茨城県稲敷市 「米どころ稲敷」の"次の未来"を市内高校生と創る
茨城県南部に位置する稲敷市は、その名のとおり関東有数の米どころ。豊かな自然を活かしたゴルフ場も多数有しています。2005年の市町村合併で生まれた同市が、ふるさと納税を契機に育もうとしているのは「地域への愛着」。稲敷市の高山副市長にお話を伺いました。
茨城県稲敷市 高山久副市長(左から2番目)と稲敷市政策調整部の皆さん
ふるさと納税を通じ地域の事業者とつながる
稲敷市がふるさと納税の取り組みを本格化したのは2015年のこと。寄付に対するお礼品を充実させるため、事業者の公募を開始しました。当時を振り返り、高山副市長はこのように話します。
「市役所で公募についての説明会を開いたのですが、当初参加していただけたのは1社にとどまりました。おそらく、ふるさと納税に対する認知が十分に広がっていなかったためでしょう。そこで、市の担当職員が事業者を1件ずつ訪ね、ご協力をお願いすることになりました。
その後、事業者とのつながりも増え、今はお米の農家さんを中心に、ゴルフ場や宿泊施設、牧場など、約60の事業者にご協力をいただき、お礼品の数も80を超えるに至っており、ありがたく感じています。
担当の職員によると、ふるさと納税でお礼品を提供することが、事業者にとっても良い影響を生んでいるようです。たとえば、直接消費者に向けた販路を持っていなかった農家さんにとっては、ふるさと納税は販路拡大のきっかけになっているとのことでした。
稲敷市では『さとふる』を利用しており、寄付してくださった方のレビューを見ることができますので、これも励みになっているようです。レビューから消費者の反応を知って商品の内容や魅せ方を工夫する事業者も見られますね」(高山副市長)
市の魅力を伝えるお礼品を提供したい
稲敷市が、ふるさと納税の主な目的として掲げているのが、"市内外に向けたPR"です。そのため、寄付者へのお礼品には、市内で採れた特産品や、花火大会の桟敷席観覧など、稲敷の魅力を伝えるものを多数揃えています。
「稲敷市は2005年に4つの町村が合併して発足しており、自治体としては若いため、全国的な知名度はあまり高くありません。そこで、ふるさと納税を通じて、市の魅力を伝えていきたいと考えています。たとえば市内で採れた美味しい農産物や、稲敷のお米を用いた味噌などをお礼品にしていますので、これをきっかけに市外の方からも興味を持っていただけると嬉しいですね。
また、稲敷に実際に足を運んでいただく機会も増やしていきたいと考えており、市内の旅館の宿泊券や、ゴルフ場のプレー券もお礼品としています。もともと、稲敷にゴルフでいらっしゃる方は多いのですが、やはり市の名前まではあまり認識をいただけていないので、『ゴルフの稲敷』という認知も広がるといいですね。
ちなみに、お礼品として『オーダーメイドのゴルフクラブ』も用意しています。職人の方がひとりひとりの希望に合わせたゴルフクラブを製作するというもので、長さやグリップなどをオーダーすることができます。完成したらぜひ市内のゴルフ場で打ち心地を試していただきたいです」(高山副市長)
「稲敷っていいな」を感じるプロジェクト
最後に、ふるさと納税で得た寄付金の使い道についてお聞きしました。
「稲敷に人を集め活性化させるためには、やはり愛着を持ってもらわないといけません。そのためには、『稲敷っていいな』と思えるような自慢できるものを生み出したい。そこではじめたのが、『特産物スイーツの開発プロジェクト』です。このプロジェクトは、その名のとおり地域の特産物を使ったスイーツを開発するものですが、市内の高校生が主体となり、お菓子屋さんに協力をいただきながら取り組んでいます。必要な資金はクラウドファンディングで募集した他、ふるさと納税の財源も合わせて調達しました」(高山副市長)
「さとふるクラウドファンディング」で開発資金の一部を調達した
スイーツは市のお礼品としても提供した(※現在は受付終了)
同プロジェクトにより、稲敷の名物である『かぼちゃ』を使ったタルトや、高校で栽培したいちごで作った自家製イチゴジャムをつかったシフォンケーキなど、3種類の菓子が開発されました。今後、稲敷ブランドのお菓子として定着することが期待されています。
「また、ふるさと納税の財源を活用し、公共施設である『稲敷市新利根地区センター』をイルミネーションで飾り、2018年11月22日~2019年1月6日までイベントを開催しました。市内外から多くの方にお越しいただくことができ嬉しく思っています。この催しをはじめたきっかけは、昨年度に全国ゆるきゃらグランプリで全国5位に輝いた本市のマスコットキャラクターの『稲敷いなのすけ』を模した電飾を市役所前に展示したことにあります。あのとき、市民の方が思いのほか多く集まってくださり、喜んでいただけたんです。
今回のイルミネーションも、子どもからお年寄りまで楽しんでいただきたいと考え、電飾の一部は市内の子どもたちが製作したものを使いました。今後もこうした市民が参加できる事業を通じて、『稲敷っていいな』と思ってもらえるきっかけづくりをしたいと考えています」(高山副市長)
約18万球のLEDを使用し開催された
「愛しき稲しきイルミネーション2018」にもふるさと納税の寄付が活用されている
将来的な展望について質問すると、「市民とともに、『稲敷は何を大切にしていくのか』というところから議論し、ふるさと納税の活用を検討したい」と話す高山副市長。稲敷の魅力を高めるための稲敷市の挑戦は、これからも続きます。