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2019/09/10

「かずの子を日常食に」日本一のまちの挑戦

北海道留萌市「留萌市かずの子条例」で市全体が取り組む地産地消・消費拡大

北海道留萌市は、北海道西北部の日本海に面した位置にあり、日本の夕陽百選に選ばれた「黄金岬の夕陽」をはじめ、四季折々の情景が見られます。
港にはかつてニシンが押し寄せたことから、ニシン漁で栄えた歴史があり、現在でも「塩かずの子」が日本一の生産量を誇ります。まちの誇りである「塩かずの子」を広く普及させるための取り組みや、ふるさと納税の活用について、留萌市の伯谷さん、大川さん、加藤さんに話を聞きました。

留萌市地域振興部(左から)加藤尚規さん、大川雄介さん、伯谷英明さん

"体験"を通して地域への郷土愛を高める

留萌市ではふるさと納税の寄付の使い道として、「萌える若者たちのまちづくりに関する事業」や「食のブランド化、食育に関する事業」、「安心して暮らせる地域医療づくりに関する事業」など8つの事業を選択することができます。

2018年度には、地域の子ども達に地域食材への興味関心を喚起するとともに、食の大切さを親子で学ぶことで農業への関心や郷土愛を高めることを目的とした親子料理教室を開催。留萌産の小麦である「ルルロッソ」を使ったうどんやピザを作り、親子で体験する機会を提供したことにより、参加者からは「留萌の食材が良くわかって勉強になった。また参加したい」などの声が挙がるほど好評だったそうです。

「留萌は農業だけではなく、漁業も盛んなので、今後は魚食の普及も同時に進めていくイベントも検討しています。例えば魚さばき体験体験のイベントを行ったり、留萌で収穫したお米と留萌の海で獲れたサケを使っておにぎりを作る料理教室を開催するなど、留萌市の食材を使った食育に引き続き取り組んでいければと考えています」(加藤さん)

かずの子の地産地消・消費拡大を目指し、条例を制定

江戸時代から昭和29年ごろまで、北海道ではニシン漁が盛んに行われており、留萌市でもニシン漁のために各地から出稼ぎの人が集まり、子どもたちも手伝いの為学校が休みになったこともあるほど、多くの人がかかわるまちの一大産業でした。

昭和29年以降、ニシンの漁獲量が急速に減り、現在では「幻の魚」と呼ばれるほど日本では希少となったニシンですが、留萌では昭和29年ごろまでに培った伝統あるニシンの加工技術を生かした水産加工品などを生産し続けています。特にニシンの子どもであるかずの子に関しては、留萌が「塩かずの子加工生産量日本一のまち」といわれており、留萌市では市が一体となりかずの子のPRを行っています。

中でも特徴的な取り組みは、2016年に可決された「留萌市かずの子条例」です。
「留萌市かずの子条例」は、かずの子の消費拡大と地産地消の推進、地域経済の活性化、郷土愛の醸成などを目的として、市内の事業者や行政との協議、市民からの意見募集などを経て可決された条例です。

留萌市のかずの子はポリポリとした食感の良さと品質の高さが特徴

「国内シェアの50%を占める留萌の『塩かずの子』を広く知ってもらうために、市全体が一体となって取り組むことができるよう、市議会が主導し『留萌市かずの子条例』を制定しました。消費拡大や地産地消の推進ももちろんですが、地域経済の活性化による市民生活の向上も目的としています」(伯谷さん)

「留萌市かずの子条例」ではかずの子の普及活動や消費を積極的に行うよう、市や議会、事業者と市民のそれぞれの役割について定めています。

これに関連して、毎年5月5日の「かずの子の日」※にかかわるイベントを地域の公園などで行ったり、給食でも積極的にかずの子が使用されているほか、議会でほかの地域から来賓がある会合の際などに使用されるなど、市内での積極的な消費につながっています。

留萌市は、都内などで行われるイベントでもかずの子を積極的にPRしていますが、来場した方が留萌の名前をみて、「以前、留萌市にふるさと納税した際、かずの子をお礼品でもらって、おいしかったからまたお願いしたいと思っているんです」と声をかけられる例もあったそうです。

「参加したイベントでかずの子を試食した方が、『おいしかったから』とふるさと納税で頼んでくださったり、ふるさと納税の寄付者から『留萌の名前を知らなかったけど、ふるさと納税をきっかけに知った』というお声が届くこともあり、市のPRと同時にかずの子の普及や、リピーターづくりといった様々な面でふるさと納税を活用できていると実感しています」(加藤さん)

※子どもの健やかな成長を願う5月5日の「こどもの日」にちなみ、子孫繁栄の縁起物でもある「かずの子」を食べて、改めて両親(二親=にしん)に感謝し、日本の食文化を継承し、守っていく日として2017年に制定された記念日

かずの子を日常食にするために

留萌市では今後、かずの子が通年を通して流通する商品となるよう、アプローチを行っていきたいと話します。

「かずの子はおせちに入っているものというイメージもあり『正月に食べるもの』と思われがちなのですが、年間を通じて食べられる食材です。すでに、かずの子とチーズを合わせた「カズチー」という商品や、かずの子とマヨネーズをあえた商品もあるほか、大手コンビニエンスストアでおにぎりの具材としてかずの子を使っていただいたこともありますが、今後も認知が進むよう、取り組んでいきたいと考えています。塩かずの子の生産数1位の留萌市だからこそ、かずの子が年末年始だけの食べ物であるというイメージを払拭して、普段から食べられるということを広める役目があると考えています」(大川さん)

かずの子の普及と同時に、留萌市では多くの人にまちに訪れてもらうことができるように取り組みを行っていきたいと考えています。留萌市には、沖に沈む夕陽の美しさから「日本の夕陽百選」に選ばれた景観と、磯ガニ釣りなども楽しむことができる「黄金岬」のほか、大型テントや炊事場、温水シャワーなどの設備も充実している道北エリア最大級の海水浴場「ゴールデンビーチるもい」などの観光資源があり、多くの人が訪れています。

黄金岬では美しい夕陽を楽しむことができる

「今後はふるさと納税の寄付を、国内外からさらに多くの人を留萌に呼び込む目的でも活用していきたいと思っています。ふるさと納税制度が地域のPRにつながっていくのではと期待しています」(加藤さん)

取材に訪れた際にも、黄金岬にひろがる広い空と青い海を多くの人が楽しむ光景が見られました。かずの子が日常的に食卓に並び、国内外から多くの人が留萌市に訪れる日が待ちきれません。