供したという
スタッフと力を合わせ、店舗を再開したあづまジンギスカン本舗には、震災直後からふるさと納税のお礼品の申し込みが急増し、通常期の5倍以上の申込みがあったそうで、連日店舗の営業後に発送準備を行うという日々が続いたそうです。支援の気持ちを込め、全国から届いた申込について市原さんはこう話します。
「営業を再開したあと、しばらくは来客数が激減していました。震災後は皆さん状況がわからないので、店舗に直接買いに来たり、電話して直接注文したりはしにくいんですよね。なので、ふるさと納税で申し込みがあったのは非常に助かりました。正直これがなかったらどうなっていたんだろうと思います」
震災時の支援以外にも、ふるさと納税のお礼品がきっかけでお店のことを知ったという声もあるそう。ふるさと納税が集客の窓口の一つとなっているそうです。
まちの名を広め、応援してくれる人を増やす
最後にふるさと納税にかかわる事業者として、こんな思いを話してくれました。
「ふるさと納税という窓口で、まず厚真町を知ってもらうきっかけになればいいなと思います。同時に私たちも全国のイベントに出展したりしたときに厚真町の名前を認知してもらって、ふるさと納税につなげていけたらいいなと思います。厚真町が知られることで自社の名前がでていくこともあると思いますし、いい関係性の中で互いに貢献ができれば良いですよね」
『さとふる』の「平成30年北海道胆振東部地震 災害緊急支援募金」サイトでは厚真町にお礼品なしの寄付が、約1億円集まっています。(2020年4月時点)一方で「あづまジンギスカン本舗」のお礼品ページには、「少しでも震災の復興のお手伝いになればと思い、こちらにふるさと納税させていただきました」「皆様の早期の復興、お祈りしています。頑張ってください」など、寄付者からの励ましの声が並び、市原さんの声からもお礼品が伴う寄付が、被災時にも地域の産業の継続を助けることにつながることがわかりました。
今後も『さとふる』は、災害発生地に限らず全国の地域が、ふるさと納税制度を通して活性化につながる様、支援を行っていきます。