ふるさと納税がBtoC部門の主力事業に 大分県大分市 株式会社ミートクレスト
ふるさと納税のお礼品には、「地場産品基準」が定められているのはご存知ですか?「地場産品基準」では、お礼品として認められる"地場産品"の線引きのため、寄付先自治体の区域内でお礼品が生産されていることなどが定められています。そのほかに、近隣の市区町村共通のお礼品や、都道府県が複数の市区町村と連携した共通のお礼品は、「共通返礼品」と呼ばれ、前述した基準に該当する場合は地場産品と認められています。大分県大分市で食肉製造卸業を営む「株式会社ミートクレスト」は大分県内6の市町のお礼品を提供しています。そんなミートクレストでふるさと納税業務を担当している高橋 征志さんと、広報の横山 花奈さんにお話をうかがいました。
明治から令和へ。時代を超えた食肉事業
ミートクレストは創業1872年の老舗企業で、現在の清田 浩徳(ひろのり)代表取締役社長で5代目となります。ミートクレストの歴史について聞きました。
「創業初期の明治時代には、約1200年避けられていた肉食が解禁されたり、2003年には牛肉輸入制限が行われたり、長い歴史の中で食肉にまつわるさまざまな出来事を乗り越えてきました。『ミートクレスト』という社名は、食肉業界の頂を目指すという目標のもと、2011年に『清田産業株式会社』から『株式会社ミートクレスト』へと商号を変更しました。2015年に海外への輸出を開始すると、その後の2021年にはECサイトを開設するなど、事業拡大を進めています。顧客対象は、企業から一般消費者へと販路を拡大しており、今後はBtoCにも力を入れていきたいと考えています」(横山さん)
BtoC事業の一つであるふるさと納税は、BtoC事業の利益の多くを占めています。特に、お中元やお歳暮などのギフト部門において、年々売り上げが減少する中、ふるさと納税はそれを補うもしくはそれ以上に急拡大しており、利益に貢献しているそうです。
「ふるさと納税はルールが複雑ですが、さとふるの営業さんに疑問を解消してもらえることで、取り組みやすくなり、感謝しています。また、2024年7月に大幅リニューアルした自社ECサイトにおいても、ランキングを効果的に活用する手法など、『さとふる』を参考にしました」(横山さん)
ふるさと納税を皮切りに、同社は自社商品の全国へのPRを加速させていきます。
ミートクレストオリジナルブランド「清田本店」公式オンラインショップ
地方発ヒットとなった和牛を使った珍しい「おおいた和牛生ハム」
「さとふる」でとくに人気の高い「おおいた和牛生ハム」。
大分県の共通返礼品であるおおいた和牛を使った生ハムで、一般的な豚肉を使った生ハムとは異なり、牛の濃厚な旨味やとろけるような触感が特徴です。
「おおいた和牛を広めていきたいという想いから社長が悩みながらも開発を進め、2020年頃に誕生しました。製造当初は和牛の生ハムは前例が少なかったことで苦労もありました。社長が懇意にしていた宮崎にある生ハム専門メーカーに製造を依頼しており、高い技術力によってつくられています」(高橋さん)
「おおいた和牛生ハム」の全国へのPRはふるさと納税が初めてでしたが、年々その人気は高まっていったのだとか。
「毎年リピーターが増加し、ふるさと納税で実績を重ねることで、ECサイトへも人気が波及していきました。さらに、生ハムをきっかけに自社の精肉のPRにもつながりました。ふるさと納税による宣伝効果は大変大きいと感じています。大分のブランド牛は、九州のその他のブランド牛と比べて全国的に知られていませんが、ふるさと納税を通して『大分の牛はおいしい』と伝えられたのではと感じています」(高橋さん)
国東市で提供する「おおいた和牛生ハム」には162件のレビュー※が集まっており、人気の高さがうかがえます。※2024年9月27日時点
おおいた和牛生ハム
「おおいた和牛生ハム」のレビューは4.8と高評価を得ている
8自治体の地域資源を集結したお礼品が誕生
ふるさと納税をきっかけに新たな商品「恵みハンバーグ」が開発されました。開発秘話を高橋さんにうかがいました。
「以前から共通返礼品の開発に興味があり、自社にある包餡機を使って、大分の魅力を伝える商品を作れないか考えていました。そんな中、2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、インバウンド事業が悪化したことから、食肉業界だけではなく、県内のあらゆる農産品や、企業で大きな影響が出ていました。そこで、各自治体や、JA全農おおいたの方々と相談し、大分の味力が詰まったハンバーグを共通返礼品として開発する方針で進めることになったんです」(高橋さん)
JA全農おおいた協力のもと、「恵みハンバーグ」は8自治体8事業者が参加し、地域自慢の厳選した素材が合わさった、新たな共通返礼品として誕生しました。2022年に完成したこちらのお礼品は大分県内8自治体で申込みを受け付けています。
「大分県への想いを全国に伝えるべく、ふるさと納税を活用することを提案しました。いろいろな自治体が関わることで、大分の魅力をより伝えられると思います」(高橋さん)
ハンバーグは、豊後高田市産牛肉や日出町産豚肉に、佐伯市のなずなの塩のほか、杵築市の一番茶を粉末にして練りこんでいます。ソースはデミグラスをベースに、竹田市のトマトと国東市のバジルペーストを加え、中津市の老舗「田中醤油店」で製造しています。大分県内複数の自治体が協力してできたお礼品です。
8自治体の地域資源を厳選した「恵みハンバーグ」
2024年夏に竹籠をイメージした新しいパッケージに
鹿児島市の人気お礼品誕生にも貢献
ふるさと納税による影響は大分県だけではなく、ミートクレストのグループ企業である「薩摩ハム」がある鹿児島市にも良い影響を与えています。
「鹿児島市は2022年頃からふるさと納税のお礼品提供を開始しました。そこで、薩摩ハムでもふるさと納税に参加するよう、工場長に話に行きました。薩摩ハムのお礼品は現在40点※1ほどありますが、中でも『訳あり!お試し!切り落としベーコン4P』はこれまでに17,000件以上の寄付申込みがありました※2。また、「【贈答用 お歳暮 お中元】布巻ロースハム」は、これまで期間限定での受付のみでしたが、ふるさと納税によって予約販売による通年での受付が可能になりました」(高橋さん)
※1 2024年9月26日時点
※2 2024年7月11日時点
大分県でのふるさと納税の好事例が県をまたぎ、鹿児島県まで広がっています。同社の働きかけにより今後ますます九州のふるさと納税の盛り上がりが期待されます。
長年の経験が生かされ、ふるさと納税の効果が伝播する
希少な和牛の生ハムを強みに、他県のブランド牛との差別化を図り、「おおいた和牛」の全国へのPRに取り組むミートクレスト。それだけにとどまらず、周辺自治体と協力し、共通返礼品の開発や、鹿児島市ふるさと納税への参加サポートなど、さまざまな形で人気お礼品を生み出しています。前職からふるさと納税に携わり、合わせて8年ほどの経験がある高橋さんはこう話します。
「総務省のポイント規制の告示を受け、来年の9月には駆け込み寄付が発生すると予測しています。また、今年はその告示により、ふるさと納税への関心が高まっていることからも、お礼品登録までにかかる時間を考慮し年末までに新たなお礼品も企画していきたいと考えています」(高橋さん)
これまでの経験が生き、ふるさと納税に積極的に取り組む高橋さん。そこには大分県への熱い想いが感じられました。
▼ミートクレストのお礼品は こちら
▼恵みハンバーグは こちら
▼薩摩ハムのお礼品は こちら