北海道旭川市 人と地域を結ぶ
寄付金の使い道のひとつ『国際交流活動』
中高生の相互派遣交流事業の様子
北海道旭川市では、人と地域を結ぶ、ふるさと納税のあるべき姿を目指した取り組みを進めています。「モノだけでなく、どう旭川の魅力を伝えていくかに視点を移していきたいです」と話す上田康平さんに、旭川市が考える、理想のふるさと納税の姿について伺いました。
北海道旭川市 税務部 税制課 上田 康平さん
家具やクラフト製品も人気
2015年から、ふるさと納税サイト『さとふる』を導入している北海道旭川市。導入当時から、着実に実績を伸ばしています。
現在、寄付に対するお礼品で特に人気なのは、旭川市のブランド牛『旭高砂牛』、旭川市内の牛乳で作った『奇跡のプリン』、そして『ジンギスカン』。
中でも注目度の高い『旭高砂牛』は、日本酒の国士無双で知られる旭川の老舗酒造『高砂酒造』と、旭川の生産牧場『ひかり牧場』がタッグを組んで生み出したブランド牛。高砂酒造の酒粕を餌として育てた牛で、柔らかく旨味の濃い赤身とほどよい脂身が特徴です。
「2~3年ほど前にできたブランド牛ですが、ふるさと納税を通じ広くPRできています」(上田さん)
臭みがなく、やわらかい「旭高砂牛」は霜降りではなく赤身肉であることが特徴
お礼品では、どうしても食べ物に注目が集まりがちですが、手作りの椅子や机、木製靴べらなど、家具やクラフト製品にも人気が集まっているのが、木材産業で100年以上の歴史を有し、国内有数の家具のまちとして知られる旭川市ならではの傾向です。良質な木材を使い、シンプルで機能性の高い製品がゆえ、オーダーが重なり、生産が間に合わないといった嬉しい悲鳴も聞こえているそうです。
「販路拡大という意味で、今まで日の目を見なかった地域の商品が世に出て行く、それによって旭川の名が知られていくことがふるさと納税の良さ。事業者とよくコミュニケーションを図り、我々自身がモノの良さをよく理解した上で発信していく。そうした取り組みを、今後も強化していきたいと思っています」(上田さん)
人気の高いお礼品「エントランススツールと靴べらのセット」
ウォルナットの質感やデザインが好評
寄付の見える化、分かる化を推進
寄付金の使い道としては、『国際交流活動基金』や『産業振興基金』、『デザイン振興基金』、『まちなか活性化事業基金』などに充てています。
「寄付先については、担当としては課題意識を持っています。現在は、通常の市の事業にお金を充てている状況で、成果としては分かりにくい。子育て支援や産業振興をテーマとして寄付募集を行っている自治体は多く、それと横並びになっていては旭川市の色が出てこない。ストーリーも含め、一連の流れを寄付者に見ていただいて、旭川市を心から応援していただける方を増やしたいです」(上田さん)
旭川市は今年4月に、寄付金の使い道をリニューアルしました。寄付先について、より具体的な項目を選べるよう設定したことで、これまで多かった、寄付金を何にでも使っていいという"一般寄付"の選択割合が、金額ベースで10%ほど下がったといいます(9月末現在)。寄付金の実績自体は伸びていることから、使い道を指定する寄付者が増えていると言えるでしょう。
「旭川市としては目指す姿があり、"こうした課題があるから寄付してほしい"といったスタンスは見てもらいたいと思っています。何にでも使っていいという"一般寄付"が増えることに対しては引っかかりがありました。使い道を指定する寄付者が増えたことで、ふるさと納税制度が本来あるべき姿になってきていると感じています」(上田さん)
旭川市では現在、寄付の見える化、分かる化を推進しており、取り組みを強化することで、旭川市の色を出していく方針です。
『まちなか活性化事業基金』を活用した
「買物公園まつり・大道芸フェスティバルinあさひかわ」の様子
寄付募集から施策の実施までをコーディネート
上田さんは、旭川市のふるさと納税における新しい展開を教えてくれました。
「どこの自治体もお礼品としてモノを出していますので、他のまちとは違うカタチで、旭川市の魅力を伝えられればと考えています。
制度を活用してお金を集めるだけでなく、実際に旭川市に来て体験する、コトの部分にも、今後取り組んでいきたいです」(上田さん)
現在、使い道の指定において一番の人気は、旭山動物園の『あさひやま"もっと夢"基金』。旭山動物園のようなストーリー性を他の使い道でも打ち出していくことが重要となります。
「いい品をただ用意すれば寄付が集まるかといえば、そうではなくなってきています。寄付募集から施策の実施までをトータルでコーディネートして、ストーリー性を作っていくことが重要です」(上田さん)
旭川市では、お礼品を送る際に感謝状と一緒に入れるプロモーション冊子を、市内のデザイナーとともに制作しました。この冊子は、いわゆる観光パンフレットではなく、家具を作る職人、チーズ生産者が牛を牽く姿、商店街の人々の笑顔など、お礼品を作っている事業者の顔、人に焦点を当てて制作しており,12月から順次寄付者へ届けられています。
プロモーション冊子の一部
「お礼品と共に、この冊子を手に取って読んでいただくことで、何か感じていただければと思っています。地域と人とを結ぶツールとして、ふるさと納税は非常に効果的であると感じています。感謝状や冊子をお礼品と一緒に送ることで、今までモノが欲しくて寄付していた方にも、"旭川ってこんなまちなんだ"と知ってもらいたいです」(上田さん)
寄付者とのより深い関係を築き旭川市のファンを増やしていくために、ふるさと納税を進化させていきます。