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2021/04/21

村独自の寄付金活用と村長の熱意が村のファンづくりに貢献

中札内村 2018年度から2019年度の1年で寄付額が13倍以上に

北海道十勝平野の南西部に位置する中札内村(なかさつないむら)。日高山脈の山裾、その中央部を源とする札内川の流域に発展した人口4,000人未満の小さな村です。日高山脈は標高1,500~2,000m級の山々が約140kmも連なり北海道の南を縦断する、まさに「北海道の背骨」といわれる山脈です。そんな日高山脈を望む風景が中札内村の好きなところという、中札内村役場 総務課 萬代弘樹さんにお話を伺いました。

"中札内村らしい"音楽追及のため2018年度の寄付金はピアノの購入に活用

中札内村は枝豆などの豆類の畑作や、酪農・畜産を主体とした農業が盛んで、ふるさと納税では村自慢の乳製品など魅力的なお礼品が並んでいます。中札内村では2018年度から2019年度に寄付額が昨年対比で13倍以上となり、2019年度は全国の村で千葉県長生村に次いで2位の寄付額となりました。

中札内村では「文化や芸術・教育の振興のために」「豊かな自然環境や美しい景観の維持保全のために」「誰もが安心して住み続けられるまちづくりのために」「村長におまかせ」の4つの寄付金活用の選択肢を設けています。中でも、2019年度は『文化や芸術・教育の振興のために』に寄せられた寄付金を、世界的コンサートで公式ピアノにも選ばれるファツィオリ製のフルコンサートピアノの購入に活用しました。

中札内村は2015年に第10回をもって終了した「北の大地ビエンナーレ」に替わる新たなアートの村づくりとして、2019年から「なかさつ音まちプロジェクト」を開始しました。

「なかさつ音まちプロジェクト」では、"中札内村らしい"芸術や音楽を追求し、中札内のファンづくりを進めています。

村内にはコンサートや演劇公演などに利用できる多目的ホール「ハーモニーホール」があり、そのハーモニーホールのピアノの買い替えにふるさと納税の寄付金が活用されました。

イタリア・ファツィオリ製のフルコンサートピアノ

できるだけ早く・多くの人に聴いてもらうためYouTubeで配信

ふるさと納税の寄付金を活用して購入されたピアノのお披露目コンサートを2020年夏に予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大により延期となりました。そのため、2020年7月1日から動画投稿サイトYouTubeにて、村にゆかりのある演奏家の協力によってお披露目されました。配信に先立って、6月28日に定員40名のミニコンサートが2回行われ、7月19日には管内在住者を対象にピアノの演奏体験も行われました。YouTubeのコメント欄には、「ふるさと納税の応援が、地元のハーモニーホールのピアノに繋がったとは、なんと素敵なお話でしょう、感動しています」「素晴らしい音色を聴かせてくださり、ありがとうございます。何度も繰り返し聴きにきてしまいます」などのコメントが寄せられました。また、2021年2月には再生回数1万回を超え、多くの方が視聴しました。

延期されていたコンサートも、YouTube公開から約2か月後の2020年9月12日に新型コロナウイルス感染対策を徹底して開催されました。このコンサートでは、イタリアで生まれた2つの名器、「ファツィオリ」と「ストラディヴァリウス」が共演し、想定を超える154名の方々が素晴らしい音色を鑑賞しました。

こちらのピアノ購入以外にも、音まちプロジェクト費用としてイベント運営などに700万円の寄付金が充てられています。

2020年7月「ファツィオリ」ピアノ初お披露目をYouTubeで配信

住民の健康的な生活維持のための取り組み「七色献立プロジェクト健康ポイント事業」

そのほかの寄付金の使い道を選択した場合はどのように活用されているのでしょうか。

「『誰もが安心して住み続けられるまちづくりのために』では、『七色献立プロジェクト健康ポイント事業』に寄付金が活用されました。『七色献立プロジェクト健康ポイント事業』は活動量計やスマートフォンアプリを活用して、ウォーキングや健康診断の受診などの健康づくりの取り組みに応じてポイントが貯まるものです。貯まったポイントは、村内で使用できる商品券との交換ができます。2020年度からは、交換上限以上ポイントが貯まった場合に村内の学校へポイントを寄付することができるようになりました。寄付されたポイントを活用し、2021年度には村内中学校でデジタル教科書の購入を予定しています。また、中札内産野菜または果物を1種類以上かつ100g以上使用したメニューを提供する『七色野菜彩プラス』の取り組みでは、健康ポイントと連動した協力店でのスタンプラリーを実施しています」

いずれも楽しみながら、住民が健康な生活を送ることを目指した取り組みとなっています。

※ 有料コース参加者のみ対象

幅広い世代の住民のために活用されてきたふるさと納税の寄付金

様々な事業に活用されてきた中札内村への寄付金ですが、これまではどのように活用されていたのでしょうか。

「2017年度は平昌オリンピックの派遣事業に活用しました。2017年は開村70周年記念の年で、記念事業の一つとして実施しました。派遣されたのはスピードスケートに打ち込む中学生6名を含めた計7名で、将来の五輪出場を目指す子どもたちに世界の競技レベルを感じてもらうことを目的に行われました」

女子チームパシュートの金メダル獲得の瞬間を観戦した中学生は「生で見ることができ、感動しました」「良い所などを吸収し、これからの練習に活かしていきたいと思います」と感想を述べており、当初の目的達成はもちろん、中学生たちにとってかけがえのない経験となりました。

平昌オリンピックの日本人選手を応援する中学生

また、2016年10月には2015年度の寄付金を活用し、コミュニティバス『くるくる号』を購入しました。

「『くるくる号』は村内のスーパーや診療所などを循環するバスです。タクシー会社が廃業となったことをきっかけに、村民の交通手段確保のために導入されました。冬季限定ですが、車内の返却箱から図書館の本が返却できるようにもしていました。住民にとって必要不可欠なものですし、住民がより利用しやすくなるよう、住民に寄り添い、運行しています」

萬代さんもお子さんを連れてよく「くるくる号」を利用するのだとか。くるくる号は無料で、週5回スーパーや診療所などを循環しており、村内の公共交通機関と接続もしていることから、子連れのご家族から高齢者まで幅広い世代や家庭に活用されています。

村内を巡回する「くるくる号」

人口減少に歯止めをかける子育て支援・移住促進事業

そのほかにも子育て支援が充実している中札内村では、保育料無料化や、中学校卒業までの医療費無料化事業にもふるさと納税の寄付金が充てられています。子育て支援の一環としてはそのほかに出産祝金があり、また定住促進に向けた支援としては移住促進奨励金など各種助成や奨励金が出ます。

中札内村は帯広市まで車で30分のベッドタウンで、帯広からの移住者も多く、萬代さんもその一人なんだそう。

「全国的に人口減少が進む中、各種補助や支援制度の効果もあり、近年ほぼ横ばいの人口を維持しています。住民の方々は、村出身者でなくても温かく受け入れてくれる人が多く、自分自身、そのことを体感しています。そんな移住者の一人でありながら、村の地域おこし協力隊で、スノーアーティストの梶山智大さんによって、『スノーアートヴィレッジなかさつない』が2020年から開催されています。たった一人で足跡だけで描く壮大なアートです」

2021年も2月に開催されたこちらのイベント。スノーアートを通じて、村の大自然と冬の美しさを改めて気づかせてくれます。中札内村をPRする新たなイベントとしてはもちろん、村民にとって毎年恒例の楽しみとなりそうです。

農村休暇村内につくられたスノーアート(写真は2020年の作品)

感謝の気持ちを込めた村長からのメッセージ

中札内村では、村長自ら、寄付者へメッセージを送ることがあるのだそう。

「村長が、寄付申し込み時にメッセージなどがあった寄付者へ、村長礼状に直筆のお礼のメッセージを添えています。ほぼ毎週のように村長は寄付者へのメッセージを書いていますよ」

村長が寄付者へ書いたお礼のメッセージ

中札内村への寄付はリピーターも多いのだとか。魅力的なお礼品だけでない、村独自の寄付金活用や、村長の熱意が村のファンづくりにもつながっているように感じました。