『子供部屋』から『会社設立』へ からすみ専門店 唐津海
10年前、自宅2階の子供部屋を改装し、趣味で始めた『からすみ』づくり。
仕事は新聞の卸やデザイン関係と、飲食業とはまったく関係のない職種から、7年で工房をつくり、2018年、会社の設立にまで至った経緯を代表の増本さんに伺ってきました。
自分の手でつくったものを販売したい
「『からすみ』が好きだからですね。」(増本さん)
なぜ、自宅を改装までして『からすみ』づくりを始めたのかを伺うと、すぐにそのような返答が返ってきました。
株式会社唐津海 代表取締役社長 増本 孝人さん
唐津市加唐島で生まれた「一の塩」と「聚楽太閤大吟醸」を使用し、
一本一本手作りで仕上げた本からすみ
"『からすみ』が好きで、自分でつくってみたらおいしくできあがった"
ずっと「自分でつくったものを販売したい」「つくるなら自分の好きなものをつくりたい」と思っていた増本さんは、その時に『からすみ』を作ろうと決めたそうです。
「自宅の2Fといっても、保健所の許可を取ったり、いろいろと大変で。工場としてきっちりとするために子供部屋を完全に改装しました。」(増本さん)
最初は、副業として『からすみ』づくりを行っていた増本さんですが、自宅とは別に工房を建て、会社を設立し、今後は『からすみ』づくりをメインに活動されていくそうです。
これはふるさと納税で全国に商品を届けることができるようになり、販売量が増えたことによる影響が大きいそう。いまでは『からすみ』の他にも『さとふる』にイカ飯などのお礼品も掲載し、商品のラインアップを増やしています。
『からすみ』と昆布をブレンドした特製調味料で味付けした
無添加絶品ヤリ(剣先)イカ飯
「むずかしい」から「おもしろい」
唐津海では、九州産にこだわり、魚から塩、酒、すべて九州産のものでつくっています。
地元産にこだわるからこその難しさがそこにはありました。
「『国産』というのがむずかしいんです。ボラの卵がここ数年取れなくなり、仕入れがものすごく大変なんです。」(増本さん)
もとは唐津で仕入れられていたボラの卵ですが、唐津のみで仕入れることがむずかしくなり、今は九州一円で仕入れを行っているそうです。
国内でつくられている『からすみ』の多くは、海外からボラの卵を輸入している場合が多く、国産のボラの卵を仕入れることがとてもむずかしいのだと教えてくれました。
それでも、増本さんが国産にこだわる理由は、卵の『味』にあります。
「日本の『からすみ』は卵そのものの味が濃く、ねっちりとしています。卵自体の味がしっかりしているからこそ、『卵本来の味』が楽しめるんです。」(増本さん)
卵自体の味がしっかりしているからこその悩みもあります。
「卵自体の味がしっかりしている分、『からすみ』をつくった時に個体差が出てしまうんです。」
「つくった『からすみ』は全て味見をして『おいしい』と思えるもののみを出荷しています。」(増本さん)
乾燥中の『からすみ』
仕入れのむずかしい貴重な国産のボラの卵ですが、仕入れたうちの2割は売り物にならないそうです。それでも、「好き」なものだからこそ妥協はできない、納得のできるものしか販売しないという姿に、『からすみ』への想いが伝わってきます。
「卵の味がしっかりしている分、ひとつずつ素材に合わせて味を調整させる必要があり、味を安定させるのがむずかしいんです。むずかしいんですが、そこが『からすみ』づくりのおもしろさでもありますね。」(増本さん)
夏の販路拡大へ 『からすみパウダー』
唐津海は、ふるさと納税が売上の半分を占め、従業員も1人から3人へ雇用が増えたそうです。
ふるさと納税で売上が増え、今後の課題となるのが夏場の売上増加だそうです。
「『からすみ』自体が冬の食べ物なのもあって、売り上げが冬場に集中してしまうんですよね。」
「夏は売上が落ちるので、夏の売上が上がるように『からすみパウダー』をもっと広めて行きたいと思っています。国産の『からすみパウダー』はめずらしいんです。」(増本さん)
増本さんのオススメの食べ方は『お蕎麦』。
パスタはもちろん『お蕎麦』など『和』の料理にも合うそうです。
唐津海の『からすみパウダー』を使った料理は、有名イタリアンやフレンチ、日本料理、天ぷら屋、寿司屋など色んなジャンルのお店で提供されています。
蕎麦と『からすみ』という珍しい組み合わせ
他にも家庭で楽しめる『からすみパウダー』のオススメの食べ方をうかがいました。
「明太子フランスのようにパンにバターを塗って、『からすみパウダー』をかける"からすみフランス"がオススメの食べ方です。バターとパウダーが合うんです。いちばんシンプルでおいしい食べ方ですよ」(増本さん)
増本さんは『からすみパウダー』の拡販の為、ご自分で各地に売り込みに行ったり、催事に出店しながら、パウダーの美味しい食べ方を提案されています。
高級珍味を唐津の新名物に
最後に今後の展望について、増本さんにお伺いしました。
「これからもこだわりの『からすみ』をつくり続けたいですね。」
「珍味屋として『からすみ』以外にも珍味を作って、唐津の名物としてひろめて行きたいと思います。」(増本さん)
「好き」からはじまった「好き」だからこそのこだわりの『からすみ』づくり。
これからも、地元の味にこだわった『からすみ』が全国の寄付者のもとに届けられ、新たな珍味とともに唐津の新名物として浸透していく日がたのしみです。