創業約200年の老舗米店・鍋屋商店が挑んだ新しいお礼品 千葉県大網白里市/株式会社鍋屋商店
千葉県東部、九十九里平野のほぼ中央に位置する大網白里市。
都心から約50km圏内というアクセスの良さと、海・田園・丘陵が共存する豊かな自然環境を併せ持つまちです。
近年は、ふるさと納税を通じて地域の魅力や特産品を全国へ発信する取り組みに力を入れています。
そんな大網白里市で、社会情勢を背景に誕生した「ラベルレス米」が注目を集めています。
社会課題をきっかけに誕生した新たなお礼品について、大網白里市企画政策課の漆島さんと、株式会社鍋屋商店の齋藤専務に話をうかがいました。
白里海岸
海と田園に恵まれた大網白里市
西側には丘陵地帯、中部には田園風景が広がり、東側には九十九里浜と太平洋が広がる大網白里市。年間を通じて温暖な気候に恵まれ、農業や水産業が盛んな地域でもあります。
「都市の近くにありながら、自然を身近に感じられるまちです。しかし残念ながら、九十九里浜は知っていても、大網白里市は知らないという方が多いのが実情です」(漆島さん)
そこで市は、ふるさと納税を通じて地域資源の魅力を全国へ発信しています。
「ハマグリや干物などの水産加工品はもちろん、野菜や米といった農作物も豊富です。最近では、市内在住のいちご育種家により開発された『真紅の美鈴』という品種のいちごが注目を集めています。全国でも数十件しか栽培していない大変希少価値の高い品種で、糖度が20度を超えるほど甘みが強く、色も濃いことが特徴です」(漆島さん)
【黒いちご】真紅の美鈴
豊富なお礼品が揃う大網白里市で、最も人気を集めるお礼品が「米」です。
「令和の米騒動」と騒がれた2024年から翌2025年にかけて、米不足や価格高騰が全国で相次ぎました。
「店頭でお米が手に入りにくい中、ふるさと納税なら比較的早く確実に届くということもあり、さらに寄付が増えました」(漆島さん)
そんな大網白里市のお米のお礼品を支えている事業者の一つが、株式会社鍋屋商店です。
米作りが盛んなこの土地で、約200年にわたりお米を通じて地域を支えています。
地域とともに歩んできた約200年
鍋屋商店の創業は1827年(文政10年)。約200年にわたりずっと大網白里市で商いを営む老舗米店です。
50年前の鍋屋商店
現在の鍋屋商店
現在は約800件の契約農家から直接仕入れた米を販売。自社で検査・精米を実施し、品質の安定化にも力を入れています。
「長年付き合いのある農家も多く、生産者の顔が見える関係性を大切にしています。一方で、農産物は気候や天候によりどうしてもばらつきが生じます。そのため、同じ銘柄の生産地や収穫条件などの異なる複数の米をブレンド。その日の気温や湿度によっても精米の製法を日々調整し、できるだけ毎回同じ品質でお届けできるようにしています」(齋藤さん)
お米マイスターでもある齋藤さん。その豊富な知識を生かしながら、日々お米と向き合っています。加えて精米設備を増強し生産能力を拡大した結果、現在では飲食店や施設などへも販路を拡大しています。
品質チェックの様子
ふるさと納税が生み出した新たなつながり
鍋屋商店がふるさと納税に参加したのは、大網白里市からの声かけがきっかけでした。
「当初は少なかった寄付も徐々に件数を伸ばし、『千葉県産コシヒカリ』はランキング上位にまでなりました。寄付が増えたことで、お礼品画像を改善したり、新しいお礼品を追加したりと創意工夫をこらすように。結果、多くの寄付者の目に留まり、さらに寄付が増加するといった好循環が生まれました」(齋藤さん)
さとふるでも人気が高い「コシヒカリ」。
新米の時期に合わせて掲載をはじめたことや寄付額を押さえたことも相まって継続的に人気を維持しています。
また、さとふるではお礼品の旬の時期にあわせた特集や、訳あり、おでかけ、SDGsなどさまざまな特集を随時サイト上に掲載しています。
「さとふるの特集やランキング掲載など、露出機会が増えたことも大きいと思います。また同時期に寄付が集中してもさとふるのシステム上で受注上限設定ができるので業務管理がしやすく、非常に使いやすいです。担当者のレスポンスが早いのも助かっています」(齋藤さん)
現在では市を代表するお礼品の一つとして、多くの寄付者に選ばれています。
特集の一例
社会課題から生まれた新しいお礼品「ラベルレス米」
近年、市場ではラベルレス飲料など環境に配慮した商品が広がり始めていました。そうした流れを受け、さとふるでは「この考え方をふるさと納税のお礼品にも生かせないか」と検討を進めました。
その頃、世間では中東情勢の影響が顕著に表れ始め、ナフサ価格の高騰によって包装資材の価格が上昇します。
鍋屋商店にも、
「今後、中東情勢が長引くと袋の手配ができなくなるかもしれない」
という話がメーカーから届きはじめていました。
「お米などのパッケージだけでなく緩衝材や梱包資材など、さまざまなところで影響が出てくることになりそうだとの話が、複数の事業者からありました」(漆島さん)
そうした中でさとふるが声をかけ、大網白里市、鍋屋商店と一緒になって検討を重ねる中で誕生したのがこのラベルレス米です。
「通常『千葉県産』『コシヒカリ』『無洗米』といった表示を見てお礼品を選ぶ寄付者が多いので、やはり当初は何も書いていないと不安に思われるのではないか、という懸念はありました」(齋藤さん)
そのため、画像や説明文などお礼品ページでの見せ方を何度も見直し、「中身は通常商品と同じ」であることが伝わるよう工夫を重ねました。
メディアでも注目された新しい選択肢
こうして誕生した「ラベルレス米」はテレビやニュースサイトなど複数のメディアで紹介され、大きな反響を呼びました。
実際に寄付者からも
「品質が同じなら問題ない」
「返礼品のパッケージは、こうした簡易的なもので必要十分」
といった前向きな声が寄せられました。
「思っていた以上に好意的な反応が多くて安心しました。産地や品質が保証されている『ふるさと納税』だからできた取り組みだと思います」(齋藤さん)
大網白里市の漆島さんは、
「価格高騰への対応だけでなく、環境負荷軽減にもつながる取り組みだと考えました。結果として、当初の思いや狙いがしっかり伝わっていると感じました」と話しています。
ラベルレス米は単なる新商品ではなく、社会課題への対応から生まれた新しいお礼品の形となりました。
千葉のお米を全国に
現在海外への輸出にも積極的に取り組んでいる鍋屋商店ですが、その根底にあるのは地域への思いです。
「ずっと大網白里市で商売を続けてきたので、市に貢献したいという気持ちは強いです」(齋藤さん)
寄付者の方へコメントをいただきました。
「いつも私たちのお米を選んでいただき、本当にありがとうございます。価格だけでなく、資源を大切にするという考え方にも共感して選んでいただけたらうれしいです」
鍋屋商店 齋藤専務
大網白里市が届けたい地域の魅力
こうして品質を守りながら社会課題とも向き合い生まれた「ラベルレス米」のほかにも、大網白里市ではさまざまなお礼品に取り組んでいます。
その一つが体験型のお礼品。マリンスポーツやゴルフを目的に訪れる人が多いことに着目し、「サーフィン体験」や「ゴルフ場利用券」「花火大会」などバラエティーに富んだお礼品を出しています。
「毎年多くの方が来場される花火大会。桟敷席は通常一般販売をしていないため大変人気です」(漆島さん)
「寄付を通じて大網白里市を応援してくださる皆さまとのつながりを大切にしていきたいと思っています。訪れてみたい、また選びたいと思っていただけるような魅力あるまちづくりと返礼品づくりを進めていきます。」(漆島さん)
今後も事業者と連携しながら魅力的なお礼品を通し、地域の魅力を発信している大網白里市のふるさと納税に注目です。
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