オレンジエッグワッカナイ 「稚内のお菓子」を作り届ける
日本の最北端に位置し、市内の宗谷岬からわずか43kmの彼方にロシア連邦・サハリン州を臨む国境のまち、北海道稚内市。ここにお菓子の製造をメインとし、稚内の海産物を全国へ届ける株式会社てっぺんがあります。ふるさと納税では、市内に構えるスイーツの販売店orange egg*から名をとり、「オレンジエッグワッカナイ」としてスイーツから海産物まで多くのお礼品を提供しています。
日本の"てっぺん"稚内から、宗谷の味を全国へ届け、稚内ブランドを発信する「オレンジエッグワッカナイ」の代表 及川 穣二さんにこだわりや取り組みを伺いました。
幻の勇知いもを使い、「稚内のお菓子」を作る
約15年前、義父の手打ちそば屋の開業を手伝うため、飲食業に従事したことをきっかけに「食に関わる仕事がしたい」と考えた及川さんは、北海道ブランドを強みに、稚内・宗谷エリアの特産品の販売業を始め、ネットショップをオープン。
「はじめは北海道の水産加工会社さんの海産物を通販で販売していたんです。それも少し軌道に乗ってきて、自社製品を作りたいなと思い、2010年に菓子製造業を始めました」
及川さんは、稚内市内にスイーツ販売店のorange egg*を2店舗構えています。これまでに取り扱ってきたスイーツは70種類以上。どんなスイーツを扱っているのでしょうか。
「人気があるのは、『ポテラーナワッカナイ』です。そのほかは『カップケーキ』や『シフォンケーキ』、『ポテマルコ』などの焼き菓子を置いています。店頭ではソフトクリームも人気です。商品はどれも手作りで、隣町の豊富町産の無塩バターや牛乳を使用しています」
ふるさと納税のお礼品でも人気の「ポテラーナワッカナイ」は、市が認定する「稚内ブランド」に認定された、稚内を代表するスイーツです。
「駅前の店舗は観光客の方が多く、『稚内のものをつかったお菓子が欲しい』という要望をたくさんいただきました。正直、稚内は農作物栽培の北限を超えているといわれていて、海産物ばかりなのですが、当時『勇知(ゆうち)いも』に力をいれようとなっていたので、じゃがいもをつかったスイーツを作ろう!となりました」
勇知いもは、稚内市勇知地区で生産されているブランドいも。かつては高級食材として全国へ流通していたものの酪農転換などにより一時生産が途絶えていました。平成に入り、その勇知いもを復活させようという動きがあり、2013年には「わっかない勇知いも研究会」が発足され、勇知いもの生産やPRに力がそそがれています。
「"⽢さ"と"きめ細やかさ"が特徴です。日本最北の冷涼な気候や長い日照時間により、じゃがいものおいしさの判断基準であるデンプンの量が北海道平均を上回っており、さらに雪氷などの自然冷熱を活用した低温貯蔵で、糖化現象が起こるため糖度が増して甘いんです。だからスイーツにも向いていると思いました。
作り手が多くなく生産量が少ないため、加工品にして付加価値を高め、勇知いもの名を全国に広めたいと考えて『わっかない勇知いも研究会』から材料を仕入れています。現在は『ポテラーナワッカナイ』(カタラーナ風焼きプリンアイス)と『ポテマルコ』(クッキー)に勇知いもを使っていますね」
勇知いも
冬は雪氷貯蔵施設で保管され春には果物並みの糖度となる
勇知いもを使ったスイーツを開発する際、店舗で評判の良かったクリームブリュレをベースに作りはじめたそう。
「ジャガイモの風味を出すのが難しく、1番苦労しました。例えばさつまいもってこんな味、と想像しやすいですが、ジャガイモってどんな味っていわれたときに、わからないんですよね。そば屋のお義父さんに、ジャガイモは皮に1番風味を感じると聞いて、皮ごと使わないとダメだねってなりました。ジャガイモを蒸かして、手作業で皮をむいて、皮と身と分けているんですよね。皮は乾燥し粉末状にしてお菓子に練りこんでいて、すごく手間のかかる工程を踏んでいます」
こうしたこだわりの裏には、市内の障がい者就労支援施設の方々の活躍があるそう。
「いもを蒸かして皮をむく仕事をうまくやってくれたので、お願いしています。喜んでやってもらっていて、うちも助けられています」
稚内のものを使ったお菓子を届けたいという想いがあるからこそ、市内の人と共に作り上げることで、より"稚内らしさ"が輝くと感じました。
店舗や催事などで提供している「ポテラーナワッカナイBAR」
「ポテラーナワッカナイ」は勇知いもの濃厚な甘さをとなめらかさを楽しめる
プリンともスイートポテトとも違う新食感
ふるさと納税で知名度を上げる
そんな「ポテラーナワッカナイ」はふるさと納税でより生産量が拡大します。
「『ポテラーナワッカナイ』が生まれた2011年から比べると、ふるさと納税を初めて5倍くらいは増えました。『ポテラーナワッカナイ』を稚内の商品として認知度を上げたいと思ってふるさと納税に参加したのですが、たくさん寄付していただいたので知ってもらう機会になったと思います」
ほかにも、ふるさと納税が付加価値を高めるきっかけになったそうです。
「『さとふる』のレビューに『食べ方がわからない』というコメントがあって。確かにカタラーナってそんなに家で食べる機会がないので、どのくらい解凍して食べたら良いかとか、ジャガイモを使っているとなると、食べ方がちがうのかとか考えますよね。あと、ふるさと納税のお礼品は贈り物として受け取る方もいるじゃないですか。贈られた人が『ポテラーナってなんだ?』ってなるので、『ポテラーナってこういうものだよ』『こう食べるとおいしいよ』っていう冊子を入れるようになりました」
ふるさと納税で選択肢が広がる
寄付者の方から直接連絡が入り、自社のネットショップから注文をもらったり、実際に来店される方々もいるそうです。
ほかにはどのような変化があったのでしょうか。
「2018年4月に店舗を増築したんですよ。イートインスペースがなかったので、簡単なイートインスペースをつくりました。目の前に利尻富士が見える良い眺めが自慢です。スペースが広がったことで、焼き菓子のラインアップも少し増えました」
増築されたスペース
窓の向こうには利尻富士が見える
今後は、工場または店舗の増設を検討しているそうです。
「カフェ営業をやってみたいなと。観光で来られ方がのんびりくつろいで、稚内のスイーツを食べていただくスペースを作りたいなとも思うのですが、製造もいっぱいいっぱいなので、工場を増やして販売事業に力を入れていくのか、実店舗に力を入れていくのか悩ましいですね。こうして悩めるのは、ありがたいです。『さとふる』さんのおかげですね」
稚内・宗谷の味を全国へ
稚内の味を届けたいと躍進を続ける及川さんに、今後の展望を伺いました。
「スイーツだけじゃなく、稚内の水産加工品を作りたいと思っています。実は現在もふるさと納税で扱う海産物は、ただ水産加工会社さんのものを出しているのではなく、ふるさと納税用に加工してもらっています。稚内は加工品が弱い土地なので、せっかくふるさと納税を通じた販路があるのであれば、積極的に水産加工会社さんに、『こういう商品を作ろう』と提案をしていって、稚内の食材を活かした商品開発をもっとしていきたいと思っています」