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2020/02/17

シンプルな「たい焼き」をふるさと納税で全国展開

鯛焼屋よしお 行列のできるたい焼き屋

春は桜並木、夏は蛍、秋は紅葉、冬には雪景色。四季折々、里山の風景があふれる広島県安芸太田町。広島市内から約1時間の場所に位置するこのまちに、広島の人なら知っているといわれる「鯛焼屋よしお」があります。
1970年創業の「鯛焼屋よしお」2代目の吉尾一成さんに、広島で50年愛されるたい焼きのこだわりや、ふるさと納税による変化について話を聞きました。

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地域の土産物として「たい焼き」を

50年前、まだたい焼きが世の中に浸透する前の時代に誕生した「鯛焼屋よしお」
「市内でタクシー運転手をやっていた父が、この地域の土産物を作りたいと構想していました。当時はたい焼き機が出回っていなかったのですが、たまたま機械屋さんに出会い、まだ広島にはなかったたい焼き屋を始めました」こう話すのは、24年前に2代目となった吉尾一成さん。

国道沿いに店を構える「鯛焼屋よしお」。当時はほかに道路がなく、広島から山陰に抜けるメイン道路で交通量が多かったこと、またスキー場の多い安芸太田町に訪れるスキー客の来店も重なり、当時まだ珍しかったたい焼きに人気が集まり、創業当初から行列ができていたそうです。
今現在も行列を作るこの店のたい焼きは、閉店前に売り切れてしまうことも珍しくありません。

DSCF3924_r.png鯛焼屋よしお 店主 吉尾一成さん

昔ながらのシンプルな「たい焼き」にこだわり

半世紀にわたり、メニューはあんこだけという鯛焼屋よしお。そのこだわりを伺いました。

「昔ながらのスタイルを崩さない。それを追求していこうと思っています。今はクロワッサンやかりんとう、白いたい焼きとかいろいろありますよね。でもうちは『たい焼き』というものを崩さない。あんこ1本でカスタードもやってないです。あんこが苦手な方には皮だけを焼いています。持って帰ってバターやジャムなどを付けて食べられる方もおられます。
先代の頃はたい焼きの羽根は切っていましたが、お客さんから皮が美味しいしもったいないから切らないでとの声があるので、私の代では残しています。結果的に『羽根つきたい焼き』になっています」

DSCF3986_r.png店は家族4人で経営している

洋菓子などに比べシンプルなつくりのたい焼き。シンプルだからこそ、素材選びから焼き方まですべてにこだわりがあるそう。

「素材は国産小麦と北海道十勝産の小豆、広島は向原産の卵、町内のおいしい水を使っています。仕込み方にもいろんなコツがありますし、一つ一つの素材を扱うのに難しさがあります。時期によっては卵が水っぽいなど、季節によって変わってくるので、そういった変化や、生地をこねるときの水温やこね方など、その時の状態に合わせて作っています。
あとはたい焼きを焼く時の火力や焼き方にもこだわりがあって、最近では電気で焼く機械もあるのですが、うちはガスを使って直火で焼いています。高火力でないと香ばしくならない。電気で焼くと焦げ目が入らないので、横のはみ出た羽の部分が焦げない。香ばしさが出ないんです」

こうしたこだわりはふるさと納税のお礼品にも表れています。冷凍で届けられるため、再加熱される分軽めに焼いているそうです。

全国10位のたい焼き屋に選ばれ知名度は全国区に

地元で1店舗だけ店を構える鯛焼屋よしおが、2014年の11月、日経新聞の「何でもランキング」で10位に選ばれます。

「日本中のたい焼き屋さんの中で、うちが10位に入っているんですよ。全国レベルで相当な店舗数を構えるお店がランクインする中、10位にうちが入っていたことをきっかけに、全国に向けて販路を拡大したいと思いました」

そこでふるさと納税に目を付けたという吉尾さん。当時、安芸太田町はお礼品を用意しておらず、役場の人たちに相談していたそう。そんな中2015年からお礼品を送ることになり、すぐに『さとふる』に参加したそうです。

「ネット販売は15年以上前からやっているのですが、あまり実績がなかったですね。大手のECモールからの注文も受け付けていますが、載せるだけでは売れないので、広告だったり投資しないと難しいというのがあって。ふるさと納税サイトに掲載してもらったことで全国へ販路が広がりました」

1年目は10,000円の寄付で20個のたい焼きを送っていましたが、安芸太田町のふるさと納税担当者や寄付者から、20個は冷凍庫に納まらないという意見を受け、2年目から5,000円10個入りのお礼品を展開します。

「10個入りを設けたことで注文がグンと伸びました。今は10個、20個、40個入りを展開していますが、9割くらいが10個入りを選んでくれていますね。ただ最近はこだわりの十勝産小豆が手に入りにくくなってきました。材料の価格が高騰しており、寄付額を変更せざるを得なくなるかもしれません」

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焼きたてのたい焼き
この日は最後の「焼き」のあとすぐに売り切れ、閉店前に完売となった

ふるさと納税の売り上げは前年比2倍

鯛焼屋よしおでは、ふるさと納税の売り上げが年々伸びています。

「ふるさと納税の売り上げは前年比2倍ですね。2018年の7月豪雨で広島に大きな被害がありましたが、町に続く国道が封鎖されお客さんの来店が減って、全体の売り上げが落ち込む中で、ふるさと納税は安定していました。安芸太田町の被害はなかったのですが、『頑張ってください』というメッセージをいただいたりして励みになりましたね。
また、雪が降ると客足が減りますが、その時期はふるさと納税が繁忙期なので売り上げの平準化にもつながっています。朝一などの客足が落ち着いている時間にまとめて焼いて急速冷凍して、昼に箱詰めして、これを2回転。忙しいですが、ありがたいですね」

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地域を超えて愛される

リピーターの方も多く、『さとふる』のレビューでは「リピートします」「3年連続で寄付しています」というコメントなどが寄せられています。
また、"ふるさと納税のお礼品でたい焼きを選ばれた方が店舗に来店する"逆に"店舗に来店した方がふるさと納税でたい焼きを選ぶ"こともよくあるそうです。

「ふるさと納税を通じてよしおのたい焼きを食べて、『焼き立てはどんなのかな、食べてみたい』といって来られる方が結構いらっしゃいます。わざわざ来てくださる方の顔を見ることができるのはうれしいです。広島の方はもちろん、ほかにも岡山、山口、島根などからもいらっしゃいます。あと、九州の方々は、バイクのツーリングで大勢いらっしゃいます。店舗で食べて、ふるさと納税、ふるさと納税からネット購入という方もいらっしゃいますね」

ふるさと納税の影響もあり、ネット販売の売り上げも伸びているそう。

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ふるさと納税による設備投資で品質が向上

ふるさと納税による収益を、店舗の設備投資に活用したことで、品質が格段に上がりました。

「できるだけ焼き立てに近いかたちで食べてほしいと、品質を落とさずに急速冷凍を行うことのできるショックフリーザーを、2019年の4月に購入しました。なかなか高価なものなのでためらいましたが、これにより冷凍時間が1/3に短縮されました。いかに早く冷凍させるかが重要で、ゆっくり冷凍すると水分が劣化して品質が落ちてしまいます。風味もサクサク感も出来立てと同じ品質で提供できるようになりました。常連さんの評判も上々です」

吉尾さんは、以前寄付された方に向けて「出来立てと変わらぬ味でお届けできるようになったから、また頼んでもらえるとうれしいですね」と笑顔を覗かせました。

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ふるさと納税の収益で購入したショックフリーザー
このほかにも冷凍後のたい焼きを保管しておく冷凍庫も増設した

新たな広がり

ふるさと納税で知名度が上がったことで、大手食品通販業者から声がかかることも多いそう。手焼きのため大量生産ができないことから注文を受けることは難しいそうですが、設備投資により作業効率を上げることで新たな広がりがあるかもしれません。

「今後は、もっと生産量を増やす展開を考えないといけないと思っています。例えば店舗とは別のところに冷凍加工部門を独立させる可能性もあると思っていて、まだまだ拡張性はあるなと考えています」

こういった考えもふるさと納税を始める前はなかったという吉尾さん。鯛焼屋よしおのこれからが楽しみです。