Lotus Garden 「花のある生活」を全国に提案
山形県酒田市に、都心の花屋に引けを取らないラインナップと、店主の温かな人柄や丁寧なレッスンが人気の花屋「Lotus Garden」があります。酒田市に拠点を置きながら全国のイベントなどでも活躍するフローリスト・畠山秀樹さん。近年ふるさと納税にも力を注いでおり、これまでの取り組みについて話を聞きました。
Lotus Garden 畠山秀樹さん
ふるさと酒田市で花文化を醸成したい
酒田市で生まれ育った畠山さんは、東京の花屋で15年以上働いたあと酒田市に戻り、自らのお店「Lotus Garden」を2003年にオープンしました。
最初は都心にお店を開く構想があったという畠山さんですが、当時はお洒落な花屋の開店が相次ぎ、同じような花屋を東京で作っても埋もれるのではないか、違う視点からお店を作れないかと考えたそう。
「今でこそ庄内空港の開港や山形新幹線が通り、改善されましたが、都心へのアクセスは昔は何時間もかかっていました。新しい文化は入りにくく広がりにくい印象を持っていました。でも、あえてここから発信し、地域の皆さんに最新の花を届けてはどうか、お花を通じた挑戦ができないかと考えました」
Lotus Gardenでは店頭販売のほか、フラワーアレンジメントを作るレッスンを開催したり、ブライダル用のアレンジや、個別の植栽などにも対応しています。また、地域の文化施設と連携した花育イベントを積極的に行い、「花のある生活」の普及に力を入れてきました。他にも、ガーデニング愛好家に根強い人気を誇る「軽井沢タリアセン」でのフラワーアートの植栽や、海外でパフォーマンスを行うなど、畠山さんはフローリストとして幅広く活動しています。
「近年は福島県昭和町の生産者が作った『染めかすみ草』に魅せられ、その普及にも力を入れています。『染めかすみ草』は天然染料で七色に染められたかすみ草です。少しでも復興の力になれればと思っています」
メッセンジャーとして
店内には、多くの種類の切り花や観葉植物、多肉植物などとともに、花を楽しむための花瓶や雑貨が並び、訪れる人に「花のある生活」を提案しています。
「扱っている植物はこの庄内地域の生産者さんが育てたものや、東京の市場から仕入れたものなどがあります。地域の皆さんにいろんな植物に触れてほしいので、珍しい植物も積極的に取り扱うようにしているんです。訪れた人が楽しんでくれるような空間を作りたいなと思っています」
仕入れた花は種類ごとに手入れされ、良い状態に戻してから店頭に並びます。インタビューの最中にも一つひとつ湯揚げしたり、冷水につけたり、火であぶったりと、プロの手仕事を目の前で見せてくれました。
「受け取ったときに一番良い状態で花を楽しんでいただけるよう心掛けています。ふるさと納税のお礼品のためのアレンジを作るときもそうです。配送日数などを綿密に計算し、送る人や飾る人を想像しながら心を込めて作るんです。ただモノを届けるのではなく、送る人の想いを伝えるメッセンジャーであることを自負しています」
全国へファンが拡大し、EC売上が増加
ふるさと納税に参加するまでは、イベントや観光施設の植栽などで不特定多数の目に留まることはあっても、対個人は庄内の消費者が中心だったそう。ふるさと納税に参加したことで、全国の方へ花を届けられるようになり、ふるさと納税のリピーターだけでなく、自社ECへの流入も増えたそうです。
「中には繰り返しふるさと納税で寄付をしてくださる方もいます。案内チラシを同封しているからか、お店のECサイト経由の注文も増えました。定期便や動画付きのお花のレッスンが人気です」
出荷数や収益の増加を受けて、新商品開発や作業場新設の計画を立てていると教えてくれました。
「より手軽に花を楽しんでいただくために、器メーカーさんとブーケベースの開発を進めています。また、今の作業場は手狭なため、スムーズな出荷のために作業をするスペースを新設します。ふるさと納税で新たな販路が生まれたことで、次の挑戦をしやすくなりました」
『さとふる』を利用したことで、ふるさと納税のイメージも変わったそうです。
「インターネットでお礼品を出すことから、事務的なやりとりのイメージを持っていましたが、登録するお礼品について、『さとふる』の方に僕のアイデアを聞いてもらったり、熱心にアドバイスをしていただいたり、血の通ったやり取りで相談できたのは意外でした」
ふるさと納税が地域の花卉生産の活力に
ふるさと納税で生花の取扱数が増えたことで、畠山さんと生産者との意見交換がさらに密接になったと教えてくれたのは、酒田市で花卉(かき)※生産をする佐藤潤子さんです。
「ふるさと納税を通じて庄内地域で育てた花が全国の方へ届けられるのはとても嬉しいです。畠山さんには花屋の視点からアドバイスをもらったり、どんな花だと喜んでもらえるのか、どんな花が流行っているのかなど、日々相談しています」
酒田市は庄内砂丘が広がり昔から飛砂による被害に悩まされてきた地域でした。先人たちの努力により植林が進み松林が造成されたことで被害が減り、緑が根付くようになったことで、砂地の水はけのよさを活かした農作物育成が盛んです。佐藤潤子さんが案内してくれたビニールハウスには、たくさんの種類のダリアが植えられていました。
山形県はバラが有名ですが、その他にもダリアやカラー、ひまわりなど、多くの花卉が生産されていることも、畠山さんは広めていきたいといいます。
「東京の市場に出荷する前に配達していただくので、特に鮮度の良い状態でお店に届きます。ふるさと納税で全国の方へ情報発信することができる。お店のPRだけでなく、庄内の花卉のPRも同時にできるのは、ふるさと納税ならではじゃないでしょうか。酒田市からふるさと納税に声をかけていただいたのは本当にありがたかったです」
※観賞用の植物全般
全国へ「花のある生活」を提案
改めて畠山さんにこれからの展望について伺いました。
「お花の需要を増やしたいです。食品などと違って花は生活必需品ではない。けれど、花があることで、豊かな暮らしをしていただけるのではと思います。ふるさと納税を通じて全国へお花や植物を送り、『花のある生活』の魅力を発信していきたいです。一輪でもいいから花を飾る心の余裕を持ってもらいたいです。
庄内の皆さんには最先端の植物を伝えて、全国の皆さんには庄内で育てられた美しい植物を広めていきたいですね。ネットワークや流通が整ったことで全国の方とつながることができるようになりました。そして、僕たちが頑張ることで花業界が少しでも活気づいてくれればと。生産者さんにも良い影響が出ていると感じますし、それが酒田市や庄内地域の勢いにつながると嬉しいです」
全国を飛び回り、心のこもったギフトを作り続ける畠山さんの活動に、これからも期待しています。